ヘタレαにつかまりまして ２

21 夏休み side 倭人

1

あぁ、カナに会いたい・・・

はぁーと、マスクの下で静かに溜め息をつきながら手は休めない。
休めたら、背後で料理中の兄貴からフェロモンが飛んできそうだ。

朝から南の離れのキッチンでずっと立ち作業が続いている。
体力的な疲れは感じてないけど、気持ちが無理。
カナが圧倒的に足りない！
相手が兄貴じゃなかったら、適当にこなして早めにこの場から離れてカナ補充に走ってるっ

夏休みは、ずっとずーっと、カナと二人で過ごすつもりだったから、少しでも離れてるのが正直辛い。
まぁ、今回の手伝いは、カナも絡んでるから俺には拒否権無いんだけどさぁ。
朝御飯食べてから、別れてもう二時間以上経つんだけど。

兄貴が材料の計量まではしてくれてたから、種類ごとに混ぜて捏ねてを繰り返し、今は発酵が終わったパン生地から次々成形をしてる。
耳たぶくらいの柔らかい感触を確かめながら、丸めて伸ばして餡やクリームやカレーの種を詰めていく。
今日は、菓子パンで攻めるらしい。

まぁ、作業も楽しいと言えば楽しいし。
ここにカナがいたらずっと作ってられるんだけど・・・

チラッと背後に目を向けると、兄貴は目を尖らせてシャカシャカ手元のボールを泡立て中。
マスクをしてるから表情は読みにくいけど、真剣でピリピリしてるのは伝わってくる。
兄貴は、手を抜くことを知らないらしくって、特に遥馬さんが絡むと少しのミスも許さない。
自分にも、他人にも。

こんな兄貴の側に、カナは無理だよなぁ。
結婚式の準備の時も、怯えてたし。

窓の外を眺めると、夏らしい青空が広がっていて強めの日差しがタイル張りの床もカウンターも全てが白で統一されたキッチンエリアを照らしている。
全館空調で暑さは感じないが、かなり外は暑そうだ。