サラダに恋して

白米かため

文字の大きさ
上 下
7 / 16

4-③※

しおりを挟む
お母さんとゆみちゃんが帰ってきてみんなで円卓を囲んだ。
デパートの北海道フェアで買い込んだ蟹の料理やいくらの醤油漬けが並びとても賑やかだ。

『それでさあ、寛一くんって子がすごいハンサムでね、会わせたかったな~』
『あらぁ、会ってみたいわね~』
『最近の子でしょ? 金髪にピアスとかじゃないだろうなあ』
『いや~それが黒髪でこう、ガッシリしてるっていうか昔の~なんていうか昭和っぽい子でね、ありゃ~相当モテるなあ』

お父さんは寛一さんをいたく気に入ったらしくビールを飲みながらハンサムだ~とかモテるな~とかずっと言っていた。

『ふうん、そがんイケメンなん?』

何故か僕を見ながらたっちゃんが聞いてくる。

『ていうか青葉に買い物来たことあるよ、たっちゃんがサボってたから見てなかったんでしょ』
『南っ…!シッ!』
『タツ~!』
『違うって!ちょっと休憩して、お茶飲んでただけやって!なっ、南っ?』
『タバコ吸ってた』
『タツ!』
『まあまあ、竜人たつひとくんもタバコ休憩ぐらいするでしょ~、寅くんも若い頃ちょくちょくうちにサボりに来てたし』
『ちょっ、貴くんっ、内緒!』
『親父も人のこと言えんやんか!』
『もう時効じゃろ、まっ、タバコくらいは許してやるわ』

ひとしきりご飯を食べ終えると、僕とたっちゃんでお皿を洗い後片付けをした。
お母さんとゆみちゃんはデパートで買ったお菓子などを半分こしたり、お父さんと親父さんは今度海釣りに行こうとかまだ話しをしている。

『俺南ん家でゲームするけん、ゆみちゃん明日のご飯のタイマー忘れんでよ?』
『はーい、南くんありがとね~!』
『こちらこそ、ご馳走様でした。お父さん、あんまり長居しちゃダメだよ?』
『わかったわかったすぐ帰るって、それでさあ寅くんそろそろヒラメが釣れるからさ、今度は船で、』

こりゃお泊まりコースだなと呆れていると腕を取られ、たっちゃんが引っ張っていく。

『なにもう、歩きずらいよ』

チラッと僕を見るたっちゃんは無表情で、少しだけ口元がへの字に曲がっている。
リビングのテレビでスイッチやるんだと思っていたらトントンと階段を登って行ってしまった。

『たっちゃん?』

当たり前のように僕の部屋のベッドに腰をかけて隣をポンポンと叩いている。

『なに?どうしたの?なんかあった?』

同じように腰をかけ隣にいるたっちゃんを見上げると真剣な目で見つめられた。

『さっき…店ん中で、なにしよったん?』

寛一さんとの情事を思い出して顔が赤くなる。
だけどその事じゃないかもしれないし、もしそうだったとしてもキスや体を触り合ってたんだよなんて、言える筈がない。

『さっき、って、寛一さんが来たとき? お父さんと3人で話してたんだよ、お父さんに気に入られちゃって困ってたよ、あはは』
『嘘つくな』
『嘘じゃないよ、なに、何言いたいの』
『貴おじさんが帰ってくる前、なにしとったんか?ってオイ聞いとるんやんか』
『集金だよ、月末だから』
『集金してただけであんな声出すんか?』
『ちょっと、話してて、盛り上がってただけでしょ、声大きかった? ごめんってば』
『これなんや?』

置きっぱなしにしてたベージュ色のズボンが持ち上げられる、あちこち変色したところを見られてしまい慌ててそれを掴んだ。

『か、勝手に触んないでよっ』
『あいつとなんしよったとや?』
『関係ないでしょっ、…ちょっ、たっちゃん!?』

抱きしめられて思わず顔を背ける。ギュウッと握りしめたズボンを撫でてたっちゃんが耳元で話しかけてくる。

『これ、スケベな汁ついとる』
『ち、違うよ…っ』
『ここ触られたんか?』
『やっ…』

たっちゃんの手が下半身に伸びてきてそこを撫であげた。

『ぼ、僕が、なにしてようと、か、関係ないでしょっ、やめてよっ、そんなことっ、んっ』
『あいつとしてイった?』
『んっ、やめてっ、てばっ、やらしい事言わないでよっ』

膝を擦り寄せ両手で腕を掴むけれどたっちゃんの手はどいてくれない。次第にそこを揉むように指が動き始めて恥ずかしさに身を屈めようとするのに、肩から胸まで抑えられてそれすら許してくれなかった。

『やだってば…っ、やだぁっ、たっちゃん、やめて、やめてよぉ…っ』
『濡れとんのか? 中でグチュグチュ言うとる』
『ちがっ、やめて、んっ、も、ダメっ、ダメ…っ』
『南…覚えてとるやろ? 中学ん時、ここしたん』

閉まっていた記憶が無理矢理引きずり出される。
あの日、昼寝していたたっちゃんの膨らんだズボンを撫でたあと2人で抱き合ってまた惰眠に身を委ねていたら、たっちゃんが僕のズボンを脱がせてそこを咥えた。
まだそう言うことが良く分かっていなくて、これはイケナイ事だと咄嗟に寝たふりをした。
たぶんバレていたけれど、たっちゃんは何も言わずそこを舐め上げ隙間から指を差し込むと奥の穴を触り出した。
その時はとにかく怖くて、ハアハアと息を荒立てるたっちゃんにされるがまま触られてしゃぶられて射精した。

焼けた畳や、夏の湿気た空気と、2人の汗の匂いが思い出されて呼吸が苦しくなる。

『そっから夏休みに来んくなったやろ…避けとったっちゃろ…?』
『うぅんっ、それはっ、違うから…本当に、受験のせいで、行けなかった…』
『ずっと、南に触りたかった…他んやつと付き合っても、でも、やっぱり南が忘れられんかった』
『あの時…僕は怖かったよ…』
『そいは、マジでごめん…高校生ぞ、目の前で好いとぉ子が寝とったら我慢できん歳やろが』

シレッと好きとか言うたっちゃんになんて答えればいいか分からず口をつぐんだ。

外でリーンと鈴虫が鳴いている、汗が滲んだ2人の皮膚にだんだん熱が帯びていく。
しおりを挟む

処理中です...