追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。

翔千

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祭りの手伝い

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 朝焼けが萌ゆる早朝。

「フッ、ハッ!フッ、ハッ!フッ、ハッ!」

 ユージーンは梟屋の裏庭の開けた場所で木刀を手に持ち素振りに勤しんでいた。

 騎士団に居た時も早朝の素振りはユージーンの毎日の日課だった。
 まだ肌寒い早朝の鮮麗な空気が素振りで温まっている肌に心地良い。
 心なしか、王都に居た時よりも、空気が気持ち気がする。

 その時、背後に気配を感じた。

「・・・・精が出るな」
「おはようございます。ゼノンさん」
「ああ、おはよう」

 素振りを止め、振り返ると大柄な鳥人の男性、梟屋の亭主であるゼノンが立っていた。
 小脇に薪用の木材を抱えていた。

「傷はもう、大丈夫か?」
「はい、まだ少し脚は引き攣りますが、大分マシになりました」
「そうか」

 ハーフエルフのシェナに拾われ、この梟屋で世話になり、早、2週間。
 強面で無口だと思っていた亭主が、実は人見知りだと言うことを最近知ったユージーンだった。

「薪割り、手伝います」
「素振りは、もう良いのか?」
「はい。朝の素振りはもう終わりました」
「そうか」

 言葉は、少なく、表情はほぼ変わらないが、

「では、半分ほど頼んでいいか?」
「はい」

 雰囲気が柔らかくなっているのを感じた。


「まあ、ユージーンさん、薪割りご苦労様。ゼノンも朝からこんなに沢山ありがとう」

 二人で薪割りを終えると、笑顔の優しい鳥人の夫人、ゼノンさんの奥さんであるココロさんが出迎えてくれた。

「おはよう、ゼノンさん。ユージーン」
「キュウー」

 キッチンからルウを背中におんぶで背負ったシェナが顔を出す。
 背中からずれ落ちないように布に包まれ背負わされているルウは今日も機嫌がいい。

「朝ごはんできてるよ」

 そう言いなが、キッチンに引っ込むシェナ。

 手を洗い、食堂に入ると、数日前に置かれたあるモノに目がいく。
 大型のドールハウスからルウの服を作ったブラウニー達が寝巻き姿で出てきた。

『~~~!!』
『~~~!!』

 ブラウニー達はユージーンとゼノンに気がつくと、笑顔で手を振る。
 小さな金属音のような声だが、ここ数日でなんとなく言っている事が理解できるようになった。

「おはよう」
「おはよう」

 あいさつを返すと、ブラウニー達はにっこりと笑う。

 本来ブラウニーは屋根裏に住み、住人に悟られないようにひっそりと暮らす魔獣の筈なのだが、数日前にゼノンがドールハウスを作りブラウニー達に贈ると、大喜びし、今はそのドールハウスで暮らしている。

「はーい。みなさん、朝ごはんですよ!」

 ココロさんとシェナが朝食を運んで来た。

「はい。トムルッタとリンテッテの朝ごはんだよ」
『~~!!』
『~、~~~、~~!!』

 シェナがドールハウスの外、テラスに置かれたテーブルにブラウニー達の朝食を置く。

 ちなみに男のブラウニーがトムルッタ、女のブラウニーにはリンテッテとココロさんが名付けた。
 名前が無いと呼ぶ時に不便と言う事らしい。

 皆が各々の席に着く。そして、手を胸の前で合わせ暫しの沈黙。

「我の糧になる尊き命よ  命を生み出し天と大地よ 天地の恵みに感謝します」
「いただきます」

 ふわふわの白パンに黄色いオムレツ。野菜のスープに薄切りだがこんがりカリカリに焼かれた燻製の肉。
 ふわり香る朝食の香りに祈りを捧げる。

「シェナちゃん、今日は街の外の村にお手伝いに行くだっけ?」
「はい。この時期は祭りのシーズンだから、手伝いに駆り出されます」

 焼きたての白パンを手で千切り、冷ましながらシェナがココロの質問に答える。

「祭り?」
「うん。祭りと言っても大掛かりな祭りじゃ無くて、その村での祭りだよ」

 そう言いなが、冷ましたパンを大きく口を開けて待っているルウの口に入れてあげる。

「報酬は少額だけど、その村で取れた収穫物とか貰えるからよく手伝いに行くの。そろそろ、お金を稼がないと」
「・・・・そうだな」

 現在、シェナは事情があってフリー活動中。ギルドからのクエストを受けられない状況らしい。
 だから、シェナはフリーで素材を採取したり、たまにギルド外の個人的な依頼を受けて生計を立てている。
 そして、ユージーンは現在仕事を持たない居候の身。
 記憶喪失と傷の療養中と言えば聞こえはいいが、元々真面目な性格のユージーンにとって、少々、気まずく感じる日々だった。

「シェナ、俺も手伝いに行っていいか?」
「え?ユージーンも?」
「ああ、ダメか?」

 ユージーンの申し出にシェナはルウに食べさせていたルウ用の野菜スープのスプーンを止めた。

「ダメじゃ無いけど、まだ脚、治り切って無いでしょ?」
「少しくらい動かなければ、身体が鈍る。それに、何も出来ないのが精神的にキツくなってきているんだ」
「そうね。ずっとお部屋に篭っていちゃ、気が滅入っちゃうわよね」
「祭りがある村は遠いのか?」
「いいえ、ロネオ村だから南門を出たらすぐです」
「ロネオ村か、そうか」
「それなら、日帰りで帰って来られるわね」
「はい。ユージーンもロネオ村に行く?」
「ああ、同行させてくれ」
「分かった。朝ごはん食べたら、ロネオ村に行こう」
「ああ」
「キュウ!」

 シェナ達の話を聞いていたのかはわからないが、ルウが自分も行くと主張するように身を乗り出す。

「ルウはココロさん達とお留守番だよ」
「そうね。ルウちゃんは私とゼノンとお留守番しましょうね」
「キュ!?」

 なんでダメなの?
 と言わんばかりにこっちを見て驚くルウ。

「ロネオ村のお祭りはちょっと激しい祭りだから、ルウはもう少し大きくなってからね」
「んキュゥ~~」

 シェナの言葉が理解したのかしょぼくれるルウ。

「ごめんね。帰って来たらいっぱい遊んであげるからね」
「キュ、」
「ね?」
「キュ!!」
「いい子ね」

 言葉は通じていない筈だが、おそらく雰囲気でルウはシェナの言葉を理解しているようだ。
 素直に頷くルウの頭をシェナは優しく撫でた。

「よし、いい子にはチーズ入りオムレツを召し上がれ」
「キュ!!んーー」

 小さく切り分けチーズがトロリと伸びるオムレツをルウの口に入れるとルウは顔を綻ばせる。

「美味しい?」
「ん!!」
「そっか」

 オムレツを美味しそうに食べるルウを見て目を細めて優しく微笑むシェナ。
 その時、ふと、一瞬シェナと視線が合った気がした。

「ッ、」

 ユージーンは何故か無意識に気まずく感じ、すぐに視線を外し、カリカリに焼いた燻製肉を頬張る。
 少し強目な塩っ気とよく焼かれて程よく抜けた脂。そして、カリカリとした食感が食欲をそそり、白パンとよく合った。

 だが、シェナはあまり気にしていない様子だった。

「ルウ、帰ったら遊ぼうね」
「キュイ」

 ルウが徐にシェナに小指を差し出す。

「ん?」
「キュ!」
「あ、うん、約束」

 シェナは優しく笑いながらルウの小さな小指に自分の小指を絡め、ルウと笑い合った。

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます。指切った」
「いや、物騒!!」

 ほのぼのとした雰囲気とは裏腹に物騒な歌を歌うシェナにユージーンがツッコんだ。



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