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序章
出会い
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月が綺麗だった
真っ赤な、雲ひとつない世界に影が伸びている
「あの…」
まるで1つの芸術品にインクを落とすような、そんな不敬さを孕みながら彼女は口を開いた。
彼女の名前は「セイラ=カップバーン」
ある日全てを失い、ただ1つ、命だけを握り締めた女である
「……どうか、したか?」
前を歩き彼女に一瞥さえよこさない美しい芸術品、赤い月を見上げている男
セイラは彼の名前すら知らないままただ後をつき、枯れ果てた地平線を歩いていた。
「その、…失礼かも、ですけど…どこに向かっているんでしょうか、それと、貴方のお名前は…」
モゴモゴと口ごもっているセイラを振り返り、しまった、とでも言わんばかりに眉を顰めた美しい男が口を開いた。
「人間と契約するのは久しくてな、新たな下僕に名すら名乗らないとは、本当にうっかりしていた。」
斜め上に視線をむけ悩んだような姿勢のまま男はそのまま語り始めた。
「私の名前は…そうだな、ウェインと呼んでくれ。基本その名前だ…それと、今は私の拠点に向かっているところだ。散歩がてら歩いていたら随分と遠くまで来てしまったからな…まあ、2日もあれば着く場所だ。」
「ウェイン…さん、ですか、どうして、私を助けてくれたのですか??」
「お前は質問が多いな…簡単だ、お前が願い、私がそこにいた。ただそれだけだな。」
ぼんやりと話を聞いているセイラにため息を吐きながら目を伏せたウェインは、ぴく、と耳をそばだてた
「何か…??」
不安そうなセイラに薄く唇を歪めながらウェインは遠くを眺めた
「喜べ、これ以上足を棒にする必要は無くなったぞ」
「え??」
ウェインが指をさすその先によくよく目をこらす。
そこには一台の真っ黒な車の形が見え
…そこで気づいた
「あれ?私、こんなに目、よかったっけ…」
ぼんやりとしつつ呟くとウェインはまたひとつため息を吐く
「貴様、さては相当な無知だな?もしくは馬鹿か」
呆れた顔のウェインは人差し指でセイラの頭頂部をつつく
「あいたっ!!す、すみません…私の村、本とかあんまりなくって…」
えへへ、と頭を掻く彼女に「そうじゃない」とウェインは口を挟む
「この戦争、ひいてはなぜ世界がこうなったか、についてだ。今時の幼子でも知っているぞ。」
「う、うーん…確かに聞いた気がします。でも、私お花のことを覚える方が楽しくって…」
「…仕方ない、後で詳しく教えるものをあてがってやる」
もう目と鼻の先まで迫った車を見ながら、ウェインは何度目かもわからないため息をつくのだった。
真っ赤な、雲ひとつない世界に影が伸びている
「あの…」
まるで1つの芸術品にインクを落とすような、そんな不敬さを孕みながら彼女は口を開いた。
彼女の名前は「セイラ=カップバーン」
ある日全てを失い、ただ1つ、命だけを握り締めた女である
「……どうか、したか?」
前を歩き彼女に一瞥さえよこさない美しい芸術品、赤い月を見上げている男
セイラは彼の名前すら知らないままただ後をつき、枯れ果てた地平線を歩いていた。
「その、…失礼かも、ですけど…どこに向かっているんでしょうか、それと、貴方のお名前は…」
モゴモゴと口ごもっているセイラを振り返り、しまった、とでも言わんばかりに眉を顰めた美しい男が口を開いた。
「人間と契約するのは久しくてな、新たな下僕に名すら名乗らないとは、本当にうっかりしていた。」
斜め上に視線をむけ悩んだような姿勢のまま男はそのまま語り始めた。
「私の名前は…そうだな、ウェインと呼んでくれ。基本その名前だ…それと、今は私の拠点に向かっているところだ。散歩がてら歩いていたら随分と遠くまで来てしまったからな…まあ、2日もあれば着く場所だ。」
「ウェイン…さん、ですか、どうして、私を助けてくれたのですか??」
「お前は質問が多いな…簡単だ、お前が願い、私がそこにいた。ただそれだけだな。」
ぼんやりと話を聞いているセイラにため息を吐きながら目を伏せたウェインは、ぴく、と耳をそばだてた
「何か…??」
不安そうなセイラに薄く唇を歪めながらウェインは遠くを眺めた
「喜べ、これ以上足を棒にする必要は無くなったぞ」
「え??」
ウェインが指をさすその先によくよく目をこらす。
そこには一台の真っ黒な車の形が見え
…そこで気づいた
「あれ?私、こんなに目、よかったっけ…」
ぼんやりとしつつ呟くとウェインはまたひとつため息を吐く
「貴様、さては相当な無知だな?もしくは馬鹿か」
呆れた顔のウェインは人差し指でセイラの頭頂部をつつく
「あいたっ!!す、すみません…私の村、本とかあんまりなくって…」
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「この戦争、ひいてはなぜ世界がこうなったか、についてだ。今時の幼子でも知っているぞ。」
「う、うーん…確かに聞いた気がします。でも、私お花のことを覚える方が楽しくって…」
「…仕方ない、後で詳しく教えるものをあてがってやる」
もう目と鼻の先まで迫った車を見ながら、ウェインは何度目かもわからないため息をつくのだった。
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