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4 上司と会社への忠誠心が激減していた件
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よしっ、と、昨日までは魔王様万歳主義で言われるがまま流されていた自分に気合いを入れて部屋の中央に進んだ。
社内改革よ、脱ブラック企業よっっ
魔王の間に比べたら、随分こじんまりしていても20畳はある部屋だ。
四方は壁に囲まれ、照明は壁にベッタリ張り付いている光る苔のみ。
ぼんやりと光るだけだから、夜目が効かないと本を読むのは無理なレベル。
そのど真中に鎮座、じゃないわ。
鎮寝とでも言うの?
石で強固に作成されたキングサイズのベットに寝そべる魔王様。
我が主、社長、最高責任者のファグナルディア様・・・は、まだ夢の中のようだ。
カビとほころびだらけの掛け蒲団を首までしっかりあげて、スヤスヤ寝ている。
寝ていらっしゃる。
闇の深淵をそのまま流し込んだような黒髪は、ルリアールの髪より尚黒く艶めき。
天然日焼けの褐色の肌に、閉じた睫毛の影が落ちている寝顔は生唾を飲み込みたくなる色気に満ちている。
やや厚みのある唇から寝息が漏れ聞こえるだけで、程度の低い人間は魅了され虜になるだろう。
生で見るどんな芸能人よりも、見目麗しい魔王様に虜にされる優奈の乙女脳は社畜脳で粉砕。
今は、そんな場合じゃないからっ
いつもの流れならば、この見た目だけは完璧なファグナルディア様の寝顔を黙って・・・まぁ、心中陶酔しきった美辞麗句をルリアールは並べ立て起きるのを待ちわびていたわけだけれど。
今日からのルリアールは、一味違うっ
人格に優奈スパイス追加っ
記憶に有る限り、今まで誰もしたことはないんだけれど。
私は容赦なく、その御身から掛け蒲団を剥がしちゃうわよっ
目標は、お腹が見えるくらいっっ
「とりゃあーーーっっ」
バッサァッ
舞い上がるのは埃や胞子だけ。
掛け蒲団は、いろんなものを吸収しすぎてルリアールの細腕では両手でも端を捲るだけで精一杯だった。
蒲団レベルの重さじゃない!
よくこんなのを身体に掛けて寝てるわね。
寝返り打てずに床擦れ出来るわよっ
「ん、ん"ーーー、なにごとだぁ・・・?」
起こされたことなんて無い筈の魔王様は、胸元まで捲られた蒲団を寝ぼけながらも探しているらしい。
やや掠れたハスキーボイスに、うっかりうっとりしている場合じゃなかったわ!
パタパタ右腕が蒲団の上を右往左往。
ちなみに、就寝中はその身には何も身に付けていない裸族だ。
趣味睡眠なくらい寝てるから、裸族が馴染みすぎてうっかり裸で城内を歩いているのを数えきれないくらい目撃している。
優奈なら、痴漢行為で悲鳴をあげそうな姿だけどルリアールとしては本気で崇めていた。
魔王様命な魔族って、怖い。
怠惰な魔王様。
私が蒲団の端を持ったまま、右手の動きを交わし続けていたら諦めてモソモソ残った蒲団に潜ろうとしている。
せめて、目くらい開けなさいよ。
現状確認もせずに寝ないで、危険。
これが、急襲だったら即死してるんじゃないの?
「ル、ルリアール、何をしているんだ?」
思慮深いジョファングレンドは、私の隣、魔王様の頭の脇まで小走りで寄ってきた。
ルリアールになにか考えがあってのことだろうと、感情を抑えながら尋ねてくる。
「起こしてます」
ニッコリ笑って見せたら、ジョファングレンドには珍しく言葉につまった。
あぁ、ルリアールって基本無表情だったわ。
ついつい、社畜脳が対人では笑えと指令を出してくるから笑ってしまった。
「おいおい、正気か?」
ナグナジアンセは、私の隣にのっしのっし、腕より太い狂気の尻尾を振りながら歩いてきた。
何気に面白がっているのが声に表れてるわよ。
目が合うと、分かりにくいけど長年の付き合いで笑っているのが分かった。
隠す気もないみたいね。
ガッゼルだけは、微動だにせず、その場に留まっていた。
発光する白い目で、じっと事の成り行きを伺っているんでしょう。
ガッゼルらしい。
「魔王様に起きていただかないと、お話ができないでしょう?
少しお話をしたいのよ」
「たがらといって、強制的に起こすのは・・・」
長には絶対服従、この精神が刻まれた社畜脳傾向のジョファングレンドは難色を示す。
でも、待っていたら、いつ起きるかわからないし。
毎日誰かが出勤しても、仕事を与える魔王様が起きずに開店休業も日常茶飯事。
魔王様の気紛れでしか仕事をしないなんて、効率が悪すぎるのよね。
そのあたり、しっかり見直さないと。
本当に、落ちぶれた魔王軍は改善すべき点が多すぎる。
ここはやっぱり社長自らやる気を出して頂き、社員全員の改善に対する士気をまず高めていただく必要があるわ。
私一人が形を整えただけじゃ、長続きしないもね。
うん、なんか会社でなんのためにやってるのかわからない仕事よりやる気が出てくるわっっ
なんといってもこの魔王軍は、私の魔族における一生に関わってくるんだもの。
だって、私は・・・
「いいじゃない、ジョファングレンド。
私は、魔王様の妻。
起こすくらいしても良い筈よ」
そう、優奈と違い会社とは雇用関係だけでは終われない。
ルリアールは、個人営業主に永久就職してしまっている身なのだから。
社内改革よ、脱ブラック企業よっっ
魔王の間に比べたら、随分こじんまりしていても20畳はある部屋だ。
四方は壁に囲まれ、照明は壁にベッタリ張り付いている光る苔のみ。
ぼんやりと光るだけだから、夜目が効かないと本を読むのは無理なレベル。
そのど真中に鎮座、じゃないわ。
鎮寝とでも言うの?
石で強固に作成されたキングサイズのベットに寝そべる魔王様。
我が主、社長、最高責任者のファグナルディア様・・・は、まだ夢の中のようだ。
カビとほころびだらけの掛け蒲団を首までしっかりあげて、スヤスヤ寝ている。
寝ていらっしゃる。
闇の深淵をそのまま流し込んだような黒髪は、ルリアールの髪より尚黒く艶めき。
天然日焼けの褐色の肌に、閉じた睫毛の影が落ちている寝顔は生唾を飲み込みたくなる色気に満ちている。
やや厚みのある唇から寝息が漏れ聞こえるだけで、程度の低い人間は魅了され虜になるだろう。
生で見るどんな芸能人よりも、見目麗しい魔王様に虜にされる優奈の乙女脳は社畜脳で粉砕。
今は、そんな場合じゃないからっ
いつもの流れならば、この見た目だけは完璧なファグナルディア様の寝顔を黙って・・・まぁ、心中陶酔しきった美辞麗句をルリアールは並べ立て起きるのを待ちわびていたわけだけれど。
今日からのルリアールは、一味違うっ
人格に優奈スパイス追加っ
記憶に有る限り、今まで誰もしたことはないんだけれど。
私は容赦なく、その御身から掛け蒲団を剥がしちゃうわよっ
目標は、お腹が見えるくらいっっ
「とりゃあーーーっっ」
バッサァッ
舞い上がるのは埃や胞子だけ。
掛け蒲団は、いろんなものを吸収しすぎてルリアールの細腕では両手でも端を捲るだけで精一杯だった。
蒲団レベルの重さじゃない!
よくこんなのを身体に掛けて寝てるわね。
寝返り打てずに床擦れ出来るわよっ
「ん、ん"ーーー、なにごとだぁ・・・?」
起こされたことなんて無い筈の魔王様は、胸元まで捲られた蒲団を寝ぼけながらも探しているらしい。
やや掠れたハスキーボイスに、うっかりうっとりしている場合じゃなかったわ!
パタパタ右腕が蒲団の上を右往左往。
ちなみに、就寝中はその身には何も身に付けていない裸族だ。
趣味睡眠なくらい寝てるから、裸族が馴染みすぎてうっかり裸で城内を歩いているのを数えきれないくらい目撃している。
優奈なら、痴漢行為で悲鳴をあげそうな姿だけどルリアールとしては本気で崇めていた。
魔王様命な魔族って、怖い。
怠惰な魔王様。
私が蒲団の端を持ったまま、右手の動きを交わし続けていたら諦めてモソモソ残った蒲団に潜ろうとしている。
せめて、目くらい開けなさいよ。
現状確認もせずに寝ないで、危険。
これが、急襲だったら即死してるんじゃないの?
「ル、ルリアール、何をしているんだ?」
思慮深いジョファングレンドは、私の隣、魔王様の頭の脇まで小走りで寄ってきた。
ルリアールになにか考えがあってのことだろうと、感情を抑えながら尋ねてくる。
「起こしてます」
ニッコリ笑って見せたら、ジョファングレンドには珍しく言葉につまった。
あぁ、ルリアールって基本無表情だったわ。
ついつい、社畜脳が対人では笑えと指令を出してくるから笑ってしまった。
「おいおい、正気か?」
ナグナジアンセは、私の隣にのっしのっし、腕より太い狂気の尻尾を振りながら歩いてきた。
何気に面白がっているのが声に表れてるわよ。
目が合うと、分かりにくいけど長年の付き合いで笑っているのが分かった。
隠す気もないみたいね。
ガッゼルだけは、微動だにせず、その場に留まっていた。
発光する白い目で、じっと事の成り行きを伺っているんでしょう。
ガッゼルらしい。
「魔王様に起きていただかないと、お話ができないでしょう?
少しお話をしたいのよ」
「たがらといって、強制的に起こすのは・・・」
長には絶対服従、この精神が刻まれた社畜脳傾向のジョファングレンドは難色を示す。
でも、待っていたら、いつ起きるかわからないし。
毎日誰かが出勤しても、仕事を与える魔王様が起きずに開店休業も日常茶飯事。
魔王様の気紛れでしか仕事をしないなんて、効率が悪すぎるのよね。
そのあたり、しっかり見直さないと。
本当に、落ちぶれた魔王軍は改善すべき点が多すぎる。
ここはやっぱり社長自らやる気を出して頂き、社員全員の改善に対する士気をまず高めていただく必要があるわ。
私一人が形を整えただけじゃ、長続きしないもね。
うん、なんか会社でなんのためにやってるのかわからない仕事よりやる気が出てくるわっっ
なんといってもこの魔王軍は、私の魔族における一生に関わってくるんだもの。
だって、私は・・・
「いいじゃない、ジョファングレンド。
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そう、優奈と違い会社とは雇用関係だけでは終われない。
ルリアールは、個人営業主に永久就職してしまっている身なのだから。
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