例えβに生まれても

三日月

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34 反則の王子様

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肝心なときに失敗しちゃう自分が恥ずかしくて恥ずかしくて両手で顔を覆う。
あぁ、もぅ、何でこんなところで噛んじゃうんだろうっ
思いきって告白するぞって、慣れない勇気を出したら力みすぎちゃった。
こんなんじゃ清人様に信じてもらえないよ。

もう一回やり直したいけど。
やり直したいけど。
清人様を前に、もう一回好きなんて言える自信がない!
俺のことだから、また同じことになりそう。

散々な告白は、無かったことにしたいくらい恥ずかしかったんだけどね。
清人様の耳には、届いてしまってるんだよね。
清人様、呆れてるかな?
それ以前に、俺の言葉は酷かったから、意味がわかってもらえてないかもしれない。

情けなさに下唇を噛んでいたらね。
俺の身体を押し潰そうと迫っていたどろどろの怖いフェロモンが、潮が引くように消えて。
清人様の手が、俺の両手首を強く掴んだ。

その掌は、熱くて。
冷えていたあの感触は、幻だったのかな?と思うくらいに俺の手にも熱が伝わってくる。
それは、じわじわとゆっくりしたものじゃなくて、そこに火を点されたくらいに急速な熱だった。

清人様の様子が気になって、そっと顔から手を離したらね。


「・・・ハル、本当に?」


清人様が俺の前に屈んでいて、見下ろす場所に顔が来ていた。
手首を離れて、頬を優しく包み込む掌にほっと息を吐いて答える。


「は、い」


わぁぁ、改めて聞かれちゃうと恥ずかしい。
消えちゃう手前の小さい声しか出てこなかったよ。
メイクに縁取られた清人様の瞳が、俺の少しの変化も見逃さないぞって迫ってくる。
手だけじゃなくて、清人様御自身から熱気が溢れてくるみたい。
清人様に呑まれてしまう。


「ハルは、誰のものにも、なってない?
ずっと俺のもので、いいんだね?」


清人様は、一言一言、区切りながら言葉を選んで確かめてこられる。
清人様の言葉は、ドラマとか映画の中に俺まで引きずり込まれちゃったのかなって不安になっちゃうくらい現実味がない。

この場には二人しか居ないんだから、間違いなく俺に聞かれてるんだけど。

自分が告白した後でそんなこと言われたら、ふわぁぁ~~って、舞い上がっちゃう。
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