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第10章「沈黙の祭り」
第10章「沈黙の祭り」その1
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昨日と同じように、挨拶をしながら扉を開けた。
しかし、辺りを見回しても、
美術の顧問でこの学校の美術教師である諏訪先生がいなかった。
美術部の生徒らしき者は数名ほど見つけたが、
彼ら彼女らは僕に見向きもしない。
みんな、譜面台のようなものにキャンパスを立てかけるものに向かって、
絵を描いている。
いや、それはわからない。
彼ら彼女らが本当に絵を描いているとは限らない。
僕はたまたま譜面台のようなものにキャンパスを立てかけるものに向かって、
座っているのを見ただけなんだ。
いわば、座禅を組んでいる人を見たからその人は瞑想をしていると思うのと一緒だ。
見た目は様になっていても、頭の中は煩悩だらけかもしれないし、
心の中までのぞくことはできない。
僕は他人の行為を飛躍してしまう癖があることを今この時、気づいた。
そして、本来の目的を思い出し、先生を探してみたが、
どうやら美術室にはいないようだった。
職員室にならいるかもしれないが、職員室はこの校舎の一階にあり、
ここは、四階に位置する。
絵の具一本のためだけに、その距離を上り下りするのは、さすがに気が引ける。
それに諏訪先生が必ずしも職員室にいるとは限らない。
こういう、したくないことだけは消極的で、悪い方向に考えてしまう。
職員室に行くか考えながら、何となく美術室を眺めていると、嗅覚に違和感を覚えた。
ニスなのか絵の具なのかはわからないが、僕はこの臭いが好きだ。
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