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買い物します
しおりを挟むギルドから市場へ戻って来たシェナ。
「色々巻き込まれたけど、臨時収入があったのはありがたいな」
懐に入れた銀貨5枚が不本意ながら有り難い。
だが、銀貨5枚と言う金額は意外に早く使ってしまう金額だ。
この街では、銅貨1枚は小さなパンが買える値段。
大銅貨1枚は1日3食分の食事が出来る金額。
銀貨1枚は節約して約10日生活する出来る金額。
金貨1枚は一カ月の生活が出来る。
もっと高額な大金貨や王制金貨と言うものがあるらしい。
確か大金貨は普通に生活していれば一年の生活を賄える。
王制金貨1枚あれば土地と家と畑と家畜が簡単に買え数年は生活に困らないらしい。
だが、生憎本物は見たことが無い。
銀貨5枚は約一カ月と数日分の生活費になる。
もっともこの金額はちゃんと着るもの、住む所、食べる物がある事前提の金額だ。
パーティーを抜けた時の約半月分に値する銀貨3枚は住む所の確保と日用品の購入に使ってしまった。
以前のパーティーメンバーは自分の為に使うお金は惜しみなく使えるが、他人に使うお金は物凄く嫌がる。
だが、私がパーティーを抜ける時に銀貨持たせたのはギルドの決まりで解雇金を払った為だ。
無一文で放り出して後々ギルドに指摘をされない為だろう。
まあ、今となってはもう関係無いからいいけど。
「やっぱり、ちょっと寄り道しよ」
シェナはパン屋の前に市場のアイテム販売の店に足を運ぶ。
数分後、アイテム販売店で銀貨2枚と銅貨5枚を払いお目当ての旧式の採取用のマジックバックを購入。
巾着式のマジックバックは魔法で収納力に優れどんな大きさの物でも99個まで収納出来、更に採取した薬草や素材の質と鮮度を保ったまま保存ができる。
実は、薬草や素材などの採取は魔獣討伐に比べて懸賞金は少ない。
大体は初心者向けのクエストに採取をすることが多く、一般的な薬草は1束で銅貨二枚程。
だが、質の状態が良いもので保存状態も良ければそれ相応の金額で買い取ってくれる。
今のシェナはギルド謹慎中の為、お金を稼ぐ方法が限られている。
より良い鮮度の薬草や素材を採取して生活費を稼ぐことが重要になっている。
旧式のマジックバックだが、銀貨2枚以上の出費はちょっと苦しいが、これも必要経費だ。
買ったマジックバックを鞄を仕舞い、肩に掛け直し歩き出す。
パン屋に向かう途中で、雑貨屋の姐さんにシェナが声をかける。
「こんにちは姐さん」
「あら、シェナ!」
「そこの小皿の一式ください」
「はーい」
姐さんは棚に並べられていた白い平皿と深皿、白い柄のフォークとスプーンの一式を紙袋に詰める。紙袋には衝撃で中身が壊れない魔法がかかっている。
「はい。銅貨7枚ね」
「はい」
代金を支払い品物を受け取る。
「まいど!それより、聞いたわよ?『バトル』したんですって?」
「ある人の策略にハマっちゃったんです」
疲れ顔で溜め息をつくシェナを見て姐さんはカラカラと可笑しそうに笑う。
「何それ?シェナ、男に引っかかるにはまだ早いんじゃない?」
「経験者は語る?」
「うるさい」
「おう!シェナ、若い野郎に『バトル』けしかけられたんだって?」
シェナと姐さんの会話に隣の青果売りのおじさんが入ってくる。
「情報早いね。おじさん」
「おうよ!しっかり勝たせてもらったからな。銅貨5枚が倍の大銅貨1枚に!!」
「ちゃっかり儲けないでよ。こっちはイキナリ絡まれて災難だったんですから」
「あはは!!そうか、悪かった。お詫びに採れたての『花油』一本持って行くか?」
豪快に笑うおじさんはそう言って中型のガラスの瓶を取り出す。
側にあった樽から澄んだ薄黄緑の『花油』を掬い瓶いっぱいに注ぐ。
「わぁ、いい油だ。でも、いいの?おじさん」
手に取った瓶いっぱいの『花油』を太陽に翳すと太陽の光が瓶の中で揺らめき輝いている。
「おうよ!シェナにはいつも贔屓にしてもらっているからな。今度、また店で買い物してくれ」
「はい!」
「あら、良かったじゃない、シェナ」
「はい。おじさん、ありがとう」
早速買ったマジックバックに皿一式と『花油』を収納する。
「シェナ、これから買い物?」
「うん、パン屋さんに行く途中」
「そうか、引き留めてゴメンね」
「うんん。大丈夫。姐さん。じゃ、おじさん『花油』ありがとう」
「おう」
「じゃね、シェナ」
姐さんとおじさんと別れ四軒先のパン屋へ。
「おじさん」
「おお、シェナちゃん。ギルドの用事は済んだのかい?」
朗らかなパン屋のおじさんがシェナの顔を見て微笑む。
「うん。おじさんパンまだ残ってる?」
「ちゃんと、シェナちゃん用に残しているよ」
そう言って、おじさんは紙の包みを二つシェナに渡す。
「はい。丸パン二つで銅貨2枚ね」
「ありがとう!おじさん」
代金と引き換えに紙の包みに入ったパンを受け取る。
うん。まだほんのりあったかい。
「シェナちゃんこれから帰るの?」
「うんん。『ネルの森』へ採取に行きます」
「そうか。そう言えば今夜は満月だったね」
どうやらおじさんはシェナの今回の目的がわかったようだ。
「良い物が採れるといいね」
「ふふふ、ありがとうおじさん」
「いってらっしゃい」
「はい」
おじさんと別れしばらく歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえて足を止める。
少し離れた所にある飲み屋から見知った顔が出てきた。
ガスト率いる『ソロモンの槍』のメンバーだ。
昼間から酒を飲んでいたのかメンバーは上機嫌のようだった。
シェナの事は気が付いていないようだった。
「・・・・・・」.
シェナは何も言わずにその場を離れた。
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