10 / 73
4. ヒンス中尉
1
しおりを挟む
□□
フォーリーヴ子爵家のヒンスは、幼馴染のフィオナを探し北の森を一昼夜も彷徨っていた。
彼女を乗せた馬車は半日も掛からず森の城に到着したと言う。案内を頼んだが、あんな不気味な森二度とごめんだと断られてしまった。
「あんな荒城に嫁ごうなんて、お嬢様は気でも触れてたんじゃないのか?」
御者はそう吐き捨てるように言った。
□□
陽の光も刺さない深い針葉樹の森で牛より足の遅くなった馬を引いて、ヒンスはようやくその城へたどり着いた。
見るも無惨な古城にヒンスは心中穏やかではなく、やや荒っぽくその門戸を叩く。中から召使いが出てきて身分を問われ、初めて本当に人が暮らしているのだと分かった。
継子といえどこんな所へ嫁がせるなんて、エクシエール夫人は悪魔だとヒンスは思った。
しかし、中に通され更に驚く。
城の中は広く清潔で、眩いばかりに明るく至る所に贅沢な金で細工が施されているのだ。
あの荒れ果てて陰気な外壁とは、あまりに違いすぎる。その落差に異常性すら感じるほどだった。
客間で待っていると、懐かしいフィオナが若い男と連れ立って姿を現した。フィオナの召使いかと思ったが、それにしては随分身なりがいい。これはシューベルグ伯の一族の子弟の誰かだろうとヒンスは考えた。
「ヒンス!久しぶりね」
「フィオナ……元気そうでよかった」
「貴方もね。紹介するわ、シノム。彼はフォーリーヴ子爵家のヒンスと言って、陸軍騎馬隊の少尉なの。私の幼馴染よ」
「中尉だ。昇進したよ、今回の出兵で」
おめでとうとフィオナは笑う。所でヒンスは、自分が一体誰に紹介されているのかまだ分からずにいた。
するとその黒髪に緑の目の若い男がおもむろに片手を差し出し、握手を求める。
「はじめましてフォーリーヴ中尉。私がフィオナの夫のシノム・シューベルグだ」
「……なんだって!」
思い掛けず大きな声が出て、シノムもフィオナも驚いてヒンスの顔を見る。
ヒンスもシューベルグ伯の噂しか知らなかったから、まさかこんなに若いツバメのような男が伯爵だと思ってはいなかったのだ。
フォーリーヴ子爵家のヒンスは、幼馴染のフィオナを探し北の森を一昼夜も彷徨っていた。
彼女を乗せた馬車は半日も掛からず森の城に到着したと言う。案内を頼んだが、あんな不気味な森二度とごめんだと断られてしまった。
「あんな荒城に嫁ごうなんて、お嬢様は気でも触れてたんじゃないのか?」
御者はそう吐き捨てるように言った。
□□
陽の光も刺さない深い針葉樹の森で牛より足の遅くなった馬を引いて、ヒンスはようやくその城へたどり着いた。
見るも無惨な古城にヒンスは心中穏やかではなく、やや荒っぽくその門戸を叩く。中から召使いが出てきて身分を問われ、初めて本当に人が暮らしているのだと分かった。
継子といえどこんな所へ嫁がせるなんて、エクシエール夫人は悪魔だとヒンスは思った。
しかし、中に通され更に驚く。
城の中は広く清潔で、眩いばかりに明るく至る所に贅沢な金で細工が施されているのだ。
あの荒れ果てて陰気な外壁とは、あまりに違いすぎる。その落差に異常性すら感じるほどだった。
客間で待っていると、懐かしいフィオナが若い男と連れ立って姿を現した。フィオナの召使いかと思ったが、それにしては随分身なりがいい。これはシューベルグ伯の一族の子弟の誰かだろうとヒンスは考えた。
「ヒンス!久しぶりね」
「フィオナ……元気そうでよかった」
「貴方もね。紹介するわ、シノム。彼はフォーリーヴ子爵家のヒンスと言って、陸軍騎馬隊の少尉なの。私の幼馴染よ」
「中尉だ。昇進したよ、今回の出兵で」
おめでとうとフィオナは笑う。所でヒンスは、自分が一体誰に紹介されているのかまだ分からずにいた。
するとその黒髪に緑の目の若い男がおもむろに片手を差し出し、握手を求める。
「はじめましてフォーリーヴ中尉。私がフィオナの夫のシノム・シューベルグだ」
「……なんだって!」
思い掛けず大きな声が出て、シノムもフィオナも驚いてヒンスの顔を見る。
ヒンスもシューベルグ伯の噂しか知らなかったから、まさかこんなに若いツバメのような男が伯爵だと思ってはいなかったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる