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38 記憶 side 陸
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渡は、二冊のアルバムに貼られた写真の年齢を合わせながら器用にページを捲っていく。
その隣で、初めて見る渡の写真とそれに添えられたエピソードや本人の思い出話に耳を傾けていたんだが。
段々その口調に、緩やかで隠しきれない辿々しさが出てくる。
目をこすり、うつらうつらと身体を揺らしながら話を続けようする渡。
次第によりかかっていた体重が増し、声が完全に途切れた。
肩からズリズリと下がっていった頭が、俺の膝へぽてんと落ちる。
疲れてたみてぇだし、しばらく寝かしとくか。
身体をずらし、スヤスヤ気持ち良さげに寝ている渡の頭を寝やすいように少し動かす。
手触りの良い髪を撫でながら、もう片方の手で自分のアルバムを静かに閉じた。
それをテーブルの端に避け、起こさねぇように気をつけながら渡のアルバムを手繰り寄せる。
渡が目覚めていないのを確認してから、改めて初めからゆっくり見直した。
笑ったり、泣いたり、怒ったり。
家族写真もあれば、近所の友達と遊んでいる写真もあったりと賑やかなやり取りが聞こえてきそうな渡の成長が記録されている。
俺みてぇに、コロコロ太っていたわけじゃねぇから劇的変化はねぇが、今よりもずっと幼く無邪気さに輪をかけた天使が並んでいてどれも可愛い。
喰いたい、つーより、懐に入れて持ち歩きてぇ可愛さだな。
何度見返しても飽きず、渡が起きるまで繰り返し眺めて楽しんだ。
渡が目覚めたのは、それから一時間くれぇしてから。
壁掛け時計の針が十時を過ぎた頃だった。
「んん・・・?」
渡の身体が僅かに動いたのを察し、渡のアルバムを閉じた。
起きるのかと顔を見ていたら、ピクピクと瞼が動きパチリと開いて目が合った。
直ぐには状況が飲み込めなかったらしく、キョトンとしていたんだが。
俺の膝で寝ていると分かった途端、口元を抑えて大興奮。
「わぁぁあっ、俺、陸に膝枕してもろてたんっ
めっちゃ嬉しいっ」
身体を捻り、俺の腰に手を回して抱きついてくる。
あまりの興奮ぶりに、落ち着けとこっちは苦笑いなんだがわぁわぁと騒いでなかなか収まらねぇ。
眠りが浅そうだったから、移動を最低限にして寝かしてただけなんだがそこまで喜ばれるとは思わなかったぜ。
「もぉ、陸はわかってへんなぁ!
恋人の膝枕なんて、めっちゃ最高なシチュエーションやんっっ」
顔を上げふふっと上機嫌に笑う渡。
直ぐに頭を戻して、寝転び直す。
βじゃそういうもんなのか、渡の読んでる恋愛小説の中の話なのか。
まぁ、そのへんを突き詰めて聞いてもαにとっちゃ膝枕はあんま縁がねぇからな。
すんなり同意は出来ねぇ。
αは本能的に頭に触られるのを嫌うからな。
恋人になったら膝枕をされても良いとか、そんな簡単な話じゃねぇんだ。
逆に、渡と同じように誰かに膝枕が出来るかと言われりゃ、そっちも無理だ。
自分の膝にわざわざ頭を乗せるとか、よっぽど守りてぇとか離れたくねぇと思わねぇ限りまず思いつきもしねぇし、今までしたことがねぇ。
渡は喜んでるが、俺が他の人間にしたらゾッと肝が冷える行為でしかねぇだろう。
かと言って、こんだけ喜んでる渡に「あぁ、俺にはわからねぇよ」と頷くのは躊躇うな。
渡が相手だから、言葉を選び少しでも歩み寄りたいと考えちまう。
ふと、学園祭で膝枕をされていたことを思い出した。
あぁ、俺が渡に言えんのは、これくらいか。
「確かに、お前にしか出来ねぇし、お前にしかして貰いたくねぇな」
渡からは、今日一番の笑顔が返ってきた。
その隣で、初めて見る渡の写真とそれに添えられたエピソードや本人の思い出話に耳を傾けていたんだが。
段々その口調に、緩やかで隠しきれない辿々しさが出てくる。
目をこすり、うつらうつらと身体を揺らしながら話を続けようする渡。
次第によりかかっていた体重が増し、声が完全に途切れた。
肩からズリズリと下がっていった頭が、俺の膝へぽてんと落ちる。
疲れてたみてぇだし、しばらく寝かしとくか。
身体をずらし、スヤスヤ気持ち良さげに寝ている渡の頭を寝やすいように少し動かす。
手触りの良い髪を撫でながら、もう片方の手で自分のアルバムを静かに閉じた。
それをテーブルの端に避け、起こさねぇように気をつけながら渡のアルバムを手繰り寄せる。
渡が目覚めていないのを確認してから、改めて初めからゆっくり見直した。
笑ったり、泣いたり、怒ったり。
家族写真もあれば、近所の友達と遊んでいる写真もあったりと賑やかなやり取りが聞こえてきそうな渡の成長が記録されている。
俺みてぇに、コロコロ太っていたわけじゃねぇから劇的変化はねぇが、今よりもずっと幼く無邪気さに輪をかけた天使が並んでいてどれも可愛い。
喰いたい、つーより、懐に入れて持ち歩きてぇ可愛さだな。
何度見返しても飽きず、渡が起きるまで繰り返し眺めて楽しんだ。
渡が目覚めたのは、それから一時間くれぇしてから。
壁掛け時計の針が十時を過ぎた頃だった。
「んん・・・?」
渡の身体が僅かに動いたのを察し、渡のアルバムを閉じた。
起きるのかと顔を見ていたら、ピクピクと瞼が動きパチリと開いて目が合った。
直ぐには状況が飲み込めなかったらしく、キョトンとしていたんだが。
俺の膝で寝ていると分かった途端、口元を抑えて大興奮。
「わぁぁあっ、俺、陸に膝枕してもろてたんっ
めっちゃ嬉しいっ」
身体を捻り、俺の腰に手を回して抱きついてくる。
あまりの興奮ぶりに、落ち着けとこっちは苦笑いなんだがわぁわぁと騒いでなかなか収まらねぇ。
眠りが浅そうだったから、移動を最低限にして寝かしてただけなんだがそこまで喜ばれるとは思わなかったぜ。
「もぉ、陸はわかってへんなぁ!
恋人の膝枕なんて、めっちゃ最高なシチュエーションやんっっ」
顔を上げふふっと上機嫌に笑う渡。
直ぐに頭を戻して、寝転び直す。
βじゃそういうもんなのか、渡の読んでる恋愛小説の中の話なのか。
まぁ、そのへんを突き詰めて聞いてもαにとっちゃ膝枕はあんま縁がねぇからな。
すんなり同意は出来ねぇ。
αは本能的に頭に触られるのを嫌うからな。
恋人になったら膝枕をされても良いとか、そんな簡単な話じゃねぇんだ。
逆に、渡と同じように誰かに膝枕が出来るかと言われりゃ、そっちも無理だ。
自分の膝にわざわざ頭を乗せるとか、よっぽど守りてぇとか離れたくねぇと思わねぇ限りまず思いつきもしねぇし、今までしたことがねぇ。
渡は喜んでるが、俺が他の人間にしたらゾッと肝が冷える行為でしかねぇだろう。
かと言って、こんだけ喜んでる渡に「あぁ、俺にはわからねぇよ」と頷くのは躊躇うな。
渡が相手だから、言葉を選び少しでも歩み寄りたいと考えちまう。
ふと、学園祭で膝枕をされていたことを思い出した。
あぁ、俺が渡に言えんのは、これくらいか。
「確かに、お前にしか出来ねぇし、お前にしかして貰いたくねぇな」
渡からは、今日一番の笑顔が返ってきた。
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