ヘタレαにつかまりまして

三日月

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2 幸せにしたい side 倭人

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姉貴ももうすぐ30歳だしな。
次の当主としてそろそろ身を固めろって、母さんは前から無言の圧力をかけてたけど⋯本気で動いたってことか。

でも、それだと。

今度は、俺と父さんの視線が交差する。


「強制的な番って⋯」

「そ、最悪だ!
αは番を作ったところで、他にも手を出せるし新たな番を作る事だって出来る。
だがなっっ」


父さんが怒りに任せて振り上げた拳は、椅子と対になっているアンティークテーブルをドスンと打ち付けた。
これも樫の木製で父さんの拳に比べればすこぶる頑丈だ。
鈍い音がしたあと、みるみる手の方が赤くなる。

痛いってわかってるのに叩いてしまうのは、父さんの性分だから仕方ないんだろう。
チラッと隣を伺えば、兄貴は父さんを冷ややかな眼差しで見据えている。
父さんの挙動の激しさに、遥馬さんが怯えはしないかと気を張ってるのが伝わってくる。


「Ωはなっ
一度番を作れば、一生ソイツに縛られるんだぞっ
会社の売上のために、Ωと娘を巻き込むなんて何考えてやがんだっ
俺が一番嫌がることをやりやがってっ」


一方の父さんはヒートアップ。
眉間の皺がギリギリ歯軋りとともに一層深く刻まれる。
父さんの孕親(はらおや:子どもを生んだΩのこと)は、αに番を解除されたΩだ。
αを期待されていたのにΩである父さんを生んだことで、あっさり捨てられた。
父さんが今でもαを憎んでる根深い原因だ。

父さんも母さんと番になるまでは、生活のためにΩ風俗で働かざるを得なかった。
詳しくはさすがに息子の俺には言わないけど、色々なαやβを相手にして苦労してきたらしい。

俺は三人姉弟の中で、唯一、父さんの教育方針に沿って育てられた。
父さんが、相手のΩの立場で怒るのもわかるし。
母さんが、αとして菊川家の後継者である姉貴に番を作らせたいのもわかる。


「あの人が段取りし終えてるなら、今ここでそんなこと言ってもどうしようもないだろう。
相手がどこの家か興味もないが、Ω人権解放家で知られる菊川を選んでる時点で多少は良くされてきたΩじゃないのか?
あの人のお眼鏡にもかかったんなら、申し分ない相手なんだろう。
それに、飛鳥に番を強制させたとして、家が決めた相手なら安易に解除も出来ない。
陽太さんが心配することにはならないさ」


兄貴は、自分の家族のことなのにまるで他人のように一歩引いたところから淡々と話す。
姉貴の一生の問題でも、兄貴にとっては遥馬さんに絡まないなら無関係と同じ。
ここまで心の底から興味が無いと割り切って捉えられるとか、この人は本当にブレないな。
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