希望を歌う悪の姫

花村 ネズリ

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変わらぬ日々

森のダンス

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「何故、このような場所に‥?」

「俺が居ては悪いか‥?」

ここは、入学式の日に偶然見つけた場所。
学園にある美しい庭園ではなく、
手入れの行き届いていない枯れた庭園です。

一般生徒、ましてや王族や貴族が近づきたがる場所ではありません。

汚れたブロックに、蜘蛛の巣。
生い茂った木々。


「もしや‥虫取りですか‥?」


やはり、王族とあってもまだ12歳。
虫取りをしたくなるお年頃‥
虫がいる方へ足を進めていたら、
ここへたどり着いた‥ですかね‥?


ルド「貴様は馬鹿か!!誰がこの歳で虫取りをするか!!
はあ、よく聞け変人女。俺はな、ペアが出来ず貴様が落ち込んでいると思い、それを見て嘲笑ってやろうと、お前を探しにきてやったのだぞ、喜べ。」


ラピス「な、なぜ私が落ち込んでいると分かったのですか!?はっ!?もしかしてリカルド様は、人の心が読めるのですかっ!?」


ルド「は?!いや、まあ、‥そ、そんなところだ!!
というか!俺の質問に答えろ!
貴様は5年前アルベルトを治した踊り子かと聞いている!」



5年前の踊り子‥アルベルト様7歳の誕生日パーティーは今にも鮮明に覚えている。

煌めく世界。全てが初めてで‥
人々の目は緊張したけれど、

大勢の人々に感謝され、
また人の体を治せたという事実は
私を強くしました。


ラピス「はい。5年前、アルベルト様のお声を治療致しましたが、それが何か‥?」


ルド「やはりな‥アルベルトがやけにしつこく、お前を探しているから気になっていただけだ。」

ラピス「アルベルト様が‥?」

あの日から一度もお会いしていないというのに何故‥?

王様はパーティーの日、礼をしに行くとおっしゃっていましたが、
私を王族に干渉させないよう、両親が手を回していたはず。

私は、クローリー家にとって、
無くてはならない駒、
王族に取られてはたまらないといったところですわね。


ルド「貴様の歌と踊りが、忘れられないほど美しかったとよ。もう一度見てみたいと、何度も俺に話してきた。

まあ、その舞とやらを、
俺は偶然にも観たわけだが‥。
確かに美しかった‥。だが、
話で聞いていたほどでもないな。
期待はずれだ。」


期待、はずれ‥


ラピス「ふふ、そうですか‥。貴方の目にはそう見えたのですね。リカルド様は、良い目をしています。」


ルド「どういう意味だ‥?」

ラピス「いえ、この舞の能力を目にした人々の中には、神の力という者もおります。しかし、これは人間が作り出した力。欲にまみれた醜い人間が、欲の為に作り出した力なのです。ただ、欲の為だけの力。されど、人を救う力。
この力を沢山の人々が、奇跡と呼びます。
だけれど本当は、見えていないだけで、とてもとても醜いのです。

だから、期待はずれと言う言葉、その通りだと思いました。リカルド様は、隠れた物を見抜く瞳をお持ちなのだと、そう思っただけです。」

清い風が私達の間を通り過ぎる。


ルド「‥貴様は‥変な女だ。俺は、酷い事を言っているのだぞ‥?」

困惑した顔のリカルド様。
こんな顔をするリカルド様は、何故かそこまで親しくもないのに、珍しい気がした。


ラピス「あら?ふふ、自覚はあるのですね?」

ルド「チッ、貴様はまた、レディの扱いとやらで怒り狂うと思っていた‥。本当に期待はずれだ。」

ラピス「‥今の言葉は、わたくしにもう一度教えを請いたいと言う事でしょうか?」


ルド「何故そうなる!?貴様の頭はどうにかしているぞ!?」

ラピス「まあ!酷い!!レディに対してなんて事を!!これは、また教えて差し上げなければいけませんね。」

ルド「なっ!?」

ラピス「まずはエスコートからと教えたでしょ?さあ、リカルド様。お手を」

ルド「くそっ!?また!?おい、やめろ!!」


ラピス「次に私の腰に腕を回してください。ほら、こうです。」

ルド「まてまて!?何する気だ!!」


ラピス「簡単な事です。リカルド様は、私を慰めに来たのでしょう?レディを慰める方法は簡単です。女性の前に跪き、レディの腕をとって、ダンスにお誘いすればよいのです。」

ルド「慰めになど誰が!!俺は嘲笑いにきたんだ!!!」

ラピス「ふふ、わたくしは頑固ですのよ?お誘いがあるまで、貴方をを離しませんわ」

ルド「な、なん!?は、はなっ!?‥うぐ‥」

ラピス「さあ、少しだけこの可哀想な令嬢に付き合ってくださいませ。王子様」


ニコリといつも通りの笑顔を向ける。
お節介な人‥
たった1ヶ月の付き合いですわ。
クラスメイトの1人を追いかけてこんなところにまで来て‥
親しくもないのに、慰めようと、我儘を聞いてくれる。

ほら、今も


ルド「‥はあ‥分かった。くそっ、


レディ、私と一曲、踊っていただけませんか‥?」


彼が跪き、風が草木が空を泳ぐ。
黄金のその髪は、太陽に照らされ、キラキラと輝いていた。

まるで御伽噺に出てくる王子様の様。

だけど、

居た堪れないその表情は面白くって、

柄でもない事をするからです。

馬鹿な人‥



ラピス「ふふ、よろしくてよ?」

ルド「チッ、やはり気にくわない女だな。
だが、お前はそれでいいのかもしれないな‥。」

ラピス「どう言う事ですか‥?」

ルド「まあ、なんだ。生意気で馬鹿なお前が、一番お前らしいと言う事だ。」

ラピス「っ!?‥やはり、リカルド様は、見る目がありませんわ。」

ルド「なっ!?おい、さっきは!?良い目だと言ったではないか!!」

ラピス「‥だってわたくしは、聡明で華麗な令嬢ですわ。生意気や馬鹿などと、下品な言葉似合いませんもの。リカルド様は見る目がありません。」

ルド「き、さまっ!?覚えてろよっ!?くそくそ!!」

ラピス「あら、荒々しいダンスは嫌いじゃなくてよ?ふふ、」

ルド「っ~‥!?!?」



その楽しい時間は、
わたくしの胸の痛みも、孤独も、
全て忘れさせてくれた。











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