fの幻話

ちゃあき

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18. 地底の墓所

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□□□


 城と同じくぐっしょり濡れた鈍色の石造りの建屋は、立ち込め始めた夜霧の奥に要塞のように横たわっていた。

 シノムが門とその奥の扉の鍵を外す。

 滑車のある門はすべるように開くがやけに重く硬い。そしてくすんではいるが、ランプの灯をきらきらと照り返すのだ。


「金か!? こんなに繊細な……」


 柵は金でできていた。それはまるで絹糸のようにほそく、今にも千切れてしまいそうな不思議な加工を施されている。

 しかしすこし乱暴に扱ったくらいではびくともせず、ひとつの欠けたところもない。

 門と扉にはその絹のような金糸が幾重にも重なり不思議な模様を描いていた。


「我が一族はもしかすると、金を扱うのはこれがはじめてじゃなかったのかも知れないと思うことがある」

「しかし千年ここにいるんだろ? それ以前にそんなもの扱う価値があったのか?」

「千年は尾ひれだよ……しかし、価値はあとからついてきたのかも知れない。そもそも金とはなんなのだ」


 ヒンスたちにとってそれは財産で富と権力の象徴で、貨幣とほぼ同義だ。

 しかしシューベルグ一族にとってその鉱物は何か別の意味を持つのかもしれない。

 金はどこからきた……? シューベルグ一族はどこからきたのだ。一体なぜここへ来て金と出会ったのか。

 しかしとにかく彼らはかつてここで掘り当てたのだ。地底に眠っていたそれを。


「……また雨が降ってきたな」


 降りこむといけないと、シノムが扉を内側へ引っ張る。

 大きな石櫃の内側はこれまた金尽くしだ……あの金糸の不思議な模様が左右天地の全てに張り巡らされている。

 すすでくすんだランプの灯にキラキラとして目がくらみそうになってきた。

 やはりシューベルグ一族の作り上げたこれは、普通の空間ではない気がする。

 確かに彼らは地底で悪魔を掘り当てた訳でも、地底から出てきた悪魔でもないのかも知れない。

 しかしそれなら彼らは何者だったのだ……?

 背後で地底へ続く墓場の扉が、バタンと閉まる音がした。

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