17 / 1,039
2 幸せにしたい side 倭人
6
しおりを挟む
姉貴ももうすぐ30歳だしな。
次の当主としてそろそろ身を固めろって、母さんは前から無言の圧力をかけてたけど⋯本気で動いたってことか。
でも、それだと。
今度は、俺と父さんの視線が交差する。
「強制的な番って⋯」
「そ、最悪だ!
αは番を作ったところで、他にも手を出せるし新たな番を作る事だって出来る。
だがなっっ」
父さんが怒りに任せて振り上げた拳は、椅子と対になっているアンティークテーブルをドスンと打ち付けた。
これも樫の木製で父さんの拳に比べればすこぶる頑丈だ。
鈍い音がしたあと、みるみる手の方が赤くなる。
痛いってわかってるのに叩いてしまうのは、父さんの性分だから仕方ないんだろう。
チラッと隣を伺えば、兄貴は父さんを冷ややかな眼差しで見据えている。
父さんの挙動の激しさに、遥馬さんが怯えはしないかと気を張ってるのが伝わってくる。
「Ωはなっ
一度番を作れば、一生ソイツに縛られるんだぞっ
会社の売上のために、Ωと娘を巻き込むなんて何考えてやがんだっ
俺が一番嫌がることをやりやがってっ」
一方の父さんはヒートアップ。
眉間の皺がギリギリ歯軋りとともに一層深く刻まれる。
父さんの孕親(はらおや:子どもを生んだΩのこと)は、αに番を解除されたΩだ。
αを期待されていたのにΩである父さんを生んだことで、あっさり捨てられた。
父さんが今でもαを憎んでる根深い原因だ。
父さんも母さんと番になるまでは、生活のためにΩ風俗で働かざるを得なかった。
詳しくはさすがに息子の俺には言わないけど、色々なαやβを相手にして苦労してきたらしい。
俺は三人姉弟の中で、唯一、父さんの教育方針に沿って育てられた。
父さんが、相手のΩの立場で怒るのもわかるし。
母さんが、αとして菊川家の後継者である姉貴に番を作らせたいのもわかる。
「あの人が段取りし終えてるなら、今ここでそんなこと言ってもどうしようもないだろう。
相手がどこの家か興味もないが、Ω人権解放家で知られる菊川を選んでる時点で多少は良くされてきたΩじゃないのか?
あの人のお眼鏡にもかかったんなら、申し分ない相手なんだろう。
それに、飛鳥に番を強制させたとして、家が決めた相手なら安易に解除も出来ない。
陽太さんが心配することにはならないさ」
兄貴は、自分の家族のことなのにまるで他人のように一歩引いたところから淡々と話す。
姉貴の一生の問題でも、兄貴にとっては遥馬さんに絡まないなら無関係と同じ。
ここまで心の底から興味が無いと割り切って捉えられるとか、この人は本当にブレないな。
次の当主としてそろそろ身を固めろって、母さんは前から無言の圧力をかけてたけど⋯本気で動いたってことか。
でも、それだと。
今度は、俺と父さんの視線が交差する。
「強制的な番って⋯」
「そ、最悪だ!
αは番を作ったところで、他にも手を出せるし新たな番を作る事だって出来る。
だがなっっ」
父さんが怒りに任せて振り上げた拳は、椅子と対になっているアンティークテーブルをドスンと打ち付けた。
これも樫の木製で父さんの拳に比べればすこぶる頑丈だ。
鈍い音がしたあと、みるみる手の方が赤くなる。
痛いってわかってるのに叩いてしまうのは、父さんの性分だから仕方ないんだろう。
チラッと隣を伺えば、兄貴は父さんを冷ややかな眼差しで見据えている。
父さんの挙動の激しさに、遥馬さんが怯えはしないかと気を張ってるのが伝わってくる。
「Ωはなっ
一度番を作れば、一生ソイツに縛られるんだぞっ
会社の売上のために、Ωと娘を巻き込むなんて何考えてやがんだっ
俺が一番嫌がることをやりやがってっ」
一方の父さんはヒートアップ。
眉間の皺がギリギリ歯軋りとともに一層深く刻まれる。
父さんの孕親(はらおや:子どもを生んだΩのこと)は、αに番を解除されたΩだ。
αを期待されていたのにΩである父さんを生んだことで、あっさり捨てられた。
父さんが今でもαを憎んでる根深い原因だ。
父さんも母さんと番になるまでは、生活のためにΩ風俗で働かざるを得なかった。
詳しくはさすがに息子の俺には言わないけど、色々なαやβを相手にして苦労してきたらしい。
俺は三人姉弟の中で、唯一、父さんの教育方針に沿って育てられた。
父さんが、相手のΩの立場で怒るのもわかるし。
母さんが、αとして菊川家の後継者である姉貴に番を作らせたいのもわかる。
「あの人が段取りし終えてるなら、今ここでそんなこと言ってもどうしようもないだろう。
相手がどこの家か興味もないが、Ω人権解放家で知られる菊川を選んでる時点で多少は良くされてきたΩじゃないのか?
あの人のお眼鏡にもかかったんなら、申し分ない相手なんだろう。
それに、飛鳥に番を強制させたとして、家が決めた相手なら安易に解除も出来ない。
陽太さんが心配することにはならないさ」
兄貴は、自分の家族のことなのにまるで他人のように一歩引いたところから淡々と話す。
姉貴の一生の問題でも、兄貴にとっては遥馬さんに絡まないなら無関係と同じ。
ここまで心の底から興味が無いと割り切って捉えられるとか、この人は本当にブレないな。
29
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
【運命】に捨てられ捨てたΩ
あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
奇跡に祝福を
善奈美
BL
家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。
※不定期更新になります。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる