鬼ごっこ~あのこがほしい~

三日月

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前日譚(黒曜&雅)

捕まえた2 (完)

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幾度も繰り返される柏手。
打つ度に、技が高まっていくのがわかる。

まさか、コレに、下ると言うのか。
我が身が。

近づかれる度、甘い香りが濃くなる。
コレは、こんなにも極上だったのか。

『鬼さん、こちら
手の鳴る方へ

鬼さん、こちら
手の鳴る方へ

探し疲れは、こちらへこちら
その声、その身、その魂
お前の真名を、こちらに渡せ』

抗うことは、許されない。
この鎖は、幾重にも重なった人の魂よりも尚深く。
我が魂を縛り付ける。
一度も口にしたことさえない、我が真名を引き出される。

名を耳にした人が、ふわりと微笑む。

歌を閉じようと、一歩、二歩。
こちらへと歩み寄る。

『鬼さん、こちら
手の鳴る方へ』

やんわりと。
だが、力では断ち切れない鎖が、
我を、その全てを捕らえたのを知る。
意思とは関係なく、動かされる身体。
柏手を打ち終わった人の元へ。
脚が動く。
手が動く。

『鬼さん、こちら
手の鳴る方へ』

なんと忌々しい、技か。

意思に反し、歌い終わった人の前に身体が進む。
技の力で、人の身体に触れさせられる。

初めて、コレが人から個人であることを認識させられる。

両肩に手を添え、この個人が、我が主となったことを嫌でも魂に刻まれる。

抗いようがない。
この空間には、我が主の高めた技が幾重にも重なり、場を圧倒し既に我が魂は下っている。
我が主の術により、我が口から応答の歌を引き出される。

「捕まえた」

言い終えた途端、頭上から砕け散った空間の破片が降り注ぐ。

そして。

我が身から。

3本の角が離れ、床に落ちた。

鬼としての誇りが、落とされ。
人に下った事実を突きつけられる。

人ごときに。

肩に手を置かれたまま、身を任せる虚ろな我が主。
力を入れれば、簡単に折れるこの身体が。
今は守らねばならないのだと、知る。
自分ではどうにもならない、魂の縛り。

縛りを受けても尚、喰いたいと思わせるほどの香り。
これほどの極上であるとわかっていれば。
警戒したものを。

技により隔離されていた空間から元の場に戻っても、我が主からの香りは消えることがない。

厄介だな。

無数の鬼に、狙われることになる。
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