嘘も重ねりゃ♡恋♡になる

鷹美4

「だっ、誰なんですかっっ」


カッと目を見開き迫られたじろぐ王将。
日傘を放り出し、パキパキ指を鳴らす様なんて悪役レスラーになれそうだ。


「そ、それは秘密。
その、俺の片想いだからね。
鷹美ちゃんの気持ちは嬉しいんだけど、俺、今はその子しか見えなくて」
「そんなの、イヤーーーッ」


目に涙を浮かべた鷹美は、これ以上聞きたくないと両耳を手で抑えて走り去ってしまった。
王将は呆気にとられていたが、落ちた日傘を持ち上げて閉じる。
まぁ、なんとかここから居なくなってくれたし傘は学校で誰かに託せばいいよな。

「やったぜ」と信雄を振り返ると、頭を抱えられていた。
王将は予想外の反応に首を傾げる。
なんだよ、上手く行ったのに。


「お前、ヤバイぞっ
あの兄貴が出張ってくるぞ」
「兄貴？」
「バカ、お前忘れたのかよ。
夏休みに来てたとき、一緒に遊んでた兄弟がいたろ。
腕っぷしの強い上の兄貴は、鷹美命でこの辺じゃ有名なんだぞ。
下のは、まぁ、お前のこと慕ってたし、意識しすぎてか今まで全然寄って来ないけどさ」
「そんなの、いたっけ？」
「うわぁ、ひでえ」


年に一回三日間を六年続けてはいたが、この村での思い出は刺激に溢れた都会の王将にとって鮮明には残っていない。
1番仲が良かった信雄以外は、名前も顔もぼんやりしていた。