19 / 43
黎明篇
第17話:主従の契り、聖なる地に宿る魔族。
しおりを挟む
ここまで疲弊している響夜を、今まで見たことが無かった。
出血も酷かったが、リアーナが治癒魔法を施し、回復力を促した。
手当てを済ませ、彼を別の部屋で寝かせる。
静かな寝息を立てる彼を確認すると、リアーナは自宅の大広間へリゼッタを通した。
ティアはまだリゼッタへの警戒を解いていなかった。
目の当たりにした状況から、彼女が、響夜を傷付けたと、思わざるを得なかったからだ。
冷たい視線が彼女に突き刺さる。
「……説明出来る?貴女は一体、何者で、彼に何をしたの?」
リアーナが静かに、しかし有無を言わせぬ口調で問いかけた。
リゼッタはふんと鼻を鳴らし、少しばかり頬を膨らませ、ムスッとした表情を見せる。
「ちッ…。私だってわかんないんだよ。取り敢えず全部は話すけどさ、そこの女の視線がウザーい」
「なっ…?!」
ティアが思わず声を荒げたが、リアーナが手で制する。
リゼッタは居心地悪そうに視線を彷徨わせた後、観念したように溜め息を吐き、口を開いた。
初めは、自身が響夜を『生贄』として攫った事、そこから彼と話していく内に、彼に興味を持ち始めてしまった事。
彼と行動を共にした直後、ガーネスの唐突な攻撃で、自身は気を失っていた為、その間の経緯は知らないが、その後の響夜の状態や自分自身の体の変化で、大体察しはついた。
彼は……
響夜は、自らを顧みず、自分に血を与え、自身の命を助けてくれた事――。
リゼッタは、全てを包み隠さず話した。
「……そう。貴女が『黒の樹海』の『守り人』だったのね。貴女には手を焼かされたわ」
ふう…と、溜め息混じりで吐くリアーナ。
リゼッタはまた口を尖らせ、ふいと顔をそっぽに向けた。
ティアはまだ不審そうな目を向けているが、リアーナの表情は真剣そのものだ。
「……それで、貴女のその体はどうなっているの?」
リアーナが問いかけると、リゼッタは自身の拳を握り、その体内に渦巻く奇妙な感覚について語り始めた。
「判らない。キョウヤから血を貰ってから、なんか体が変なんだ。妙に温かいし、力が漲る感じがする……って、なんでこんな事まで話さなきゃいけないんだッ?!」
途中から語気を荒げるリゼッタだが、リアーナは冷静だった。
彼女はすぐに理解したのだ。
「…恐らく…彼の血が、貴女を浄化した、とでも言うべきかしら。魔族がこの聖なる地に足を踏み入れることは、本来ならば不可能。私の守護がそれを許すはずはないもの。でも、貴女はこうして普通にここにいる……彼の血が、貴女を『聖なる力』に適応させた、ということね」
リアーナの言葉に、ティアが驚きの声を上げる。
「まさか…!魔族がエルフの聖なる力に耐性?!そんな事ってあるの?!」
リゼッタも驚きを隠せず、ずっと自身の手を眺める。
「…私が…? でも、そんな事……」
魔族として『聖なる力』が不利な属性だった彼女にとって、それはまさに目から鱗の事実だった。
更には、響夜の血を飲むことで一時的に総ての能力が向上する力まで得たのだ。
リゼッタは、開いていた手をギュッと握る。
「……だけど、これだけははっきり言える。私はもうキョウヤを…絶対に裏切らない…!」
まるで誓いを立てるように、握った拳を胸に当てるリゼッタ。
彼女の目は、もう魔族の『それ』ではない。
只々、主人に忠実に支える者としての輝きそのものだった。
響夜に命を救われただけでなく、自身の反属性を克服し、新たな力を与えられたことに、心からの感謝と絶対的な忠誠を、改めて誓うリゼッタだった。
森の脅威は去った。
しかし、また別の懸念材料が浮上する。
偶然とは云え、真の脅威だった『ガーネス』を、響夜がたった独りで葬ったのだ。
また、新たなる波乱が、少しずつ押し寄せてくる事になるのだった。
出血も酷かったが、リアーナが治癒魔法を施し、回復力を促した。
手当てを済ませ、彼を別の部屋で寝かせる。
静かな寝息を立てる彼を確認すると、リアーナは自宅の大広間へリゼッタを通した。
ティアはまだリゼッタへの警戒を解いていなかった。
目の当たりにした状況から、彼女が、響夜を傷付けたと、思わざるを得なかったからだ。
冷たい視線が彼女に突き刺さる。
「……説明出来る?貴女は一体、何者で、彼に何をしたの?」
リアーナが静かに、しかし有無を言わせぬ口調で問いかけた。
リゼッタはふんと鼻を鳴らし、少しばかり頬を膨らませ、ムスッとした表情を見せる。
「ちッ…。私だってわかんないんだよ。取り敢えず全部は話すけどさ、そこの女の視線がウザーい」
「なっ…?!」
ティアが思わず声を荒げたが、リアーナが手で制する。
リゼッタは居心地悪そうに視線を彷徨わせた後、観念したように溜め息を吐き、口を開いた。
初めは、自身が響夜を『生贄』として攫った事、そこから彼と話していく内に、彼に興味を持ち始めてしまった事。
彼と行動を共にした直後、ガーネスの唐突な攻撃で、自身は気を失っていた為、その間の経緯は知らないが、その後の響夜の状態や自分自身の体の変化で、大体察しはついた。
彼は……
響夜は、自らを顧みず、自分に血を与え、自身の命を助けてくれた事――。
リゼッタは、全てを包み隠さず話した。
「……そう。貴女が『黒の樹海』の『守り人』だったのね。貴女には手を焼かされたわ」
ふう…と、溜め息混じりで吐くリアーナ。
リゼッタはまた口を尖らせ、ふいと顔をそっぽに向けた。
ティアはまだ不審そうな目を向けているが、リアーナの表情は真剣そのものだ。
「……それで、貴女のその体はどうなっているの?」
リアーナが問いかけると、リゼッタは自身の拳を握り、その体内に渦巻く奇妙な感覚について語り始めた。
「判らない。キョウヤから血を貰ってから、なんか体が変なんだ。妙に温かいし、力が漲る感じがする……って、なんでこんな事まで話さなきゃいけないんだッ?!」
途中から語気を荒げるリゼッタだが、リアーナは冷静だった。
彼女はすぐに理解したのだ。
「…恐らく…彼の血が、貴女を浄化した、とでも言うべきかしら。魔族がこの聖なる地に足を踏み入れることは、本来ならば不可能。私の守護がそれを許すはずはないもの。でも、貴女はこうして普通にここにいる……彼の血が、貴女を『聖なる力』に適応させた、ということね」
リアーナの言葉に、ティアが驚きの声を上げる。
「まさか…!魔族がエルフの聖なる力に耐性?!そんな事ってあるの?!」
リゼッタも驚きを隠せず、ずっと自身の手を眺める。
「…私が…? でも、そんな事……」
魔族として『聖なる力』が不利な属性だった彼女にとって、それはまさに目から鱗の事実だった。
更には、響夜の血を飲むことで一時的に総ての能力が向上する力まで得たのだ。
リゼッタは、開いていた手をギュッと握る。
「……だけど、これだけははっきり言える。私はもうキョウヤを…絶対に裏切らない…!」
まるで誓いを立てるように、握った拳を胸に当てるリゼッタ。
彼女の目は、もう魔族の『それ』ではない。
只々、主人に忠実に支える者としての輝きそのものだった。
響夜に命を救われただけでなく、自身の反属性を克服し、新たな力を与えられたことに、心からの感謝と絶対的な忠誠を、改めて誓うリゼッタだった。
森の脅威は去った。
しかし、また別の懸念材料が浮上する。
偶然とは云え、真の脅威だった『ガーネス』を、響夜がたった独りで葬ったのだ。
また、新たなる波乱が、少しずつ押し寄せてくる事になるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる