ヘタレαにつかまりまして

三日月

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SS(書き下ろし)

生まれ変わったらαだったんだが、思ったより生きづらくて探してしまうのは止められなかった 6

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ミカサの時代はさ。
Ωに対して、差別が凄くって。
βの家庭に生まれたミカサは、Ωとわかってから捨てられたり、Ωを売買の道具に使うとこに売られたりも無かったけど。
うん、それより良い環境だったかってのは、疑問だな。

ミカサの世界は、ひどく狭い。
死ぬまでの登場人物なんて、両手で足りるかもしれない。

一番古い記憶では、両親と姉がいて。
外の世界から帰宅した姉が、俺に字とか教えてくれていた。
この頃は、Ωは隠れて生きなきゃいけないんだと教えられていたけど笑顔も会話もあって平和だったな。

でも、ある日を境に、父親が帰ってこなくなってさ。
多分、Ωの子どもを育てるのが嫌になったんだろうな。
そこからは、たった三人の閉じられた世界。

それまでΩのミカサにも優しかった姉が、父親が消えてから落ち着くまでの間、鬱憤をそのままストレートにぶつける暴力暴言でミカサをなぶった。
昼夜留守の母親が居ないときを狙ってね。

執拗に。

「あんたがΩなんかに産まれてくるからっ」

呪いのように吐き出され。
自分が生まれてきたことを否定され。
姉が一変したのも、自分のせいなのだとミカサは自分を責めた。
そこからミカサは、小さく丸まって生きるのが癖になった。

二人が出掛けて帰ってくるまでは、自由に過ごせば良いのにさ。
自分が悪いと言われ続け、トイレ以外部屋に閉じ籠って。
風呂場は・・・たまには、シャワーを浴びていた気がするけどね。

発情期が来てから、この世界は崩壊する。

βが薬なんか買ったら、身内にΩがいるってバレるし。
本人確認無しで買える窓口なんて、普通のβだった母や姉は思い付きもしてなかった。
相談する先も無かったみたいだしね。

ミカサは、無戸籍っぽかった。
風邪を引いても、虫歯になっても、病院なんか行ってない。
病院で抑制剤の処方なんて、もっとムリだったんだろうな。

このままいけば。
ミカサは、三ヶ月に一度の発情期を薬無しで乗りきりながら、ずっとこの狭い世界で飼い殺されてくのは目に見えていた。
母親は、なんか模索してたっぽいけどね。

母や姉についたミカサの残り香か、それとも家から漏れたのか。
発情フェロモンは、αには隠せない。
ミカサの存在を知った組織に、売られたか拉致されたか。

何度目かの発情期が終わると。

ミカサは、外の世界にいた。
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