それはファンタジーだったはずっ!

希京

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絡み

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窓の外を眺めながら蓮はため息をつく。

休み時間、仲のよろしいカップルをつい目で追ってしまう。

「はあ…」

「相変わらずため息が多いな蓮」

悠月ゆづきが閉めた窓に背を預けて立って笑っている。組んでいる腕がなんかムカつく。英人ひでとは自分の席に座ってニヤニヤしている。

「俺も他人事だったらなあ」
「気がついた時点で学校変わればよかったな」
「今さら正論で殴るなって」

「おい」

英人がふり返る。
蓮と悠月も視線を上げた。

3人の教室に、蓮の天敵、堀木 颯馬その人が手をポケットにつっこんで乗り込んできた。
眼鏡が光を反射して瞳が見えない。髪は上げてぴっちり整えられている。優等生が人間のガワを着て歩いているようだ。

ーうーわっ、かなり本気モードっ。やばやばやばやばやば。

「お前、大学はどこへ行く?」

「は?」

お笑いならひっくり返りたい所だが、ここは学校だ。

「このままエスカレーターで上に行くけど?天禅の旨味なんてそれくらいだろ」

「そうか。時間取らせて悪かった」

一方的に話を終わらせて堀木 颯馬は踵を返して教室を出ていった。背中からでも高いプライドを感じさせる。

クラスに広がった見えない凍った空気が溶ける。

「はあ…、なんだったんだろ」

「どっちかが違う大学受験するんじゃね?それでモメてるとか」

暗めの金髪を揺らして悠月が言う。

「それをわざわざ乗り込んできてさあ。牽制かね?あいつマジで恐いな」

体の位置をもどして英人も悠月の反応に乗っかる。

「男同士の痴話喧嘩なんかやめてくれよおぉぉ…。そんで巻き込むなって」

蓮のつぶやきに二人も深くうなずく。だが悠月だけ熱のこもった視線を蓮に送っていた。

「本気で悩んでいるんならさ、天禅に通いながらどっかの次の入試受けてみたら。受かればここよりはマシになるんじゃね?」
英人が椅子の背を使ってズルズル~とすべりながら結構現実的な解決法を提示する。

「それだと二人と離れちゃうの寂しいじゃん」

口を尖らせて蓮が反論する。結局その程度の悩みなんだろう。しかし『寂しい』なんてさらっと言える所が人たらしなんだろうな。幼稚園からずっと同じ学校だがケンカらしいケンカをしたことがない。

「考えすぎない事だな」

悠月の一言でおのおの自分の席へ戻る。四六時中オトコの話ばかりしていたらミイラ取りがミイラになりそうだ。

ー西野 律と堀木 颯馬ってどっちがどっち…、いやいやいやもう考えるな。

そうは言っても知ったからには気になる事だった。黒髪をかき上げてぶるぶるぶるっ、と首を回して気分を変えようとした。





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