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16歳
5月18日 夜
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恐る恐るめくった白い毛布の中にくるまっていたものは。
そこには、ぐっすりと笑顔で寝ているしゅんがいた。
私は、すぐさま声をかけた。
「しゅん。起きて、もう散歩の時間だから外に出よう。」
けれど彼はピクリとも反応しない。
少し叩きながら、また声をかける。
「しゅん、起きて、今日は涼しいからゆっくり散歩できるよ。そうだ、ボール持ってこ、あの公園に行こ。一緒に走り回った公園に行こう。今日はそこがいいんだ。」
部屋に響く私の独り言。私は少しカチンときた。
「しゅん!寝てるふりはいいから!明日も学校だから早く帰っちゃうから行こ!!」
ゆっくり揺さぶっていたしゅんの体を、激しく揺さぶっても、しゅんは微動だにしない。
しゅんの背中に当てていた手を、顔に持っていく。すると、私の体は全てを理解し、涙が零れてきた。
あんなにモフモフして温かかったしゅんの体温の影すらないほどに冷たい体。いつもは湿ってる鼻がカサカサに乾いている。寝ている時によく耳がピクピク動く癖も、無い。
それでも私はずっと話しかけた。
「あのね、しゅん。高校に入って早々、クラスのみんなから私の事勘違いされてるみたいなんだよね・・・。そんな賢くないしツンツンしてるわけじゃないんだけどなあ、目力強いのかなあ。あ、でもね、私はしゅんの目がキリッとしてるとこ、すごく好きだよ。・・・好きだからさ、もう1回目開いてよ、私の話、隣に座って一緒に寝ながら聞いてよ、なんで、目を、開けてくれ、ないの?」
しゅんの亡骸にぼたぼたと私の涙がこぼれ落ちる。しゅんのカサカサになった鼻をまた湿らせてしまうほどに私の涙が何度も何度も落ちる。
「嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!死んじゃ嫌だ!なんで私を1人ぼっちにさせるの?まだ一緒に暮らすっていう約束果たしてないじゃん!」
しゅんに怒りを向けながら、でもそれは自分のプライドの高さゆえに会いに来なかった私が悪い。事実を分かっているからこそなににこの怒りを向けたら良いのか分からないのだ。ただ、ひたすらに泣き続けた。なんでなんで、と答えの分かりきった質問を誰もいない一人だけの空間に投げかけては自分でその答えを理解し、辛くなり、また嗚咽を漏らす。
かれこれ小1時間泣いた。いつかはこの涙が枯れるだろうと思っていたのに、むしろどんどん溢れ出てくる。喉が潰れそうになったって、息苦しくなり咳き込んだって、涙は止まらない。
数十分経った後、部屋のドアが開き、父が入ってきた。父の無言の言葉に私は嫌だと首を振った。口を開きかけた父を遮るように私はぎゅっとしゅんにくっついていた。絶対に離れたくない。離れたら全てが終わってしまう。しゅんという存在が消えてしまう、私の手の中から、大切な存在が消える。それだけは嫌だと、父に泣きながら吐き捨てた。けれど結局、翌日学校だということもあり、自宅に帰るしかなかった。いつもなら去り際に、『しゅんまた来るね!』と元気よく手を振っていた。それがもう、今後一切ないのだ。そう考えたらまた涙が出てきた。玄関の前で蹲り、ただひたすらにしゅんの匂いがまだ残る家を覚えておくために、ズルズルと帰る時間を引き伸ばすことしか、私にはできなかった。
家に帰ると、そのままベッドに倒れ込み、死んだように眠った。
私の何かが、5月18日で完全に止まってしまった。
そこには、ぐっすりと笑顔で寝ているしゅんがいた。
私は、すぐさま声をかけた。
「しゅん。起きて、もう散歩の時間だから外に出よう。」
けれど彼はピクリとも反応しない。
少し叩きながら、また声をかける。
「しゅん、起きて、今日は涼しいからゆっくり散歩できるよ。そうだ、ボール持ってこ、あの公園に行こ。一緒に走り回った公園に行こう。今日はそこがいいんだ。」
部屋に響く私の独り言。私は少しカチンときた。
「しゅん!寝てるふりはいいから!明日も学校だから早く帰っちゃうから行こ!!」
ゆっくり揺さぶっていたしゅんの体を、激しく揺さぶっても、しゅんは微動だにしない。
しゅんの背中に当てていた手を、顔に持っていく。すると、私の体は全てを理解し、涙が零れてきた。
あんなにモフモフして温かかったしゅんの体温の影すらないほどに冷たい体。いつもは湿ってる鼻がカサカサに乾いている。寝ている時によく耳がピクピク動く癖も、無い。
それでも私はずっと話しかけた。
「あのね、しゅん。高校に入って早々、クラスのみんなから私の事勘違いされてるみたいなんだよね・・・。そんな賢くないしツンツンしてるわけじゃないんだけどなあ、目力強いのかなあ。あ、でもね、私はしゅんの目がキリッとしてるとこ、すごく好きだよ。・・・好きだからさ、もう1回目開いてよ、私の話、隣に座って一緒に寝ながら聞いてよ、なんで、目を、開けてくれ、ないの?」
しゅんの亡骸にぼたぼたと私の涙がこぼれ落ちる。しゅんのカサカサになった鼻をまた湿らせてしまうほどに私の涙が何度も何度も落ちる。
「嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!死んじゃ嫌だ!なんで私を1人ぼっちにさせるの?まだ一緒に暮らすっていう約束果たしてないじゃん!」
しゅんに怒りを向けながら、でもそれは自分のプライドの高さゆえに会いに来なかった私が悪い。事実を分かっているからこそなににこの怒りを向けたら良いのか分からないのだ。ただ、ひたすらに泣き続けた。なんでなんで、と答えの分かりきった質問を誰もいない一人だけの空間に投げかけては自分でその答えを理解し、辛くなり、また嗚咽を漏らす。
かれこれ小1時間泣いた。いつかはこの涙が枯れるだろうと思っていたのに、むしろどんどん溢れ出てくる。喉が潰れそうになったって、息苦しくなり咳き込んだって、涙は止まらない。
数十分経った後、部屋のドアが開き、父が入ってきた。父の無言の言葉に私は嫌だと首を振った。口を開きかけた父を遮るように私はぎゅっとしゅんにくっついていた。絶対に離れたくない。離れたら全てが終わってしまう。しゅんという存在が消えてしまう、私の手の中から、大切な存在が消える。それだけは嫌だと、父に泣きながら吐き捨てた。けれど結局、翌日学校だということもあり、自宅に帰るしかなかった。いつもなら去り際に、『しゅんまた来るね!』と元気よく手を振っていた。それがもう、今後一切ないのだ。そう考えたらまた涙が出てきた。玄関の前で蹲り、ただひたすらにしゅんの匂いがまだ残る家を覚えておくために、ズルズルと帰る時間を引き伸ばすことしか、私にはできなかった。
家に帰ると、そのままベッドに倒れ込み、死んだように眠った。
私の何かが、5月18日で完全に止まってしまった。
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