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交易都市ラグリージュへ赴いちゃう、ぽっちゃり
第273話 容疑者らしき扱いを受けちゃう、ぽっちゃり
しおりを挟む霧の問題も一応の解決を見せ、ようやくわたしはラグリージュの街へと戻ってきた。
長くて深い森の中を小一時間ほどかけて爆速で降りてきたおかげで、あまり時間ロスをすることもなく街に到着できたのはありがたいね。
とりあえず霧が晴れたのであれば、明日のお祭りは問題なく開催されることだろう。
そうなればわたしのお店もいよいよ明日からオープンすることになる。
その前日である今日は仕込みのために一つでも多くのお弁当を用意しておきたいところだ。
わたしが霧問題を解決するために森に入っていっている間は、アリアちゃんたちがお弁当作りを引き継いでくれているはずだから、早く合流してお弁当の生産ペースを上げるよう!
そう思い、意気揚々とラグリージュの街へ入ろうとしたんだけど――――
「……どうしてわたしはこんな所で足止めを食らってるんだろうか」
誰もいない部屋でひとり、わたしは呟いた。
ラグリージュに到着して門から中へ入ろうとした瞬間、見張りをしていた門兵に呼び止められた。
そこで霧を取っ払ってきたことを匂わす発言をしてしまったのがマズかったようだ。
そのままわたしはその門兵に腕を掴まれ、裏にある謎の庁舎に連行された。
そうして奥の一室に案内され、ここで少し待つように言われて今に至る。
わたしを連行してきた門兵のおじさんは部屋から出ていってしまって、今ここにはいない。
「何なのここ。見るからに楽しげな場所って感じはしないんだけど。ていうかこれ、どっかで見たことがあるような部屋だな。そう、これはまるで……取調室じゃん!」
木製の古びた椅子に座らされたわたしは、考えないようにしていた事実に直面せざるを得なくなり、驚愕する。
この部屋は別に広くはない。
目算で八畳くらいだろうか?
中は特に何か飾りやインテリアなどがある訳でもなく、置かれているものといったらわたしの目の前にある木製のテーブルと、部屋の端に置かれたこれまた木製の机と椅子。
今はわたししかこの部屋にいないので、端に置かれた机と椅子は無人となっている。
そちらへ目を向けてみると、何枚かの紙とペンが無造作に置かれていた。
「あの机もなんか見たことあるよ。あれでしょ?
なんか犯人が喋った内容をその場で書き記す役割の人が座るところでしょ?」
刑事ドラマで何度か見たことがある光景だ。
あそこの橋の机に向かっている人はとにかく感情を挟まずにただ淡々と容疑者が話した内容を速記していくというようなイメージがある。
そしてこの部屋の構図的に、容疑者として連れてこられているのはわたしである。
わたしの背後、手が届くか届かないかくらいの高所に設置された檻のような窓から太陽の光が入ってくるけど、なんかこれも取調室っぽさを助長している。
「はあ、これからわたしどうなっちゃうのかな。面倒なトラブルに巻き込まれないといいんだけど……」
そう愚痴っていると、遠くからコツコツと足音が響いてきた。
一人じゃなく、二、三人くらいいそうだ。
その足音は次第に大きくなり、そしてわたしの部屋の扉の前でピタリと止まる。
一拍置いて、わたしの正面にある扉がゆっくりと開かれた。
「お待たせして申し訳ない。私は王都より派遣された調査隊の隊長を任せられている、セシーナだ。緊急の場であるためこのような窮屈な部屋しか用意できなかったが、今日は色々と話を聞かせてほしい」
入室してきたのは、メガネをかけたポニーテールの女の人だった。
セシーナさんは礼儀正しい所作でお辞儀をすると、凛とした目付きでわたしの姿を射抜いた。
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