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上手くいかない
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いよいよお茶会訓練の日だ。
意気揚々とマルカは会場である庭にビクトリアを伴って向かっていた。
(今日はイベントがある日!さて、誰があたしを助けてくれるかしら)
わくわくしながら会場に着くと、他の女子生徒や先生達もちらほらと集まって来る。
今日はお茶会と言う事で、全員が制服ではなくドレス姿だった。
勿論ふさわしいドレス選びから採点される。
高価かどうかは関係なく、見た目の印象が大事だと教師は事前に伝えていた。
だからこそ、この場に派手な装いをする者は減点される。
そこまでは生徒達に告げてはいないが、場に相応しいふるまいや格好が採点に含まれるとは聞いているのだ。
それなのにここで華美に装ったり、逆に質素すぎるのも良くない。
勿論お茶のマナーが一番の採点ポイントだが、髪型、ドレス、靴、手袋やアクセサリーに至るまで、全て採点される事になっていた。
「マルカ…貴女一体どこの夜会にでも行くつもりよ」
「は?ビクトリアちゃんったら何言ってるのよ。お茶会訓練に行くに決まってるでしょ!」
「だったら着替えてきなさい!何よそのバカみたいな恰好は!減点されるわよ!?」
「そんな訳ないでしょーっ、意地悪言わないでっ!見てよ、こんなに可愛いのに!」
確かに似合ってはいるが、そういう事ではないと言っているのだ。
過剰に装飾されたそのドレスは激しく周囲から浮いている。
どこの子供かと聞きたいくらいにリボンが付いているのだ。
そしてピンク色。真っピンク。ドピンク。
(どこでそんなドレス作ったのよ…!悪目立ちするじゃないの!)
頭痛がして頭を押さえるが、当の本人はどこ吹く風。
機嫌がよさそうに鼻歌まで歌っている始末だ。
「…何がそんなに楽しいのよ?貴女この前のマナーのテスト、散々だったじゃない」
「んもう、今は点数何てどうでもいいの!言ったでしょう?今日はイベントの日なの!イ・ベ・ン・ト!」
「お茶会訓練でしょ」
「だーかーら!今日は一番好感度の高い人が、お茶会訓練で助けてくれるんだってば!」
腰に手を当ててプンスカと怒るマルカは可愛らしい。
が、何だか幼女を見ているようだ。
このわざとらしくあざとい仕草もマルカはとてつもなく似合っているが、実は素だからとんでもない。
だからこそ、昔から放っておけなくて一緒にいるのだが。
「あ、フロレンツィア様よ!」
「アデライド様もいらっしゃるわ!」
「お二人共相変わらず素敵…!」
「さすが王子殿下の婚約者ね!洗練されてるわぁ…!」
令嬢達が一斉に騒ぎ出すその先に、フロレンツィアとアデライドの姿があった。
二人はマルカとはまさに対極を行く装いだ。
華美な装飾はなくシンプルなドレスで、洗練された美しさがある。
そしてさりげなくお互いの婚約者の色を纏っていて、見ていて微笑ましい。
「何よもう、あんな地味なドレス」
「ちょっとマルカ、そういう事言わないの」
「だってみんなあの二人の身分が高いからチヤホヤするんでしょ?こういう時自分が子爵家だって事が悔やまれるわ」
「…いやもう、その自信満々の意見がどこから出るのか知りたいわ。どこからどう見てもあのお二人は完璧じゃない」
「違うってば、ビクトリアちゃん。完璧すぎる女って言うのはね、男の人からしたらしんどい相手なのよ?」
言ってる事は当たらずとも遠からずだ。
だがそこは同じレベルに達する相手であれば、並び立つのに全く問題はない。
まあ何にしろこのおバカ娘に何を言ってもどうしようもないのだ。
ビクトリアは説教を程々にし、マルカと同じテーブルについた。
とりあえずイベントなんて起こさせないで、穏便に済ませようと思っていたビクトリアだったが、予想外の事が起こった。
何となくいろんな意味で視線を集めるマルカだったが、何故かフロレンツィアとアデライドがビクトリアとマルカのテーブルにやって来た事で、余計に周囲の視線を集める事になったのだ。
「こちらよろしいかしら?」
「アデライド様!あっ、はい、構いませんが…」
アデライドに問われてビクトリアが慌てて返事をする。が、チラリとマルカを見ると、こちらも臨戦態勢が整ったかのように目を輝かせて鼻息を荒くしたマルカが、「もちろんです!」と元気に返事をした。
あの顔、どうやらイベントを起こす気満々のようだ。
だがそこはさすがは公爵令嬢と侯爵令嬢。
「あのぉ、フロレンツィア様もアデライド様も…やっぱりあたしの事怒ってますよね?」
と、突然とんでもない質問をするマルカを笑顔で華麗にスルー。
「まあ、フロレンツィア様。こちらのクッキーとても美味しいですわよ」
「あら本当ですわ。後でどちらから手配されたのか聞いてみますね」
「え、ちょっと」
それはダメだ、マルカ。
「ちょっと」とか言っちゃダメでしょう。
現に周囲のご令嬢達からの視線が痛い。
ついでに採点している先生の視線も痛い。
「あの!無視しないでくださいよっ!」
「え?あら、ホークス子爵令嬢、何か仰いまして?」
「なっ、わざとらしいですね!やっぱり怒ってるんじゃないですか!」
「怒る?誰が誰に?」
「そんなの!お二人があたしにですよ!」
「何故?」
アデライドが頬に手を当てて首を傾げる。
そのしぐさも洗練されていて美しく感じるのはなぜだろう。
するとマルカが声を荒げる。
「とぼけるんですか!?」
「とぼけてなんていませんよ。それよりもそんな大きな声を出すのははしたないですわ」
「またそうやって虐めようとする!あたしがアルフォンス様やベルトランド様と仲がいいからって、嫉妬してるのは分かってるんです!」
ざわっ、と。
マルカの声が思っていた以上に周囲に響き渡り、一瞬ざわめきが起こる。
だがすぐにフロレンツィアとアデライドの様子が気になった令嬢達は言葉を止め、あたりはシンと静まった。
なのにそれに気付かないマルカが話を続ける。
「あたしが最近ベルトランド様達と仲がいいからって、周りの人を使って嫌がらせしてるのも知ってるんですよ!そういうのってよくないと思います!」
「まあ…嫌がらせされてらっしゃるの?」
「しらじらしいですね。どうせアデライド様が指示してるんでしょ?」
「何の為に?」
「だから!あたしがアルフォンス様と…!」
パチン!と、その瞬間音を立ててアデライドが扇子を閉じた。
それにはマルカも思わずたじろぐ。
そしてアデライドはマルカに視線だけ送り、口元に笑みを浮かべた。
「申し訳ないけれど、貴女を羨ましいと思った事も憎らしいと思った事も一度もありませんわ」
「うそよ!」
「本当ですわ。ねぇ、フロレンツィア様?」
「そうですわね…、特に何も思わないですわ」
「そ、そうやって強がったってダメなんだから!あたしが…!」
これ以上はマズい。
そう思ったビクトリアは、手に持っていたティーカップの中身をマルカに向かってぶちまけた。
パシャン!
と音を立てて紅茶がマルカのドレスにかかる。
「きゃあっ!え、ビクトリアちゃん!?何を…」
「あ、ごめんマルカ!手が滑って…!」
「ちょっと!あたしのドレスが…!」
「弁償するわ!さあ、着替えましょう!先生、ホークスさんの着替えをさせるので、少し席を外します」
「分かりました」
「ちょっとビクトリアちゃんっ!」
まだ文句を言うマルカを引きずるように別室へと連れて行く。
そしてビクトリアの召使が持ってきたタオルと着替えを受け取ると、マルカに着替えるよう言づけてドレスは召使に預けた。
「ごめんね、綺麗にできるかしら」
「お任せください。お茶がかかってからそう時間が経っておりませんので大丈夫ですよ」
「ありがとう。よろしくお願いするわ」
「はい」
汚れたドレスを洗うよう指示し、ビクトリアは部屋の扉に向かって声をかける。
「マルカ、もう着替えた?」
「…うん」
心なしか元気がない返事だったが、着替え終わったと言うので部屋の中に入った。
そこには怒っているのか落ち込んでいるのかわかりずらい顔をしたマルカが立っていた。
「あら」
ビクトリアが何となく選んだドレスだったが、マルカにとても似合っていた。
ブルーのドレスはマルカの金髪と青い目にピッタリで、さっきの子供のようなドレスとはうって変わって大人っぽくも見える。
「素敵じゃない、マルカ。さっきのドレスも可愛かったけど、こういうのも似合ってるわよ」
「…それは、あたしも思ったけど」
どうやら怒ってはいるが、ドレスが気に入ったようで怒るに怒れないようだ。
そんなマルカの葛藤に気付いたビクトリアは、苦笑しながらマルカに近付いた。
「ごめんね、お茶かけちゃって。でもああしないと貴女あの場で酷い減点されるから」
「減点なんてどうでもいいっ!ビクトリアちゃんに言ったでしょ!?イベントがあるって!」
「聞いたけど…」
「それなのにビクトリアちゃんってばいっつも邪魔ばかりして!本当にあたしのお助けキャラなの!?」
「…っ」
グサリと、何かに胸を刺されたような痛みが走る。
マルカにとって自分はお助けキャラだと以前に聞いてはいたけれど、それでもこんな風に言われるとは思わなかった。
「…マルカにとって、私はそんな程度の存在なのね」
ポツリと、ビクトリアがマルカから視線を外して呟く。
両手をぎゅっと握りしめ、怒りを抑えながら。
けれどマルカがそんなビクトリアに気付く事なく罵る。
「そんな程度って何よ!?お助けキャラは重要なのよ!?ビクトリアちゃんがちゃんと仕事してくれないと、あたしが幸せになれないじゃないっ!!」
その瞬間、ビクトリアの中で何かがキレた。
「マルカなんて知らないわっ!もう助けないし、友達だとも思わないから!!」
「えっ、急に何よ…!ビクトリアちゃんが悪いのに何でそっちが怒るのよ!」
「何を言っても分からないんでしょう?」
「え、何…」
「ならもういいわ。これからは一人で頑張って」
「え、ちょっとビクトリアちゃん!?」
まだマルカが何かを叫んでいたが、ビクトリアは逃げるように部屋から飛び出した。
悔しくて悲しくて、涙が出そうだったから。
意気揚々とマルカは会場である庭にビクトリアを伴って向かっていた。
(今日はイベントがある日!さて、誰があたしを助けてくれるかしら)
わくわくしながら会場に着くと、他の女子生徒や先生達もちらほらと集まって来る。
今日はお茶会と言う事で、全員が制服ではなくドレス姿だった。
勿論ふさわしいドレス選びから採点される。
高価かどうかは関係なく、見た目の印象が大事だと教師は事前に伝えていた。
だからこそ、この場に派手な装いをする者は減点される。
そこまでは生徒達に告げてはいないが、場に相応しいふるまいや格好が採点に含まれるとは聞いているのだ。
それなのにここで華美に装ったり、逆に質素すぎるのも良くない。
勿論お茶のマナーが一番の採点ポイントだが、髪型、ドレス、靴、手袋やアクセサリーに至るまで、全て採点される事になっていた。
「マルカ…貴女一体どこの夜会にでも行くつもりよ」
「は?ビクトリアちゃんったら何言ってるのよ。お茶会訓練に行くに決まってるでしょ!」
「だったら着替えてきなさい!何よそのバカみたいな恰好は!減点されるわよ!?」
「そんな訳ないでしょーっ、意地悪言わないでっ!見てよ、こんなに可愛いのに!」
確かに似合ってはいるが、そういう事ではないと言っているのだ。
過剰に装飾されたそのドレスは激しく周囲から浮いている。
どこの子供かと聞きたいくらいにリボンが付いているのだ。
そしてピンク色。真っピンク。ドピンク。
(どこでそんなドレス作ったのよ…!悪目立ちするじゃないの!)
頭痛がして頭を押さえるが、当の本人はどこ吹く風。
機嫌がよさそうに鼻歌まで歌っている始末だ。
「…何がそんなに楽しいのよ?貴女この前のマナーのテスト、散々だったじゃない」
「んもう、今は点数何てどうでもいいの!言ったでしょう?今日はイベントの日なの!イ・ベ・ン・ト!」
「お茶会訓練でしょ」
「だーかーら!今日は一番好感度の高い人が、お茶会訓練で助けてくれるんだってば!」
腰に手を当ててプンスカと怒るマルカは可愛らしい。
が、何だか幼女を見ているようだ。
このわざとらしくあざとい仕草もマルカはとてつもなく似合っているが、実は素だからとんでもない。
だからこそ、昔から放っておけなくて一緒にいるのだが。
「あ、フロレンツィア様よ!」
「アデライド様もいらっしゃるわ!」
「お二人共相変わらず素敵…!」
「さすが王子殿下の婚約者ね!洗練されてるわぁ…!」
令嬢達が一斉に騒ぎ出すその先に、フロレンツィアとアデライドの姿があった。
二人はマルカとはまさに対極を行く装いだ。
華美な装飾はなくシンプルなドレスで、洗練された美しさがある。
そしてさりげなくお互いの婚約者の色を纏っていて、見ていて微笑ましい。
「何よもう、あんな地味なドレス」
「ちょっとマルカ、そういう事言わないの」
「だってみんなあの二人の身分が高いからチヤホヤするんでしょ?こういう時自分が子爵家だって事が悔やまれるわ」
「…いやもう、その自信満々の意見がどこから出るのか知りたいわ。どこからどう見てもあのお二人は完璧じゃない」
「違うってば、ビクトリアちゃん。完璧すぎる女って言うのはね、男の人からしたらしんどい相手なのよ?」
言ってる事は当たらずとも遠からずだ。
だがそこは同じレベルに達する相手であれば、並び立つのに全く問題はない。
まあ何にしろこのおバカ娘に何を言ってもどうしようもないのだ。
ビクトリアは説教を程々にし、マルカと同じテーブルについた。
とりあえずイベントなんて起こさせないで、穏便に済ませようと思っていたビクトリアだったが、予想外の事が起こった。
何となくいろんな意味で視線を集めるマルカだったが、何故かフロレンツィアとアデライドがビクトリアとマルカのテーブルにやって来た事で、余計に周囲の視線を集める事になったのだ。
「こちらよろしいかしら?」
「アデライド様!あっ、はい、構いませんが…」
アデライドに問われてビクトリアが慌てて返事をする。が、チラリとマルカを見ると、こちらも臨戦態勢が整ったかのように目を輝かせて鼻息を荒くしたマルカが、「もちろんです!」と元気に返事をした。
あの顔、どうやらイベントを起こす気満々のようだ。
だがそこはさすがは公爵令嬢と侯爵令嬢。
「あのぉ、フロレンツィア様もアデライド様も…やっぱりあたしの事怒ってますよね?」
と、突然とんでもない質問をするマルカを笑顔で華麗にスルー。
「まあ、フロレンツィア様。こちらのクッキーとても美味しいですわよ」
「あら本当ですわ。後でどちらから手配されたのか聞いてみますね」
「え、ちょっと」
それはダメだ、マルカ。
「ちょっと」とか言っちゃダメでしょう。
現に周囲のご令嬢達からの視線が痛い。
ついでに採点している先生の視線も痛い。
「あの!無視しないでくださいよっ!」
「え?あら、ホークス子爵令嬢、何か仰いまして?」
「なっ、わざとらしいですね!やっぱり怒ってるんじゃないですか!」
「怒る?誰が誰に?」
「そんなの!お二人があたしにですよ!」
「何故?」
アデライドが頬に手を当てて首を傾げる。
そのしぐさも洗練されていて美しく感じるのはなぜだろう。
するとマルカが声を荒げる。
「とぼけるんですか!?」
「とぼけてなんていませんよ。それよりもそんな大きな声を出すのははしたないですわ」
「またそうやって虐めようとする!あたしがアルフォンス様やベルトランド様と仲がいいからって、嫉妬してるのは分かってるんです!」
ざわっ、と。
マルカの声が思っていた以上に周囲に響き渡り、一瞬ざわめきが起こる。
だがすぐにフロレンツィアとアデライドの様子が気になった令嬢達は言葉を止め、あたりはシンと静まった。
なのにそれに気付かないマルカが話を続ける。
「あたしが最近ベルトランド様達と仲がいいからって、周りの人を使って嫌がらせしてるのも知ってるんですよ!そういうのってよくないと思います!」
「まあ…嫌がらせされてらっしゃるの?」
「しらじらしいですね。どうせアデライド様が指示してるんでしょ?」
「何の為に?」
「だから!あたしがアルフォンス様と…!」
パチン!と、その瞬間音を立ててアデライドが扇子を閉じた。
それにはマルカも思わずたじろぐ。
そしてアデライドはマルカに視線だけ送り、口元に笑みを浮かべた。
「申し訳ないけれど、貴女を羨ましいと思った事も憎らしいと思った事も一度もありませんわ」
「うそよ!」
「本当ですわ。ねぇ、フロレンツィア様?」
「そうですわね…、特に何も思わないですわ」
「そ、そうやって強がったってダメなんだから!あたしが…!」
これ以上はマズい。
そう思ったビクトリアは、手に持っていたティーカップの中身をマルカに向かってぶちまけた。
パシャン!
と音を立てて紅茶がマルカのドレスにかかる。
「きゃあっ!え、ビクトリアちゃん!?何を…」
「あ、ごめんマルカ!手が滑って…!」
「ちょっと!あたしのドレスが…!」
「弁償するわ!さあ、着替えましょう!先生、ホークスさんの着替えをさせるので、少し席を外します」
「分かりました」
「ちょっとビクトリアちゃんっ!」
まだ文句を言うマルカを引きずるように別室へと連れて行く。
そしてビクトリアの召使が持ってきたタオルと着替えを受け取ると、マルカに着替えるよう言づけてドレスは召使に預けた。
「ごめんね、綺麗にできるかしら」
「お任せください。お茶がかかってからそう時間が経っておりませんので大丈夫ですよ」
「ありがとう。よろしくお願いするわ」
「はい」
汚れたドレスを洗うよう指示し、ビクトリアは部屋の扉に向かって声をかける。
「マルカ、もう着替えた?」
「…うん」
心なしか元気がない返事だったが、着替え終わったと言うので部屋の中に入った。
そこには怒っているのか落ち込んでいるのかわかりずらい顔をしたマルカが立っていた。
「あら」
ビクトリアが何となく選んだドレスだったが、マルカにとても似合っていた。
ブルーのドレスはマルカの金髪と青い目にピッタリで、さっきの子供のようなドレスとはうって変わって大人っぽくも見える。
「素敵じゃない、マルカ。さっきのドレスも可愛かったけど、こういうのも似合ってるわよ」
「…それは、あたしも思ったけど」
どうやら怒ってはいるが、ドレスが気に入ったようで怒るに怒れないようだ。
そんなマルカの葛藤に気付いたビクトリアは、苦笑しながらマルカに近付いた。
「ごめんね、お茶かけちゃって。でもああしないと貴女あの場で酷い減点されるから」
「減点なんてどうでもいいっ!ビクトリアちゃんに言ったでしょ!?イベントがあるって!」
「聞いたけど…」
「それなのにビクトリアちゃんってばいっつも邪魔ばかりして!本当にあたしのお助けキャラなの!?」
「…っ」
グサリと、何かに胸を刺されたような痛みが走る。
マルカにとって自分はお助けキャラだと以前に聞いてはいたけれど、それでもこんな風に言われるとは思わなかった。
「…マルカにとって、私はそんな程度の存在なのね」
ポツリと、ビクトリアがマルカから視線を外して呟く。
両手をぎゅっと握りしめ、怒りを抑えながら。
けれどマルカがそんなビクトリアに気付く事なく罵る。
「そんな程度って何よ!?お助けキャラは重要なのよ!?ビクトリアちゃんがちゃんと仕事してくれないと、あたしが幸せになれないじゃないっ!!」
その瞬間、ビクトリアの中で何かがキレた。
「マルカなんて知らないわっ!もう助けないし、友達だとも思わないから!!」
「えっ、急に何よ…!ビクトリアちゃんが悪いのに何でそっちが怒るのよ!」
「何を言っても分からないんでしょう?」
「え、何…」
「ならもういいわ。これからは一人で頑張って」
「え、ちょっとビクトリアちゃん!?」
まだマルカが何かを叫んでいたが、ビクトリアは逃げるように部屋から飛び出した。
悔しくて悲しくて、涙が出そうだったから。
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