ヘタレαにつかまりまして

三日月

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SS(書き下ろし)

友達デート 26(完)

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車の運転席を模した椅子に座ってのレース系や、迫り来るゾンビを銃型のコントローラーから照射されるレーザーで撃ち殺すサバイバル系、太鼓をバチ打ち鳴らすリズム系、勝率を競うメダル系・・・そこかしこから聞こえてくる効果音と光の賑やかな雰囲気に、ゲームセンターの入り口から少し怖じ気づいてしまったが。


「すごいやん!
みこちゃんもかなちゃんも、ほんまに初めてなん?」

「フフフ・・・初めてだよぉ」


子ども用ステップの上で樟葉は、終了後に声をかけてきた三枝に前を向いたまま声を弾ませる。
俺もやりきった充足感に、笑っていた。
画面通りに太鼓叩けば良いゲームだけは、先に見本を示してくれた三枝より高得点の出来。
背後で見守っていたヤマと柴田も拍手。
それにつられて、周りで見ていた他のお客にまで拍手の輪が広がってしまった。

恥ずかしくなって、バチを戻しその場を次の客に空ける。
上手いと言っても、そこまでランクも高くなかったしな。
それに、ゲームに集中していたから囲まれていたことにも気付いていなかった。
樟葉も拍手に驚いて振り返り、ステップから落ちかける。
慌てて柴田が助けに入っていた。

ヤマも柴田も、自分達は見るだけでゲームをしようとしない。
あくまで付き添いで、メインは三人のデートを尊重してくれていた。
まぁ、俺達よりもこの二人の方が目立っていたんだが。


「みこちゃん、音楽得意なんやなぁ。
来年の選択科目、音楽に・・・は、出来へんか」


カラオケのあの歌声を思いだし、樟葉を出迎えた三枝は微妙な顔。
難易度がそれほど高くない曲を選んだとはいえ、樟葉の打ち間違いは10打に満たなかった。
やれば出来るということなんだろうが、カラオケとの落差が激しい。


「そんなことないよぉ。
意識してなら、歌えるもん」

「ほんまに?」

「ほんまにぃ」


三枝の口調を真似、任せてと胸を張る。
この様子だと、三枝の言っていた記憶の塗り替えは上手くいったんじゃないか?
それから、クレーンゲームで失敗を繰り返し俺達は友達デートを終えた。

三枝から、「部活で欲しいものがあるから見て帰るわ」と言われたので、残りの二人を樟葉の家まで送り届けた。
二人きりになった車内には、俺を優しく包み込むヤマのフェロモンが追加されすごく安心する。


「カナ、楽しかった?」

「うん、ありがとうな、ヤマ」


ヤマの肩を借りて、今日一日見ていたヤマにどんなに楽しかったか話している内に、俺は安心しきって寝てしまっていた。
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