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浮気
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水森が行方をくらませた。
長谷川の話によると、小泉翔と住んでいた部屋は引き払われていて妻がいるマンションや実家に帰っていないらしい。店も閉店して、完全に姿を消した。
「別居状態で離婚までカウントダウンな状況だったけど、浮気相手が男だなんて奥さんもプライドが許さないだろうから言えなかった」
わざわざマンションまで訪ねていった長谷川がため息をつく。
忙しいと言って最近は店長会議くらいしか会うことが出来ない状況だったが、水森を探す余裕はあったのか、自分と会う時間を削ってまで友人を探していた行動に佐伯は苛立つ。
新しくオープンしたダイニングバーの店長。
営業時間が夜遅くまで食い込むので多少不良っぽい見た目でも許されるのだろうが、明るすぎる髪に黒シャツ、ジーンズ、ちらつくタトゥーが正直ダサい。
「土屋透です。よろしく」
新顔なのに不遜な態度に他の店の店長たちが顔を見合わす。会議中ずっと睨んでくるその視線も佐伯の神経を刺激する。
明らかに敵意を持った目。
「18歳で店長ってやばいんじゃないの」
会議が終わって長谷川と土屋が一緒に出ていった後、やっと口が開けるといった雰囲気でまわりがざわついた。
「それに何、あの態度。一番年下で、しかも新入りのくせに。今どきの子ってみんなそうなの?」
全員20代前半だが、年寄りじみた事を言う。
「佐伯さんはどう思います?」
最近は打ち解けてきて佐伯にも心を開いてくれるようになったが、下手なことは言えない。
「さあ…。長谷川さんが決めたことだからね」
陰口にならないように話題には入らない。さり気なくかわして笑顔を浮かべる。
「いくらオーナーのお気に入りでもあれはないわ。さっさと二人で出ていってさ。何様だよ」
言われてハッとする。
佐伯に追従するつもりで言った発言ではないだろうが、興奮したひとりが口を滑らせた。
忙しいなんて言い訳の常套句をどうして疑わなかったんだろう。
「あくまで噂ですけどね」
表情が固まって動かなくなった佐伯を見て誰かが付け足したが、湧き上がった疑惑は消せなかった。
「あまりくっつくな、暑い」
「ええ?いいじゃん別に。俺は誰に見られても気にしないけど」
苦笑いをしながら長谷川は自分のマンションへ向かう。
当然というように土屋透も着いてきた。
「お前は戻って店の準備しろ」
「夜に顔出すから時間あるもん、いいでしょ?」
「しょうがないな」
太陽が登る昼、暑さに負けて自然に足が早くなる。
「はじめて見たけどさあ、佐伯拓海って奴、長谷川さんの好みと全然違うね」
ルックスでは自分のほうが数倍勝っている、それが土屋の感想だった。
「学生時代の後輩だ。仕事しないでブラブラしてたから拾ってやっただけだ」
「えー無能。生きる価値なし」
「仕事見つけるのは運も絡む」
「じゃあ俺、運がよかった」
ようやくマンションについて、土屋は声色を変えてエレベーター内ですり寄ってくる。
「出かけるまで時間あるから、しようよ…」
ほかの住人もいるのに大胆な態度で迫ってくる。まんざらでもないのか長谷川は笑いながら強引に唇を奪った。
「俺と佐伯拓海、どっちがいい?」
蒸し暑い室内でベッドに寝転がって土屋が誘う。
エアコンをつけてから長谷川はジャケットを脱いでその上に重なった。
「あいつは俺の仕事に支障をきたさないように取引相手や同業者に体を提供する、ただの人形だよ」
「俺もそうなるの?」
「いい子にしていたら何もしない」
片手でゆっくりボタンを外しながらお互いの服を脱がしていく。
「俺、悪い子だよ?長谷川さんほどじゃないけど」
「見ればわかる。こんな優等生いるか」
「あ…」
うるさい土屋を黙らせるため、いきなり下着の中に手を入れて勃起しているそれを強く握った。
多方面に気を使う仕事柄、長谷川はややこしい人間関係の外にいる人間を求めた。
新規オープンのため、店のまわりの同業者への挨拶めぐりや、開店祝いに花を贈ってくれた人や店へのお礼。忙しさの中他店の周年に駆けつけたりして気が休まらない。
そんな中、立ち寄った店で偶然見つけた美少年に、思わず声をかけた。
「どこの店の子?」
名刺を渡そうとしたが、訝しげな目でみて、カウンターに置かれたそれを下に捨てられた。
「俺に声かけてくる奴みんなそう言う。一般人だよ文句あるか」
「ごめん。お詫びに一杯おごるよ」
長谷川は生意気なその態度に怒る様子はなく、むしろ下手に出た。
土屋は慣れているのか何の疑いもなく出された酒を口に含んでにやりと笑った。
次に気がついた時、どこかのホテルのベッドで、長谷川が自分の体の上に乗りかかっているのが見えた。
酒を飲んだ後から記憶がない。
「…っ、てめ…一服盛ったな…」
「大人を舐めんなよ」
裸の長谷川を見て、自分の体を見ると何も身にまとっていなかった。
急に羞恥心がわいてくる。
「服返せよ…っ、それと俺から降りろ!」
押し返そうとするが筋肉質の締まった体を持つ長谷川にはかなわない。
「綺麗な体だね」
指を体に滑らせられると信じられない甘いため息が出た。
「…やめ…俺ノーマルだし…こんなの…やだ……」
「みんな最初はそう言う。でも…」
「…あ…ん……」
初めて胸の突起を口に含まれて、体がしなって声が漏れる。
「すぐ堕ちる」
気がつくとローションを塗られた後ろの穴に長谷川の指が入ってうごめいていた。
「…あぁ!…はっ……」
使い込まれていない土屋は佐伯とは違って強い力で締め付けてくる。
「力抜いて」
「無理に…決まってんだろ…っ…」
2本の指を抜き差ししながら長谷川は土屋の様子を観察していた。
「痛…い、もう許して……」
閉じた瞳から涙があふれ出してシーツに染み込む。
指を抜いて、足を大きく広げて長谷川は土屋の体を貫いた。
「…っ…!」
土屋は声にならない悲鳴を上げて口をぱくぱくしている。
だが悲鳴はすぐ甘い音色に変わって、ビジネスホテルの室内に広がった。
あれからすぐ土屋は長谷川に堕ちて、今も自分の下で喘いでいる。
「あ…長谷川さ…ん…」
10代の若い体は佐伯からは感じなくなった新鮮さを残していて、長谷川自身も夢中になってお互いを貪る日々が続いた。
長谷川の話によると、小泉翔と住んでいた部屋は引き払われていて妻がいるマンションや実家に帰っていないらしい。店も閉店して、完全に姿を消した。
「別居状態で離婚までカウントダウンな状況だったけど、浮気相手が男だなんて奥さんもプライドが許さないだろうから言えなかった」
わざわざマンションまで訪ねていった長谷川がため息をつく。
忙しいと言って最近は店長会議くらいしか会うことが出来ない状況だったが、水森を探す余裕はあったのか、自分と会う時間を削ってまで友人を探していた行動に佐伯は苛立つ。
新しくオープンしたダイニングバーの店長。
営業時間が夜遅くまで食い込むので多少不良っぽい見た目でも許されるのだろうが、明るすぎる髪に黒シャツ、ジーンズ、ちらつくタトゥーが正直ダサい。
「土屋透です。よろしく」
新顔なのに不遜な態度に他の店の店長たちが顔を見合わす。会議中ずっと睨んでくるその視線も佐伯の神経を刺激する。
明らかに敵意を持った目。
「18歳で店長ってやばいんじゃないの」
会議が終わって長谷川と土屋が一緒に出ていった後、やっと口が開けるといった雰囲気でまわりがざわついた。
「それに何、あの態度。一番年下で、しかも新入りのくせに。今どきの子ってみんなそうなの?」
全員20代前半だが、年寄りじみた事を言う。
「佐伯さんはどう思います?」
最近は打ち解けてきて佐伯にも心を開いてくれるようになったが、下手なことは言えない。
「さあ…。長谷川さんが決めたことだからね」
陰口にならないように話題には入らない。さり気なくかわして笑顔を浮かべる。
「いくらオーナーのお気に入りでもあれはないわ。さっさと二人で出ていってさ。何様だよ」
言われてハッとする。
佐伯に追従するつもりで言った発言ではないだろうが、興奮したひとりが口を滑らせた。
忙しいなんて言い訳の常套句をどうして疑わなかったんだろう。
「あくまで噂ですけどね」
表情が固まって動かなくなった佐伯を見て誰かが付け足したが、湧き上がった疑惑は消せなかった。
「あまりくっつくな、暑い」
「ええ?いいじゃん別に。俺は誰に見られても気にしないけど」
苦笑いをしながら長谷川は自分のマンションへ向かう。
当然というように土屋透も着いてきた。
「お前は戻って店の準備しろ」
「夜に顔出すから時間あるもん、いいでしょ?」
「しょうがないな」
太陽が登る昼、暑さに負けて自然に足が早くなる。
「はじめて見たけどさあ、佐伯拓海って奴、長谷川さんの好みと全然違うね」
ルックスでは自分のほうが数倍勝っている、それが土屋の感想だった。
「学生時代の後輩だ。仕事しないでブラブラしてたから拾ってやっただけだ」
「えー無能。生きる価値なし」
「仕事見つけるのは運も絡む」
「じゃあ俺、運がよかった」
ようやくマンションについて、土屋は声色を変えてエレベーター内ですり寄ってくる。
「出かけるまで時間あるから、しようよ…」
ほかの住人もいるのに大胆な態度で迫ってくる。まんざらでもないのか長谷川は笑いながら強引に唇を奪った。
「俺と佐伯拓海、どっちがいい?」
蒸し暑い室内でベッドに寝転がって土屋が誘う。
エアコンをつけてから長谷川はジャケットを脱いでその上に重なった。
「あいつは俺の仕事に支障をきたさないように取引相手や同業者に体を提供する、ただの人形だよ」
「俺もそうなるの?」
「いい子にしていたら何もしない」
片手でゆっくりボタンを外しながらお互いの服を脱がしていく。
「俺、悪い子だよ?長谷川さんほどじゃないけど」
「見ればわかる。こんな優等生いるか」
「あ…」
うるさい土屋を黙らせるため、いきなり下着の中に手を入れて勃起しているそれを強く握った。
多方面に気を使う仕事柄、長谷川はややこしい人間関係の外にいる人間を求めた。
新規オープンのため、店のまわりの同業者への挨拶めぐりや、開店祝いに花を贈ってくれた人や店へのお礼。忙しさの中他店の周年に駆けつけたりして気が休まらない。
そんな中、立ち寄った店で偶然見つけた美少年に、思わず声をかけた。
「どこの店の子?」
名刺を渡そうとしたが、訝しげな目でみて、カウンターに置かれたそれを下に捨てられた。
「俺に声かけてくる奴みんなそう言う。一般人だよ文句あるか」
「ごめん。お詫びに一杯おごるよ」
長谷川は生意気なその態度に怒る様子はなく、むしろ下手に出た。
土屋は慣れているのか何の疑いもなく出された酒を口に含んでにやりと笑った。
次に気がついた時、どこかのホテルのベッドで、長谷川が自分の体の上に乗りかかっているのが見えた。
酒を飲んだ後から記憶がない。
「…っ、てめ…一服盛ったな…」
「大人を舐めんなよ」
裸の長谷川を見て、自分の体を見ると何も身にまとっていなかった。
急に羞恥心がわいてくる。
「服返せよ…っ、それと俺から降りろ!」
押し返そうとするが筋肉質の締まった体を持つ長谷川にはかなわない。
「綺麗な体だね」
指を体に滑らせられると信じられない甘いため息が出た。
「…やめ…俺ノーマルだし…こんなの…やだ……」
「みんな最初はそう言う。でも…」
「…あ…ん……」
初めて胸の突起を口に含まれて、体がしなって声が漏れる。
「すぐ堕ちる」
気がつくとローションを塗られた後ろの穴に長谷川の指が入ってうごめいていた。
「…あぁ!…はっ……」
使い込まれていない土屋は佐伯とは違って強い力で締め付けてくる。
「力抜いて」
「無理に…決まってんだろ…っ…」
2本の指を抜き差ししながら長谷川は土屋の様子を観察していた。
「痛…い、もう許して……」
閉じた瞳から涙があふれ出してシーツに染み込む。
指を抜いて、足を大きく広げて長谷川は土屋の体を貫いた。
「…っ…!」
土屋は声にならない悲鳴を上げて口をぱくぱくしている。
だが悲鳴はすぐ甘い音色に変わって、ビジネスホテルの室内に広がった。
あれからすぐ土屋は長谷川に堕ちて、今も自分の下で喘いでいる。
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