厄介な年下幼馴染が倍増しました。

三日月

文字の大きさ
5 / 13

昼間の電柱の影

しおりを挟む
昔から憲次は、憲一と違って大人しく真面目なイメージがあった。
憲一が寺の屏風に穴を開けたり、市から景観認定されている庭の黒松を折ったり、後輩から金を巻きあげていた先輩方に鉄槌を喰らわせ大人にやりすぎだと叱られたりのエピソード製造機だったのとは真逆。

何かあれば真っ先に疑われその殆どが濡れ衣にならない兄の背を、憲次は譲より近くで見てきたのだからそうなって然りなんだろう。
翌朝目覚めた譲は、そんな憲次が今更憲一に頼まれたからといって自分に告白するだろうかと腑に落ち無い気もしたのだが、他に思い当たることが無くそれ以上深く考えなかった。

兄弟で断れないことだってありそうだ。


「良いからどけっ
本当にお前は何がしたくて化けて出てるんだ?」
『化けてなんてねぇんだけどなぁ』


ジタバタ足を動かしても手応えがまるでない。
それなのに、譲の頬を撫でる掌は暖かく、見た目は半透明なのに感触は人肌と相違がない。
本当に、コレは何なのだろうと譲は謎の物体を改めて見上げた。

四日前、ふとアパートの外が気になり窓を開けると、すぐ前の電柱の影にコレは立っていた。
そう、そのときは地面に足をつけていたし、何も話さず無言でこちらを見上げていたから譲は憲次が会いに来たのだろうかと錯覚したくらいだ。
憲一と憲次に距離があったのと比例して、個人的に譲が憲次と何かした記憶は無かった。
若干癖の強い憲一ではあったが、友達としては最高に面白かったので譲は自らつるんでいたのだ。

けれど、そこは田舎町。
何か向こうであって相談に来たのか、夏休みに遊びに来たのか、あぁそう言えば告白ドッキリぶりだからそのことかもしれないと譲はあれこれ考えつつ、「憲次だよな?取り敢えず入って来い」と手招きして窓から誘った。
夏の陽射しの下で帽子も被らず、作務衣姿で突っ立っているのを見兼ねたのだ。

譲は窓を閉め、直ぐに飲めるよう冷蔵庫から麦茶を出してコップに用意した。
けれど、いくら待っても憲次は部屋に入って来ず、近所を探してみたが見当たらない。
心配になって憲一に連絡をしたら、憲次は修行で山奥に行っていると言われ、盆で忙しいんだと珍しく即切りされた。

何だったのだろうかとモヤモヤしたが、見間違いだったのかもしれないなと譲は考えそのまま忘れた。
ハッキリした異変は、翌朝。
譲は、悲鳴を上げて飛び起きることになった。
初めて宙に浮かびニヤニヤ嗤う姿を見たのだから声も出る。
しかも、至近距離で見下されていたから、透けて見える天井とソレの輪郭が混じって空間が歪み気持ち悪くなった。
譲の悲鳴は、時間帯も声の大きさも非常識レベル。
隣から薄い壁をドンッと強く叩かれてしまった。

トイレに逃げても壁をすり抜け追い掛けてくる。
交番に裸足で駆け込んでも、背中に張り付かれているのに気付いてもらえない。
耳元で『ユズちゃん、早く帰ろぅぜぇ』『ユズちゃん、諦めなよ』としつこく繰り返され、譲の相手をしていた警官の身体に絶妙な角度で潜って『阿修羅っ、あ、ヤベぇな、もう一人探してこねぇと』と笑わされた。
早朝起き抜けの格好で裸足で駆け込んできた青年が、調書の途中で突然吹き出したのだ。
あとの警官の対応は冷たいものだった。
譲は愉快犯と思われたらしく、厳重に注意されてすごすご帰宅する羽目になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...