fの幻話

ちゃあき

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30.幸不幸の秤

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□□□


「ウリカ。どこかのドアからほかのところへ出られると思うの。

とにかく扉を開いて見覚えのありそうなところへ入りましょう」

「わかりましたフィオナさま」


 二人はおのおの廊下の左右の扉を開いてみた。

 大体ただの部屋かみょうに気味悪く親しみのない部屋だった。

 二人は知らなかったがもしかするとさらに別の次元へつながる部屋もあったかもしれない。


「……きゃっ!」


 突然ウリカの悲鳴が聞こえた。

 フィオナは覗きこんでいた部屋からあわてて顔を出した。

 すると見知らぬ人がウリカの身体を捕まえて、ドアの先へ出ていこうとするところだった。


「あなた誰なんです! ウリカをはなして」

「ごめんなさい。少しの間だけだから」


 ……——フィオナは瞬間、二人を追うのをためらってしまった。

 それはその誘拐犯が白金の髪に黄金の瞳をもつ筆舌つくしがたいほど美しい人だったからだ。

 継母エリや義祖母アンネースも女神のように美しい。

 しかしそれをも超えていまだかつてこんな美貌を目にしたことはなかった。
 それからそのガラスの杯をうつような声は、たまらない悲しみを湛えているように聞こえた。

 躊躇しているあいだに二人の入ったドアは閉めらてしまった。

 いそいで開いたがそこにはもう二人の姿はなくなっていた。


□□□
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