ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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36 牙 side 陸

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そこにいたのは、両手で顔を隠し天を仰ぐ渡。
何をやってるんだ?
渡は「見てしもたぁ」とくぐもった声を漏らす。


「・・・そんなんで、一緒に入れるのか?」

「は、入れるし、入るもんっ」


渡は、握り拳を天に突き上げ宣言。
エイヤッと、どこの戦地に向かうつもりなのかと尋ねたくなる気迫でもって残っていた服を荒々しく脱いだ。
何故か、その後は腰に手を当てて仁王立ちだ。
初めて見る渡の裸が、仁王立ちって・・・お前らしいっちゃらしいが。
やることが振り切れてんな。

こっちを見ないようにしていたくせに、手を外した途端、それこ俺のそつま先から頭まで視線を這わせ、萎えたペニスには直ぐ目を逸らしたがここから逃げ出す様子はねぇ。

俺の方は、先ずは服越しに触れた場所に目が吸い寄せられた。
柔らかそうな淡い毛の間から垂れ下がってる濡れそぼったペニス。
それから、肉付きの程よい胸もその尖りも、俺の視線に気付いて身を捩った際に見えたふっくらした尻も。
舐め回して齧りてぇ。
ゾクゾク、下腹に熱が籠もる。

渡は、不埒な目に気づいたんだろう。
直ぐにその場にしゃがみ込むと、膝を抱えたまま「ふわぁぁあ」と寄声を漏らした。
本当に行動が読めぇヤツだな。


「うぅ、もっと鍛えとけば良かったぁああっ
なんなん、反則っ、目の毒っ
カッコ良すぎてズルいッ」

「・・・は?」


訳のわからねぇことを言いだされ、そのテンパり具合がとても俺の手に負えそうにねぇ。
散々水泳を教えてやってたときに、見倒してるだろう。
ガリガリと首をかきながら自然と顔がニヤける。
渡から、格好良いと言われんのは嬉しい。

セーフワードを決めないままだが、一先ず入るか。
ちょうど音楽と一緒に湯張り終了のメッセージもスピーカーから流れてくる。


「セーフワードは、風呂に入って考えるぞ。
風邪引く前に、お前も来いよ」

「・・・あんな、入ってもあんまり見んといてな?」

「アホ。
真っ裸は初めてだが、どんだけ一緒にプールに通ってたと思ってんだ。
今更だろう」


んなこと約束出来るか。
手探りで触れる方が怪我させるだろう。
すぐに来ない渡を放って先に入り、シャワーを浴びてから椅子に腰を下ろし身体を洗い始める。
渡は、後から恐恐入ってくると、こそこそ俺の背後に周りツンツンと背中を指で押してきた。


「お、俺の裸、見慣れてたら、あんまりそんな気にならん?」


弱々しい声と鏡に映った情けない顔に吹き出しそうになる。
さっき勃ってんのを見てただろうが。
思い出の地で番になるために一緒に来てくれた俺のΩ。
手のかかるβと認識してたときとまるで違う。

怖がらせたくねぇとか悩んでるのが、渡の前だと馬鹿馬鹿しくなんな。


「なるから困ってんだよ」

「ほんまに?
俺と番になれそう?
俺、かなちゃんやみこちゃんみたいに可愛かったりせんやん?
裸見て、やっぱムリとかならへんかった?」


あー、まだるっこしいなっ
シャワーヘッドを掴んで、振り向きざまに渡の身体にシャワーを浴びせる。
突然の水流に慌てる姿を見て笑いながら、「アホか」と渡のイントネーションを真似て言ってやった。


「俺が番にしてぇのは、この世でお前しかいねぇ。
唯一無二で唯一無比。
いい加減にしねぇと、ここでまるごと喰っちまうぞ」
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