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第10章
【62】2年生のお花見 その1!
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春休み。
ニーハイムス様とのお出かけは安全面の都合上、しばらく出来ません。
私は数日に一度、ホワイトデーにニーハイムス様に頂いたペンとインクを使ってニーハイムス様にお手紙を書くことにしました。
ニーハイムス様はお忙しい方なのでお返事は無くても構わないのですが、かなりの頻度で丁寧なお返事を送ってくださっています。
私は今日は何の本を読んだ、庭先の花が咲いた、などの日記のような拙いお手紙を送っているのですが……ニーハイムス様はお仕事でお疲れなのか、感情的で情熱的に、私に会いたい、愛していると繰り返し書いてくださいます。とても嬉しいのですが、他の誰かには決して見せられませんわ!
ニーハイムス様からのお手紙は私の秘密の宝物として机の鍵の付いた引き出しに、そっとしまっておきました。
春休みで学院でお会いできなくても、こうして繋がっていられるのは心強かったです。
ただ、ヒロさんにもお会いできる機会が無いのは地獄のようでしたわ…………!
※
春休みが明けて、新学期。ようやくヒロさんやニーハイムス様ことニース先生たちにお会いできます!
「ヒロさん! お久しぶりですわっ!」
私はつい、ヒロさんに抱きついてしまいました。
「カレンちゃん! 元気してた!? また2年目もよろしくねっ!」
ヒロさんも私を抱き返してくださいましたわ!
ラフーワ魔法学院、というか『花と嵐と恋の華~魔法学院でドキドキ☆スクランブル~』はクラス替えが無いので皆さん3年間同じクラスなのです。ここらへんはゲームの都合あるあるですわね。そのおかげで私とヒロさんは離れることが無いのですけれど!
「ヒロさんはどんな春休みを過ごしましたの?」
「ん~? 普通だよ! お祭りに行ったり、お花見に行ったり」
「……羨ましいですわ!」
私もヒロさんとお祭りやお花見に行きたかったです。悔しい!
「カレンちゃんは何をしていたの?」
「私は自宅でのんびりと過ごしていましたわ……あまりお出かけは出来なかったんですの。元々、パーティーやお茶会の予定でも無ければ外出はしませんし」
「へー……。そうだ! 今日は午前で学校も終わるから、お昼は林の泉に遊びに行かない? 今なら色々なお花も咲いていると思うよ!」
「まあ! よろしいですわね! けれど今日は午前中だけだと思ってお昼は用意していませんでしたわ」
「……えへへ。私も!」
ヒロさんは屈託のない笑顔でこう言いましたわ。
「だからね……一度、一緒に街へお弁当を買いに行こう!」
「まあ、素敵ですわ! ヒロさんと私のデートですわね!」
――午後。
私とヒロさんと…………なぜかキースとエルゼンとオルキスが校門前に集合していましたわ。
「ヒロさん、これは……?」
「え? なぁに? カレンちゃん?」
「何故、この3人もおりますの?」
エルゼンが言います。
「俺はただ、ヒロに呼ばれただけだ」
キースもオルキスも合わせて、
「俺もヒロに放課後集合って」
「俺も呼ばれた。別に来なくても良かったのなら帰る」
ヒロさんがオルキスを呼び止めますわ。
「ま、待ってオルキス! 帰らないで! せっかくの新学期なんだし、久しぶりに皆でお昼を食べましょう? ね? カレンちゃん?」
ヒロさんたら、私に話を振ってきましたわ。なるほどそういうわけでしたのね……。ふたりきりのつもりでしたがヒロさんが皆さんお揃いをご希望でしたら仕方有りませんわ。
「そうですわ。オルキスも都合が悪くないなら是非ご一緒して欲しいですわ」
そうして、私たちはお昼ごはんを買いに街へ出ましたの。
「あのねっ! このお弁当屋さん、前から気になってて! 好きなお惣菜を選んで、入れてくれるんだって!」
キースは店の中を覗くと、
「……へえー。結構ボリュームも有るっぽいな! いいじゃん!」
エルゼンもなかなか乗り気のようで。
「なるほど。ビュッフェスタイルに近いのか」
オルキスに至っては。
「……知ってる。ここ、美味いぞ」
意外と流行に敏感なのかしら?
「美味しいのなら良いではありませんか? こちらにいたしましょうヒロさん!」
「やった、入ろ入ろ!」
カランカラン。
ヒロさんは早速店内に入っていきましたわ。
皆、それぞれ好きなお惣菜とパンとデザートを選んで買って、学院に戻りました。
すると、校門前で、ばったりとニース先生とシオン神父様にお会いしましたの。
「カレン! ……と、皆さん! コホン。学院でランチですか?」
ニース先生は私たちの手に持ったお弁当の袋を見て仰っしゃりました。
ヒロさんが元気よく答えます。
「はい! これから林の泉でお花見しながらご飯を食べようかと思って!」
シオン神父様はカレンの言葉を聞くと。
「ああ、それはよいですね。私とニースは今さっき街でランチを終えてきたところなんですが、ご一緒しても?」
ヒロさんが続けて答えます。
「もちろんです! ね、いいよねみんな?」
誰も異論は有りませんわ。この際、皆さん揃って大人数でお花見のほうが楽しいですもの。
林の泉に向かうと、リュオン様が迎えて下さいましたわ。
「おお、久しぶりだの。そうか春休みも終わったのだな」
「はい、今日はヒロさんたちとお花見にこちらにやって参りました。リュオン様のご迷惑にならないように気をつけますのでお許しください」
「それは良い。賑やかで何よりじゃ」
リュオン様は魔法で大きなカーペットを出してくださったわ。
「ここに座って花見をするがよい。今はちょうどサクラが見頃じゃぞ」
リュオン様が出してくださったカーペットの上には、ちょうどサクラの樹の枝が良い感じに飛び出て居ました。
シオン神父様も感心しています。
「……ほう。これは見事なサクラですね。学院の中でもこれだけ咲いているのはここだけではないでしょうか?」
キースは素面なのにまるで酔ったように浮かれて、
「すげー! 花見なんて女子供とオッサンのイベントだと思ってたけどこんなキレーならそりゃ皆夢中になるよなぁ!」
そうして、私たちはお花見をしながらお弁当を頂きましたの。
「ヒロさん、こちら、美味しいですけど量が多いですわね……男性向けの量なのかしら」
「そうねカレンちゃん。ちょっと量が多いわね。でも私は全部食べちゃう!」
ヒロさんはそう言って残さずお弁当をたいらげる勢いですわ。
私は……さてどうしましょう? 残すのも気が引けますし、マナー的にもよろしくないですわね。
「カレン。何を思案しているのですか?」
いつの間にか隣にニース先生が座っていました。
「いえ、ちょっとこのお弁当の量が多くて。デザートまでたどり着けそうも無いのですわ」
「なるほど……デザートは……ティラミスですか?」
「はい。こちらが店員さんのおすすめでしたので」
「……それでは私が頂きましょうか?」
「ニース先生がですか?」
「はい。もちろん、カレンが嫌ならいいのですが」
「いいえ、それは助かりますわ。でも……」
「でも?」
「デザートスプーンは用意されていませんの。なので私が今使っているこのスプーンを使って頂くことになってしまいますわ」
「それが何か問題でも?」
「え?」
ニース先生は私にそっと近寄って仰っしゃりましたわ。
「俺とカレンの仲ではありませんか。無問題ですよ」
周りの皆は、サクラ見物や自分のお弁当やお喋りに花を咲かせて私たちを見ていません。
「……ニース先生がよろしいのなら」
私はティラミスとスプーンをお渡ししようとしましたわ。すると。
「食べさせてくれてもいいのですよ? カレン」
ニース先生、もといニーハイムス様は調子に乗っておられますわ!
私は小声でニーハイムス様にご注意しました。
「人の目を気にして下さいませ!」
「…………残念です」
ニース先生はティラミスとスプーンを私の手から受け取るとひとくち。
「うん、美味しいです! ――そうだ、カレンもひとくちくらいならお腹にはいるでしょう? はいどうぞ。あーん」
「え。え……っ!?」
そう来ますの!?
「あ、カレンちゃんがニース先生に『あーん』されてる!」
ヒロさんが気付いてしまいました。
「え、ち、違いますのこれはえっと、私がニース先生に――」
「ほら、どうぞカレン」
ニース先生は引きません。
「…………」
皆が花からニース先生と私に集注してしまった中で、私はニース先生の『あーん』を受け入れるしかなくなってしまいましたわ……。
「あーん……」
ぱくり。
ニース先生は笑顔で。
「どうですか、美味しいでしょう?」
「……はい! 美味しいです……!」
実は味はもう解らないくらい恥ずかしくて仕方なかったのですわ!!
ニーハイムス様とのお出かけは安全面の都合上、しばらく出来ません。
私は数日に一度、ホワイトデーにニーハイムス様に頂いたペンとインクを使ってニーハイムス様にお手紙を書くことにしました。
ニーハイムス様はお忙しい方なのでお返事は無くても構わないのですが、かなりの頻度で丁寧なお返事を送ってくださっています。
私は今日は何の本を読んだ、庭先の花が咲いた、などの日記のような拙いお手紙を送っているのですが……ニーハイムス様はお仕事でお疲れなのか、感情的で情熱的に、私に会いたい、愛していると繰り返し書いてくださいます。とても嬉しいのですが、他の誰かには決して見せられませんわ!
ニーハイムス様からのお手紙は私の秘密の宝物として机の鍵の付いた引き出しに、そっとしまっておきました。
春休みで学院でお会いできなくても、こうして繋がっていられるのは心強かったです。
ただ、ヒロさんにもお会いできる機会が無いのは地獄のようでしたわ…………!
※
春休みが明けて、新学期。ようやくヒロさんやニーハイムス様ことニース先生たちにお会いできます!
「ヒロさん! お久しぶりですわっ!」
私はつい、ヒロさんに抱きついてしまいました。
「カレンちゃん! 元気してた!? また2年目もよろしくねっ!」
ヒロさんも私を抱き返してくださいましたわ!
ラフーワ魔法学院、というか『花と嵐と恋の華~魔法学院でドキドキ☆スクランブル~』はクラス替えが無いので皆さん3年間同じクラスなのです。ここらへんはゲームの都合あるあるですわね。そのおかげで私とヒロさんは離れることが無いのですけれど!
「ヒロさんはどんな春休みを過ごしましたの?」
「ん~? 普通だよ! お祭りに行ったり、お花見に行ったり」
「……羨ましいですわ!」
私もヒロさんとお祭りやお花見に行きたかったです。悔しい!
「カレンちゃんは何をしていたの?」
「私は自宅でのんびりと過ごしていましたわ……あまりお出かけは出来なかったんですの。元々、パーティーやお茶会の予定でも無ければ外出はしませんし」
「へー……。そうだ! 今日は午前で学校も終わるから、お昼は林の泉に遊びに行かない? 今なら色々なお花も咲いていると思うよ!」
「まあ! よろしいですわね! けれど今日は午前中だけだと思ってお昼は用意していませんでしたわ」
「……えへへ。私も!」
ヒロさんは屈託のない笑顔でこう言いましたわ。
「だからね……一度、一緒に街へお弁当を買いに行こう!」
「まあ、素敵ですわ! ヒロさんと私のデートですわね!」
――午後。
私とヒロさんと…………なぜかキースとエルゼンとオルキスが校門前に集合していましたわ。
「ヒロさん、これは……?」
「え? なぁに? カレンちゃん?」
「何故、この3人もおりますの?」
エルゼンが言います。
「俺はただ、ヒロに呼ばれただけだ」
キースもオルキスも合わせて、
「俺もヒロに放課後集合って」
「俺も呼ばれた。別に来なくても良かったのなら帰る」
ヒロさんがオルキスを呼び止めますわ。
「ま、待ってオルキス! 帰らないで! せっかくの新学期なんだし、久しぶりに皆でお昼を食べましょう? ね? カレンちゃん?」
ヒロさんたら、私に話を振ってきましたわ。なるほどそういうわけでしたのね……。ふたりきりのつもりでしたがヒロさんが皆さんお揃いをご希望でしたら仕方有りませんわ。
「そうですわ。オルキスも都合が悪くないなら是非ご一緒して欲しいですわ」
そうして、私たちはお昼ごはんを買いに街へ出ましたの。
「あのねっ! このお弁当屋さん、前から気になってて! 好きなお惣菜を選んで、入れてくれるんだって!」
キースは店の中を覗くと、
「……へえー。結構ボリュームも有るっぽいな! いいじゃん!」
エルゼンもなかなか乗り気のようで。
「なるほど。ビュッフェスタイルに近いのか」
オルキスに至っては。
「……知ってる。ここ、美味いぞ」
意外と流行に敏感なのかしら?
「美味しいのなら良いではありませんか? こちらにいたしましょうヒロさん!」
「やった、入ろ入ろ!」
カランカラン。
ヒロさんは早速店内に入っていきましたわ。
皆、それぞれ好きなお惣菜とパンとデザートを選んで買って、学院に戻りました。
すると、校門前で、ばったりとニース先生とシオン神父様にお会いしましたの。
「カレン! ……と、皆さん! コホン。学院でランチですか?」
ニース先生は私たちの手に持ったお弁当の袋を見て仰っしゃりました。
ヒロさんが元気よく答えます。
「はい! これから林の泉でお花見しながらご飯を食べようかと思って!」
シオン神父様はカレンの言葉を聞くと。
「ああ、それはよいですね。私とニースは今さっき街でランチを終えてきたところなんですが、ご一緒しても?」
ヒロさんが続けて答えます。
「もちろんです! ね、いいよねみんな?」
誰も異論は有りませんわ。この際、皆さん揃って大人数でお花見のほうが楽しいですもの。
林の泉に向かうと、リュオン様が迎えて下さいましたわ。
「おお、久しぶりだの。そうか春休みも終わったのだな」
「はい、今日はヒロさんたちとお花見にこちらにやって参りました。リュオン様のご迷惑にならないように気をつけますのでお許しください」
「それは良い。賑やかで何よりじゃ」
リュオン様は魔法で大きなカーペットを出してくださったわ。
「ここに座って花見をするがよい。今はちょうどサクラが見頃じゃぞ」
リュオン様が出してくださったカーペットの上には、ちょうどサクラの樹の枝が良い感じに飛び出て居ました。
シオン神父様も感心しています。
「……ほう。これは見事なサクラですね。学院の中でもこれだけ咲いているのはここだけではないでしょうか?」
キースは素面なのにまるで酔ったように浮かれて、
「すげー! 花見なんて女子供とオッサンのイベントだと思ってたけどこんなキレーならそりゃ皆夢中になるよなぁ!」
そうして、私たちはお花見をしながらお弁当を頂きましたの。
「ヒロさん、こちら、美味しいですけど量が多いですわね……男性向けの量なのかしら」
「そうねカレンちゃん。ちょっと量が多いわね。でも私は全部食べちゃう!」
ヒロさんはそう言って残さずお弁当をたいらげる勢いですわ。
私は……さてどうしましょう? 残すのも気が引けますし、マナー的にもよろしくないですわね。
「カレン。何を思案しているのですか?」
いつの間にか隣にニース先生が座っていました。
「いえ、ちょっとこのお弁当の量が多くて。デザートまでたどり着けそうも無いのですわ」
「なるほど……デザートは……ティラミスですか?」
「はい。こちらが店員さんのおすすめでしたので」
「……それでは私が頂きましょうか?」
「ニース先生がですか?」
「はい。もちろん、カレンが嫌ならいいのですが」
「いいえ、それは助かりますわ。でも……」
「でも?」
「デザートスプーンは用意されていませんの。なので私が今使っているこのスプーンを使って頂くことになってしまいますわ」
「それが何か問題でも?」
「え?」
ニース先生は私にそっと近寄って仰っしゃりましたわ。
「俺とカレンの仲ではありませんか。無問題ですよ」
周りの皆は、サクラ見物や自分のお弁当やお喋りに花を咲かせて私たちを見ていません。
「……ニース先生がよろしいのなら」
私はティラミスとスプーンをお渡ししようとしましたわ。すると。
「食べさせてくれてもいいのですよ? カレン」
ニース先生、もといニーハイムス様は調子に乗っておられますわ!
私は小声でニーハイムス様にご注意しました。
「人の目を気にして下さいませ!」
「…………残念です」
ニース先生はティラミスとスプーンを私の手から受け取るとひとくち。
「うん、美味しいです! ――そうだ、カレンもひとくちくらいならお腹にはいるでしょう? はいどうぞ。あーん」
「え。え……っ!?」
そう来ますの!?
「あ、カレンちゃんがニース先生に『あーん』されてる!」
ヒロさんが気付いてしまいました。
「え、ち、違いますのこれはえっと、私がニース先生に――」
「ほら、どうぞカレン」
ニース先生は引きません。
「…………」
皆が花からニース先生と私に集注してしまった中で、私はニース先生の『あーん』を受け入れるしかなくなってしまいましたわ……。
「あーん……」
ぱくり。
ニース先生は笑顔で。
「どうですか、美味しいでしょう?」
「……はい! 美味しいです……!」
実は味はもう解らないくらい恥ずかしくて仕方なかったのですわ!!
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