封魄画帖

ちゃあき

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後編

2

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お菓子屋の老婦人から聞けたのは以下の由来だった。


芙美橋は明治19年6月の大雨の夜、芙美という女性が橋から川へ落ちて亡くなりなづけられた。

芙美は裕福な下駄屋の息子と恋仲だったが、親によって引き裂かれた傷心で自殺したといわれている。

そういえば女霊の片方だけの下駄は女の身なりよりいやに高級そうで、鼻緒は芙蓉の花柄だったと石動はいう。

石動氏はひとをよく見てる。


「じゃああれが芙美さんなら、男に捨てられた悲しみで泣いてるんですかね」
「単なる自己憐憫であんなにも嘆くことができるだろうか」
「あんなにもって?」
「あんなに深い悲しみは中々目にしない。あの女霊の顔からはまるで心を切り裂かれるような後悔のにおいがした。俺もなんだか胸が痛くて…………」


石動は橋をじっと見て動かない。

僕は彼の感性の鋭さに驚いた。
同じものを見て聞いたけど、彼だけが感じるなにかがあるのだ。

嘆く女に肩入れしたのかその表情はどんどん物憂げになっていく。そういえば先週の晩も女の心を慮って動かなくなったのか……。

橋に縛られた嘆き女とおなじように、石動も橋を見つめたまま歩みを止めてしまった。

そのさまはまるで石動自身が嘆き女へかわっていくようなのだ。
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