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修行
最寄り駅からバスで2時間揺られた先、民家もまばらな山の麓で下車すると目の前に千段を超える階段が山頂に向かって伸びている。
そこを登り切ると、思わず見上げる立派な山門があり、その先に僧侶や僧侶見習いから観光客まで修行に訪れる寺があった。
早朝の境内。
完全に俗世から離れた山々に木霊するのは鳥の囀り。
宿坊の中はまだ仄暗く、四人部屋で動く物陰は無かった。
その一角で眠っていた寺崎 憲次は、布団の中で無意識に微笑んでいた。
山に満ちた神聖な気配が身体に満ちているせいか、今朝も重い荷を両肩から下ろしたような爽快な目覚めを得ている。
3歳年上の兄が15歳でここに僧侶見習いの修行に訪れた際は、夏でも寒さに凍えそうなくらい夜半に気温が下がり、朝の勤めの前に凍死しそうだったと笑っていたが、去年の改修で二重サッシに気密性の高い壁の補強が成され、室温は常に一定に保たれるよう空調まで整備されている。
この御時世、修行にも気を使うのだと案内役の僧侶は苦笑いしていた。
5時15分に鳴らされる振鈴の音が聞こえてくるまでは、目が覚めても布団から出ることは許されない。
ここに来たばかりの憲次は、毎夜寝付きが悪く、この振鈴の音が聞こえても同室の者に起こされるまで寝続けていたのだが。
(修行に来て良かった⋯)
目を閉じたまま、これも仏の導きだと感謝する。
ここに来てから6日目の朝。
憲次は急に目覚めが良くなったのだ。
毎夜自分一人ではどうしようもない悩みを抱えているせいか、悶々と考え事をして寝付けずにいたのにすんなりその日の夜から眠れるようになった。
手が行き届いていなかった欄間のホコリを丁寧に掃除したからだろうか⋯もっと修行に励めば、この悩み、覚醒と共に胸を締め付ける譲への想いもいつか浄化されてしまうのだろうか。
それは寂しいなと、憲次は息をゆっくりと吐き出した。
去年の暮。
商工会の寄り合いに兄を迎えに行ったときのこと。
兄の同級生、呉羽 譲と2年ぶりに再会することができた。
都会の大学に進学してから一度も帰省していなかった譲は、髪を染め、洒落たジャケットまで着こなし田舎の高校生だった面影がまるで無かった。
なかなか乱暴な兄とは真逆の柔和な譲は、昔から憧れの対象だったのだが。
いつの間にか抜いていたらしい背を間近で見下ろし、意外に華奢で色白でなんとも言えない甘い香りまで感じてしまうとゾクッと身体が震えてしまい途方に暮れた。
気安く話しかけてくれる譲と言葉を交わすうちに、アルコールでふんわり酔った艶めかしい姿で微笑まれ、その直後まるで天啓を得たような確信が憲次の胸を突き刺した。
(あぁ、この人に俺は惚れていたのか⋯)
眠ってしまった兄を譲と両脇で支えながら冬の道を共に歩いた。
雪を踏みしめ、足先から凍るような道程に不満しか抱いてなかった往路と違い、もっと遠ければ良いのにと願うほど復路は幸せな時間に変わっていた。
玄関で一服したあと帰るという譲を追いかけ、勢いのまま告白。
ぽかんと口を開けた譲にあっさり振られてからと言うもの、勉強にも身が入らず三年生になっても進路が定まらない。
見兼ねた兄が、この修行に参加してはどうかと勧めてくれたのだが渋々でもここに来てよかったと今は感謝している。
今日は、10日目。
2週間コースで申し込んでいたが、延長してみようか⋯
そんな思いが過った憲次の耳に振鈴の音が響いた。
そこを登り切ると、思わず見上げる立派な山門があり、その先に僧侶や僧侶見習いから観光客まで修行に訪れる寺があった。
早朝の境内。
完全に俗世から離れた山々に木霊するのは鳥の囀り。
宿坊の中はまだ仄暗く、四人部屋で動く物陰は無かった。
その一角で眠っていた寺崎 憲次は、布団の中で無意識に微笑んでいた。
山に満ちた神聖な気配が身体に満ちているせいか、今朝も重い荷を両肩から下ろしたような爽快な目覚めを得ている。
3歳年上の兄が15歳でここに僧侶見習いの修行に訪れた際は、夏でも寒さに凍えそうなくらい夜半に気温が下がり、朝の勤めの前に凍死しそうだったと笑っていたが、去年の改修で二重サッシに気密性の高い壁の補強が成され、室温は常に一定に保たれるよう空調まで整備されている。
この御時世、修行にも気を使うのだと案内役の僧侶は苦笑いしていた。
5時15分に鳴らされる振鈴の音が聞こえてくるまでは、目が覚めても布団から出ることは許されない。
ここに来たばかりの憲次は、毎夜寝付きが悪く、この振鈴の音が聞こえても同室の者に起こされるまで寝続けていたのだが。
(修行に来て良かった⋯)
目を閉じたまま、これも仏の導きだと感謝する。
ここに来てから6日目の朝。
憲次は急に目覚めが良くなったのだ。
毎夜自分一人ではどうしようもない悩みを抱えているせいか、悶々と考え事をして寝付けずにいたのにすんなりその日の夜から眠れるようになった。
手が行き届いていなかった欄間のホコリを丁寧に掃除したからだろうか⋯もっと修行に励めば、この悩み、覚醒と共に胸を締め付ける譲への想いもいつか浄化されてしまうのだろうか。
それは寂しいなと、憲次は息をゆっくりと吐き出した。
去年の暮。
商工会の寄り合いに兄を迎えに行ったときのこと。
兄の同級生、呉羽 譲と2年ぶりに再会することができた。
都会の大学に進学してから一度も帰省していなかった譲は、髪を染め、洒落たジャケットまで着こなし田舎の高校生だった面影がまるで無かった。
なかなか乱暴な兄とは真逆の柔和な譲は、昔から憧れの対象だったのだが。
いつの間にか抜いていたらしい背を間近で見下ろし、意外に華奢で色白でなんとも言えない甘い香りまで感じてしまうとゾクッと身体が震えてしまい途方に暮れた。
気安く話しかけてくれる譲と言葉を交わすうちに、アルコールでふんわり酔った艶めかしい姿で微笑まれ、その直後まるで天啓を得たような確信が憲次の胸を突き刺した。
(あぁ、この人に俺は惚れていたのか⋯)
眠ってしまった兄を譲と両脇で支えながら冬の道を共に歩いた。
雪を踏みしめ、足先から凍るような道程に不満しか抱いてなかった往路と違い、もっと遠ければ良いのにと願うほど復路は幸せな時間に変わっていた。
玄関で一服したあと帰るという譲を追いかけ、勢いのまま告白。
ぽかんと口を開けた譲にあっさり振られてからと言うもの、勉強にも身が入らず三年生になっても進路が定まらない。
見兼ねた兄が、この修行に参加してはどうかと勧めてくれたのだが渋々でもここに来てよかったと今は感謝している。
今日は、10日目。
2週間コースで申し込んでいたが、延長してみようか⋯
そんな思いが過った憲次の耳に振鈴の音が響いた。
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