迷宮でのひととき

斧鳴燈火

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10.ブレードタイガー討伐

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パチパチと焚き火の音がする。
バルボアは食事の準備で野菜を切っていた。
人の気配で手をとめる。近づいてきたのは2人組の男だった。
「よう、間借りしていいか?」
顔に大きな三本の古傷がある男が言う。
間借りとはダンジョン内で、冒険者同士野営地を一時的に共有することだ。主に火起こし、料理、見張りなどの協力などをしたりする。
勿論強制などではなく、身の安全の為、断る冒険者も多い。
「別にかまわんよ」
2人には面識があった。酒場にいて、何度か話したことがある。ハンターのブルックとべギルだ。
2人は賞金をかけられたモンスターや賞金首を狙う賞金稼ぎだ。
ブルックは身長180センチの大男で盾と剣を携えている。
弓使いのべギルは大きな弓と矢筒を背中に背負っている。
二人共ベテランのハンターだ。
「俺を狩りにきたのか?」
それを聞くと2人は笑った。
「はっはっはっ!賞金も出てないのにか?」
馬鹿げている。と一笑に付す。
ダンジョンでは冒険者を狙った殺人事件が頻発しており、バルボアが犯人だと疑われていた。
バルボアは身の潔白を晴らすようなことはしなかった。
証拠もないので晴らしようもなかったのもある。
だが犯人はすでに死んでいた。
クワイエットワームに食われて跡形もなくなってしまった。
それを知っているのはバルボアだけだ。
世間的に疑われていたが、でも2人は特に気にしてるようすもなさそうだ。
かといって、一緒に食事をするまでの信用はない。
2人は自分達で用意した料理を温め、食事をしている。
焼いたベーコンを食べながら、2人のハンターは狙っている獲物について話す。
「俺達はブレードタイガーを狩りにきたんだ」

ブレードタイガーはここ最近、冒険者達を襲っているモンスター。大型の虎のモンスターで爪がブレードのように鋭いのが特徴だ。その爪でいくつもの冒険者が犠牲になっている。ちなみに爪は出し入れ収納出来る。
野営中に襲ってくることが多くなり、賞金がかけられたようだ。
バルボアも一度襲われたことがあるモンスターだ。
それを伝えると。
「協力してくれないか」
と2人のハンターに頼まれた。
バルボアは快く応じ、襲われた場所まで案内することになった。

翌日、以前にブレードタイガーに襲われたキャンプ地にきた。
ブルックとべギルは丹念に調べている。
「こっちに、足跡がある…、かなり大きな個体だ」
べギルは前足と後ろ足の距離から、獲物の大きさを測る。
足跡はまだ新しい。
足跡を辿れば獲物に辿りつけるだろう。
三人は追跡を始める。
道行く木々には鋭い爪の跡がついている。ブレードタイガーの縄張りの印だ。それは我々が、ブレードタイガーの縄張りに侵入したことを示していた。
「血の匂いがする…」足跡の先だ。

「うっ…」
そこには無惨な光景が広がっていた。
先に縄張り入った冒険者が襲われたあとだ。
現場では血溜まりが出来ており、無惨に切り裂かれた冒険者の遺体が散らばっている。不意打ちを食らったのだろう、後ろから頭をパックリ割られているものもいる。兜ごと割られたその切れ味から、ブレードの鋭さが伺える。
襲われてからそれほど経っていない。血は渇いておらず流れていた。
さらに調べると血のうえを、何か引きずった痕跡が残っている。
「もう1人冒険者がいたようだな…」とそれをみたブルックが推測する。
冒険者を引きずって運んでいる。巣に持ちかえるつもりかも知れない。
「先に進もう」べギルを先頭に血の跡を追って追跡を続けた。

「いた…」べギルが指差す方向に大きな獣がいる。
前方100メートル先。ブレードタイガーだ。冒険者を運んでいる。こちらを振り向くと冒険者を口から離した。
「ガオオオオオオ!!」
すでにこちらの存在に気づいている。
一声吠えるともの凄い勢いでこちらに向かってくる。
木の上に移動したべギルが矢を継がえながら、魔法を詠唱する。炎の魔法だ。矢の先端に炎の魔力が集まる。
「ファイヤーアロー!」
突進してきたブレードタイガーは、それを横飛びで軽くよけながら前進し、距離をつめる。動きが早い。
べギルは続けざまに連射する。
数本刺さるが、勢いは止まらない。
「ドシンッ」
バルボアはブレードタイガーの突進を盾で受けるが、力負けして吹き飛ばされる。
前衛のブルックは盾と剣を打ち慣らしモンスターの注意を引く。倒れていたバルボアに向かおうとしていた、虎はブルックに向きを変え、突撃する。
飛びかかるブレードタイガーの爪を盾で受ける。
鋭い爪は盾ごと切り裂き、ブルックの肩まで食い込んだ。
「ぐあああああ!!」
爪の切れ味が良すぎる。
虎は体重をかけながら、続けてもう片方の手を振りあげる。
ブルックはその手に剣を突き刺し、動きをとめる。
「今だ!!」叫ぶブルック。
べギルは矢をつがえると、狙いすまし炎の矢を放つ。
矢は虎の左目に刺さった。炎は内部から目玉を焼く。
流石に虎の動きが怯む。
バルボアはブルックがまだ動きを止めている間に、飛びかかり斧を振り下ろした!
「ガオオオオオオ!!!」
斧は虎の頭に深くささる。
痛みで暴れた虎の右手に当たり、バルボアはまた吹き飛ばされる。
虎は引き上げていく。飛んでくる矢を避けながら、矢の射程圏外まで逃げていく。
バルボアはそれを見送る。
相手は手負い、深追いをする必要はない。
まずは傷の手当てだ。
「ブルック大丈夫か」
ブルックの傷が思ったより深い。
急いで応急処置をする。肌が血ですべる、酒で傷口を洗い針と糸で縫い付ける。傷口を塞ぐと、包帯をまき痛み止めを飲ませた。しばらくは無理は出来ないだろう。
倒れてる冒険者の様子をみる。まだ息があった。
肩を噛まれ、顔には引っかかれた傷がある。
「ありが…とう…」冒険者はか細い声でお礼を言った。

手当てが終わり、休憩すると、サーベルタイガーの血の跡を辿る。川の近くに洞穴があり、血はその中に続いていた。
「この中だな…」
洞穴は湧き水が壁伝いに流れており、その壁に沢山の爪跡が残されている。天然の砥石だ。ここで爪を研いでいたので切れ味が段違いだったのだ。
そこから少し進むと洞穴の奥で虎は力尽き倒れていた。
「ガルルル…」
虎は横たわり、もう虫の息だ。
「ザクッ」バルボアは苦しまないようトドメをさした。
これで討伐完了だ。

ブレードタイガーの体を解体する。
ブレードタイガーの体は大きく、全てを持ち帰るのは不可能だ。持ち帰るものは少し減らさなくてはならない。
バルボアは近くの川で石を拾い、かまどをつくる。
その1番上に平べったい平らな石を置くと、かまどに火をつけた。
ブレードタイガーの肉を熱した石の上にのせ焼くとジュッと音を立てて、肉の焼ける美味しそうな匂いが辺りに立ち込めた。塩、胡椒で味付けして焼き上げると、皿にのせる。
ブレードタイガーのステーキだ。
焼き加減はミディアム、肉は柔らかく、噛めば噛むほど、口の中で肉汁が広がった。
「う、美味い…」生き残った冒険者も泣きながら食う。
食事をすることで、怪我人も少し元気がでてきたようだ。

「お、いい匂いがするな」
匂いにつられて、暗がりから別の冒険者達が集まる。
肉はまだ食いきれないほどある。
「食べていくか」とバルボア達は間借りに誘う。
冒険者達は喜んで晩餐にあずかった。
「酒を出すか」「魚の干物ならある」「ご飯が欲しくなるな」「漬物で勘弁してくれ」「米ならあるぞ!」
それぞれが持ち寄ったものをだし、宴会が始まった。
一緒に食卓を囲むのは信頼の証でもある。
盛り上がってきた所で、べギルが荷物の中を見せる。
その中には、獲物の首が入っていた。
「うわっ!ブレードタイガーじゃねえか!」
「ワッハッハ!」酒に酔ったバルボアは久しぶりに愉快に笑った!


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