落ち込み少女

淡女

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第8章「私のレール」

第8章「私のレール」その8

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目の前にいる西山が薄れていくように消えていった。

まるで初めからこの世界にいなかったように。

もう一人の西山は去っていった。

それは納得をできたからなのか、それとも正しさを証明できたからなのか。

西山を見ると、隣にある席に座っていた。

顔を伏せて、深く息を吐いたようだった。

緊張の糸が切れたからだろうな。

西山は座ったまま動こうとはしなかった。

僕はただその時間の中、待っていた。

待つことは苦手だが、不思議と苛立ちはなかったように思える。

彼女は自分の正しさを証明したかったのだろう。

そうだとするなら、この待ちぼうけの時間も無駄にはしたくない。


窓の外を見ると、電車は止まることなく、進み続けている。

この先の景色が変わることがあるんだろうか。

西山が立ち上がり、前に進んでいった。


僕は半歩遅れて、彼女に続いた。

四つ目の車両に着くと、運転席があった。

そこには男の車掌がいた。

官帽型の帽子を被り、スーツを着ている。

後ろ姿から察するに、何の変哲はない、普通の運転手だ。

窓ガラスを叩くと、こちらをちら見して、扉を開けてくれた。

僕と西山はそっと、他人の家に入るような慎重さで運転席に立った。

車掌は、僕らに目もくれずに、車掌としての仕事をこなしている。

西山が近づくとアクセルとブレーキを手から放した。

西山の方をずっと見ている。

西山はおぼろげながら意図を察したのか、

ゆっくりとアクセルとブレーキを触ろうとした。

「それでいいのです」

車掌は、微笑ましいものを見たかのような顔で西山にそう言った。


「でも....」

「それでいいのです」


同じ言葉だったが、さっきよりもゆっくりと落ち着いたようだった。

電車はまっすぐ、線路の上を進んでいる。

どこまでも、ずっとどこまでも。

見たこともない景色が僕らを待っていた。

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