18 / 43
3話 服を買いに行く
6. 帰りの電車で
しおりを挟む「眠いんじゃん?フラフラしてる」
「あずき、そこ座って」
「……ヒャン」
犬みてーな声とあつしが笑う。
ウトウトしはじめたあずきを電車の空いた座席に座らせて、僕たちはその前の吊り革とポールに掴まった。
恵奈さんの店を出た後もあちこちうろうろしているうちすっかり遅くなってしまった。流れていく窓の外の景色にはもうパラパラとネオンが灯ってる。
すっかり疲れた様子のあずきは座席に座った途端瞼が閉じてしまった。
「悪いな、熱士」
「何だよ」
「靴が一番高かっただろ」
「似合ってたからいいだろ。あずきの靴だったんだよ、最初から」
なああずき? と聞こえないのが分かって熱士は言う。
いつも通りの無表情だけど、楽しげな顔だ。あつしは人間のあずきも気に入ったようだ。
「お前の妹の友達だっつうからただの芋だと思ってたけど……まぁ、芋は芋だけど見どころあるよなこの子」
「……確かに」
適当な通販やホムセンで彼女の身の回りをすませようとしていた自分を軽く殴りたかった。
店から着て来たピンクのトップスと黒いスカートははじめからあずきのものだったみたいによく似合ってる。
白いリボンの靴下と赤い靴は可愛くていっそ憎らしいくらいだ。熱士がいなければこれはなかった。
「なぁ、こいつってお前のなんなの?」
「……え?」
「普通、妹が来れないのに友達だけ連れて歩くか? それにこの子滅茶苦茶お前に懐いてんじゃん」
まさかあずきとの仲を疑われてるのか。
彼女との間に犬と飼い主以上のものは何もない。だから、確かに気が合う子だけど妹の友達の一人にすぎないとそういう関係は明確に否定した。
熱士はふぅんと唸って掴まった吊革をプラプラ揺らす。
「京の妹って高二だっけ?」
「ん? 高二と中二と……」
「ああ、お前兄弟多いんだよな」
そうじゃなくてあずきの友達のと言われたので、高二と答えた。
あずきの外見年齢は微妙なところで、あつしには多分それくらいに見えたのだろう。だからそういう事にしておいた。
しかしなぜあつしはそんな事を気にし出したのだろう。
「いいよなこの子。ひらべったいし、明るいし全然怖くないわ」
「は?」
「ちょっと好きかも知れん」
「は!?」
「いや、まぁ冗談だけど」
「おいおいおいおい」
肩をグーで殴るとあつしはおもしろ、と言って他人事のような顔で笑った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
花鳥見聞録
木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる