fの幻話

ちゃあき

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1. 北の城へ嫁いだ男爵令嬢

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□□

 シューベルグ伯の城は、北の深い森の奥にあった。

 入り口へフィオナを置いて、馬車はさっさと街へ引き返してしまった。

 フィオナが勇気を出して城門を叩くと内側から入りなさいと男の声がして、自然とその扉が開いた。

 暗く寂れた外側とちがい、その城内は手入れが行き届いて金できらびやかに装飾されていてフィオナは驚く。

 二股階段の上に黒髪の男がいて、あれがシューベルグ伯爵なのかとフィオナは息を呑んだ。

「伯爵さま、お目にかかれて光栄です。ダナン男爵長女のフィオナと申します」

「そんなにかしこまらないでください。迎えにも出ずにすまなかった。私は人前に出るのがどうしても苦手なのだ……」

 こちらへ来なさいと言われフィオナはおっかなびっくり、階段を登って行った。

 先を歩く伯爵のあとをついて行くと客間へ通された。

 勧められるままソファへ腰掛け、伯爵手ずから入れてくれた紅茶を礼を述べて受け取る。今ちょうどしつらえたように温かくて不思議な気分になった。

「私が来るのがお分かりになられたのですか?」

「自室の窓からたまたま貴方の馬車が見えたのです」

「そうなのですか? 森をご覧になっていたの?」

「……ごめんなさい、嘘です。貴方の姿を探していました」

 そう言って伯爵が顔を上げた。伯爵の瞳は緑色なのだとフィオナは初めて気が付いた。

 黒い髪に珍しい緑の瞳だ。そして思っていたよりずっと若い男で、自分と大して歳も変わらないようなのだ。
 伏目がちで大人しい雰囲氣だが、綺麗な男だった。

 思っていたのと全く違う結婚相手の姿にフィオナはしばらく呆然と見惚れていた。
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