fの幻話

ちゃあき

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4. ヒンス中尉

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□□

 フォーリーヴ子爵家のヒンスは、幼馴染のフィオナを探し北の森を一昼夜も彷徨っていた。


 彼女を乗せた馬車は半日も掛からず森の城に到着したと言う。案内を頼んだが、あんな不気味な森二度とごめんだと断られてしまった。


「あんな荒城に嫁ごうなんて、お嬢様は気でも触れてたんじゃないのか?」


 御者はそう吐き捨てるように言った。


□□


 陽の光も刺さない深い針葉樹の森で牛より足の遅くなった馬を引いて、ヒンスはようやくその城へたどり着いた。


 見るも無惨な古城にヒンスは心中穏やかではなく、やや荒っぽくその門戸を叩く。中から召使いが出てきて身分を問われ、初めて本当に人が暮らしているのだと分かった。


 継子といえどこんな所へ嫁がせるなんて、エクシエール夫人は悪魔だとヒンスは思った。
 

 しかし、中に通され更に驚く。
 城の中は広く清潔で、眩いばかりに明るく至る所に贅沢な金で細工が施されているのだ。


 あの荒れ果てて陰気な外壁とは、あまりに違いすぎる。その落差に異常性すら感じるほどだった。


 客間で待っていると、懐かしいフィオナが若い男と連れ立って姿を現した。フィオナの召使いかと思ったが、それにしては随分身なりがいい。これはシューベルグ伯の一族の子弟の誰かだろうとヒンスは考えた。


「ヒンス!久しぶりね」

「フィオナ……元気そうでよかった」

「貴方もね。紹介するわ、シノム。彼はフォーリーヴ子爵家のヒンスと言って、陸軍騎馬隊の少尉なの。私の幼馴染よ」

「中尉だ。昇進したよ、今回の出兵で」


 おめでとうとフィオナは笑う。所でヒンスは、自分が一体誰に紹介されているのかまだ分からずにいた。
 するとその黒髪に緑の目の若い男がおもむろに片手を差し出し、握手を求める。


「はじめましてフォーリーヴ中尉。私がフィオナの夫のシノム・シューベルグだ」

「……なんだって!」


 思い掛けず大きな声が出て、シノムもフィオナも驚いてヒンスの顔を見る。
 

 ヒンスもシューベルグ伯の噂しか知らなかったから、まさかこんなに若いツバメのような男が伯爵だと思ってはいなかったのだ。
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