ヘタレαにつかまりまして

三日月

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30 舞台

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「撮れたぁぁ~」


芝浦が舞台袖に引っ込んだ途端に、席に戻ってくる樟葉。
満足気に前髪の隙間から覗く右目を細め、カメラを大切そうに胸に抱き寄せている。
芝浦を撮影する樟葉は、いつもいつも真剣で、撮影後は本当に嬉しそうに笑う。


「命、落とす前に一旦預かります」


「姉上、ありがとぅ」


次の出番、清人さんのブランドまでは、樟葉先輩がカメラを預かるらしい。
命は撮影したデータを確認し、少し顔を曇らせていたがカメラを樟葉先輩に手渡した。
また、ぶれたり上手く撮れてなかったんだろう。
真剣すぎて、カメラを構える樟葉の手は大概ブルブル震えて補正が間に合わない。
本人の身体もフラフラしてるからなぁ。
次は頑張れよと肩を軽く叩いてやりながらまえをむく。

このバレンタインコレクションは、ファッションショーといっても、普段使い出来る服ばかり。
だから、普段ファッションを気にしない俺が見ていてもわかりやすい。
奇抜なデザインや、モデルの過度なメークもない。

観覧席を埋めるのも、十代、二十代の男女。
皆、途中休憩を挟んでも、興奮は覚めることなく熱気は高まるばかり。
隣の遥馬さんは、まるで自分のことのように清人さんの出番が近づき緊張で顔が真っ青になっている。


「遥馬さん、大丈夫ですか?」


「う、うんっ
清人なら絶対大丈夫ってわかってるんだけどね。
あんなに毎日頑張っていたから、成功したら良いなぁって・・・考えていたら、ちょっとドキドキしてきちゃって」


清人さんの、遥馬さんに対する愛情は疑いようもないが。
遥馬さんも清人さんを大切に思われているんだな。
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