私は修道女なので結婚できません。私の事は忘れて下さい、お願いします。〜冷酷非情王子は修道女を好きらしいので、どこまでも追いかけて来ます〜

舞花

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修道女と王都と、花と、死者

薔薇の街⑨回想

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 乾燥した日に、マリーの人生を変える火事は起こった。
 原因は新人のメイドの火の始末が悪かったためだ。

 マリーは寝ている間に煙に紛れていた。

(なんかいい夢を見た気がする)

 夢の中では、ふんわり体が浮いている気分だった。
 ちなみに、マリーは誰かに優しく抱きかかえられ、助けられたらしい、と後から聞いた。
 マリーは、うわ言でその誰かに何か話した気がしたが、覚えてはいなかった。

 気が付けば、エマに治癒魔法をかけられていた。
 横にいるライアンは虫の息だった。

「ライアンをたすけて。私はどうでもいいから」

 マリーは背部に火傷、ライアンは全身火傷の重体だった。
 ライアンに関しては生きているのが不思議なくらいであった。

 暑い夏の日、颯爽と現れた親友のエマはマリーと弟を助けた。
 
 エマは生死を彷徨う2人の傷を癒してくれた。
 マリーが弟を優先した為、彼は無傷まで回復し、マリーには背中に痛々しい痕が残った。
 幸いマリーの家族は全員無事で、領地経営は順調だったので間もなくして新しい屋敷が建てられた。

 マリーは怪我が完全に完治した頃、エマを探した。
 マリーが療養中、一度も姿を見せなかったためだ。
 外に出れるまで回復した頃、すぐさま教会に向かった。
 しかし、エマはマリーの知らぬ間に街をあとにしていた。
 さらに、他の教会の神父にエマの事を聞いても、みんな口を揃えて、困った顔でこう言った。

「ポールは確かに赴任されていたけれど、エマという、そんな少女はいない」と。

 そんなはずはないと、マリーが食い下がると、神父のひとりがぽつりと言った。

「傷を治してくれたって話なら、それは修道院の聖女じゃないか?」
「え……」
「火事の時、我々はそのエマという子を見てないが、君が重症だったことは知ってるよ。たぶん、修道院関係者だろう? こんな魔力があるから、もしかしたら、ユートゥルナ様か、その側付きさんが駆けつけてくれたのかも」
「ああ、そうかもな。あの人達は目立つのが嫌いだし、すぐに帰ったんだろう」

 マリーは、エマが何者か分からなかったため、その話が一番信憑性があると思った。
 マリーはそれを信じて翌年の春、身分を捨てて、修道院の門を叩いたのだった。

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