おバカな魔族と少女の魔王計画

ユミ

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海へ④

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 巨大な魔物はまだこちらには気づいていない。
 狙うなら今だろう。

 カシムは少女に視線を向ける。
 少女は強い眼差しで頷いた。

 それを確認すると、射程範囲に入るべく、気配を殺しつつ近付いていく。
 長年生きているカシムでさえ、水中戦は初めてだった。
 普段と勝手が違う分、戦いにも影響が出るだろう。

 出来るだけ暗殺に近い形でその魔物を仕留めたかった。

 徐々に距離を詰めていく。
 改めて魔物の大きさを感じる。
 遠近感がおかしくなりそうだ。

 巨大な魔物は獲物を探しているのだろうか、しきりに目をギョロギョロと動かしている。

 あまり近付き過ぎても相手に察知される恐れがある。
 もう少し近付きたかったが、攻撃を仕掛ける事にした。


 魔力で長い槍を作り、頭目掛け勢い良く投げつける。

 ザシュッ!

 槍が頭を貫いたが、急所は外れていたらしい。
 激しく目を動かし、こちらを発見する。
 魔物は雄叫びの如く、超音波を発生させ威嚇してきた。

 鼓膜がビリビリ震える。
 咄嗟に耳を押さえるが、緩和されない。

 魚型魔物は巨大な口を開けつつ、突進してきた。
 攻撃がてら捕食するつもりだろうか。

 その泳ぎは速いものの見切れないほどではない。
 念の為、身体強化魔法を付与する。

 再び槍を作り放つ。
 今度は胴体に当たった為か、弾かれてしまった。
 正直、その強度を見誤っていた。
 刃の様に鋭い鱗は傷一つつかない。

 魔物は大きく帯びれを動かす。
 すると激しい水流が渦を巻きつつ、こちらに向かってきた。
 飲み込まれたら平衡感覚を失う恐れがある。

 避けつつ、リリアムの安全も確認する。
 彼女は少し離れたところで魔力を練っていた。

 何か考えがあるのかもしれない。
 そう思い、魔物が彼女に向かわない様囮に徹する。


「防御魔法を張って!」


 魔力を練り終わったのか、リリアムは男に向けて叫ぶ。
 言われた通りに防御魔法を張る。

 彼女から放たれた魔法は、魔物をぐるりと囲み、激しい雷撃を放った。
 ビリビリと感電し、痙攣している。

 好機と思い、複数の槍を比較的柔らかい頭へ突き刺した。

 叫ぶ様に超音波が放たれるが、何度も何度も構わず攻撃を続ける。
 ブチっと鼓膜が破けた音が聞こえた。

 辺りは魔物の血で紫に染まる。
 暴れていたのも、次第に動きが鈍くなってきた。

 それでも突き刺し続ける。
 複数の目は潰れ、水中に浮遊する。



 そして、魔物は力尽き動かなくなった。

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