嘘も重ねりゃ♡恋♡になる

三日月

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嫌がる寅次の手を、恥ずかしがって力が入らなくなる恋人つなぎで捕まえる。
案の定、へにゃへにゃになった可愛い恋人に王将は身体を寄せてゆっくり帰り道を歩き出した。


「あのさ、二年したらトラも卒業だろ?」
「う、うん」
「二年間、俺はばーちゃんを手伝って、あそこに何が必要かじっくり考えるからさ。
トラには、その必要なものを学びに行くときに一緒についてきて欲しいな」
「お、俺も?」


思わず立ち止まってしまった寅次の両手を取り、改めて王将は願いを伝えた。


「俺は、トラを一人にしたくない。
六度も夏を離れて過ごしただろ?
今年の夏も、それ以外の季節も、俺はトラと一緒にいたいなって」


急に来なくなった俺を想って、願掛けに髪を染めて待っていてくれた寅次。
誰にやめろと言われても、黒髪校則縛りが当たり前な田舎で一人貫くのは相当勇気がいっただろう。
王将は不運でここに来たと思っていたが、今なら寅次の願いに応えた神様のおかげだなと感謝出来る。


「で、でも・・・」


この村で自分は待つものと思っていた寅次は、即答出来ない。
それを見越していた王将は、ヨシヨシと寅次のふわふわな黒髪を撫でた。
寒さですっかり冷たくなっている。


「二年あるし、今すぐじゃなくて良いよ。
んー、そうだな。
まずはさ、今年の夏は一緒に何するか考えようぜ」


夏、と言うキーワードにぴょこんと寅次のテンションが上がる。
パーッと寅次の顔が輝き、ムギュッと王将の両袖を掴んだ手は堪えきれずにウズウズ動いていた。


「お、俺、したいことといっぱいあるっっ」
「よしっ、帰ってコタツで聞くか」
「急いで帰ろうっ」


王将の腕を取り、そこから走ろうとする寅次。
今までで一番の笑顔を見せられた王将は、夏にはもっと喜ばせようと決意していた。
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