ヘタレαにつかまりまして

28 敵視

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｢フフフ・・・ずっとあんな感じだから、僕には無理だよぉ｣


前髪の間から右目だけ覗かせて、樟葉はヘラリと笑った。
自分の体操服の上から、柴田のジャージを羽織っている姿は、服に埋もれた猫みたいだ。
服の中で溺れているように見えて、頼りない。

今朝は笹部が遅刻で、一時間目の体育にも間に合っていない。
シバシバコンビが揉め出せば、さっさと終わらせてくれる存在がいないとこうまで悪化するのか。

胸ぐらを掴みあって睨みあう二人に、βの教師は｢止めろ｣と遠巻きに注意しているが・・・耳を貸す雰囲気ではないな。
純粋な組み手なら、柴田の方が圧倒的に有利ですぐにカタはつくのに。
αの格付けが絡むと拮抗する。

芝浦が格付けで挑発し、柴田に柔道をさせない、が、正解か？
Ωの俺にもわかる芝浦の格付けフェロモン。
柴田の頭上から、まるで飲み込もうとするかのように襲いかかり。
柴田はそれに応戦する方に気を取られ、技をかける方に気がいっていない。