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第一章
全然会えない
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「おーい、シン?」
あー。
あの時のエラルドは本当にカッコ良かった。
さすが私の推し。ご馳走さまでした、推しといっても入学式からだけど。
と、完全に思考が別世界に行ってしまっていると、黄色の瞳が覗き込んできた。
(近い!!)
仰け反りそうになるのをなんとか耐えた。
「あ、ああ、すまない。ケーキが美味しくて、つい集中してしまった……」
相当苦しい言い訳だったが、
「シンって本当に甘いものが好きだよなー!」
「僕の分も食べるか?」
と、優しく素直な子たちは納得してくれたようだった。
今日のケーキは円形のピスタチオケーキだ。
ピスタチオムースと土台になっている砕かれたチョコレートのクッキーが相性抜群。
上に飾られている甘酸っぱいラズベリーも見た目と味、共に楽しめる。
2個でも3個でも食べられそうだ。
まだ綺麗に残っているネルスのケーキは、この味は経験しないと勿体無いから食べなさいと返す。
食べてから苦手だったら貰おう。
「そういえば、1年にすごく強いやつが居るらしいんだけど……いつも入れ違いになって全然会えないんだよな」
ラズベリーを口に放り込みながらエラルドが言った。
2週間経ってるのに会えないのは逆に奇跡だ。
こういう時のお決まりを一応潰しておかなければ。
「先に確認しておくが、その強い1年というのはお前のことだったというオチはないな?」
「そんなわけないだろー?」
流石にそれは無かったらしい。
笑いながら手を左右に振られた。
「1回手合わせしてみてくれって先輩たちが言うんだ」
「へぇ……それは会ってみたいだろうな」
ネルスは興味深げに頷きながら相槌を打っている。
私は、そのもうひとりのすごい1年に先輩たちの誰かが負けてるんじゃないか。
一番勝負を申し込まれそうな生真面目リーダーくんのプライドは大丈夫か。
ちゃんと慰めてくれる親友はいるのか。
と、勝手に変なところが心配になった。
(そういう親友がいたら是非教えて欲しい……)
「名前はバレット・アコニツム。知らないか?」
「いや、聞いたことないな」
「私もだ。何か特徴は?」
2人で首を左右に振ることになった。
まだクラスメイト以外は関わることが少ないのだ。
特に私には皆、自分からは声をかけて来ない。
エラルドは聞いていた特徴を思い出そうと、額に手を当てて目を閉じた。
「えーと、確か赤髪で背が俺くらいあって目の色は黒で……」
その特徴だと、さっき図書室でネルスとBL展開を繰り広げていた彼の顔しか出てこない。
「それは俺のことか?」
(そうそう、この顔……えっ)
上から声が聞こえて見上げると、赤髪で長身、動きやすそうな黒いシャツに黒いズボンの生徒が立っていた。
運動してからきたのか、それとも走ってきたのか。
日に焼けた肌が少し汗ばんでいる。
服装は違うが、図書室で見た彼だ。
だが、私やネルスなど眼中にない。
目に留めているのは1人だけだ。
「エラルド・ユリオプス。ようやく見つけた」
目を開いてバレットを映したエラルドの瞳が、一瞬、獣の様にギラついた。
(やっぱりここ、BL漫画の世界なのかなぁ)
あー。
あの時のエラルドは本当にカッコ良かった。
さすが私の推し。ご馳走さまでした、推しといっても入学式からだけど。
と、完全に思考が別世界に行ってしまっていると、黄色の瞳が覗き込んできた。
(近い!!)
仰け反りそうになるのをなんとか耐えた。
「あ、ああ、すまない。ケーキが美味しくて、つい集中してしまった……」
相当苦しい言い訳だったが、
「シンって本当に甘いものが好きだよなー!」
「僕の分も食べるか?」
と、優しく素直な子たちは納得してくれたようだった。
今日のケーキは円形のピスタチオケーキだ。
ピスタチオムースと土台になっている砕かれたチョコレートのクッキーが相性抜群。
上に飾られている甘酸っぱいラズベリーも見た目と味、共に楽しめる。
2個でも3個でも食べられそうだ。
まだ綺麗に残っているネルスのケーキは、この味は経験しないと勿体無いから食べなさいと返す。
食べてから苦手だったら貰おう。
「そういえば、1年にすごく強いやつが居るらしいんだけど……いつも入れ違いになって全然会えないんだよな」
ラズベリーを口に放り込みながらエラルドが言った。
2週間経ってるのに会えないのは逆に奇跡だ。
こういう時のお決まりを一応潰しておかなければ。
「先に確認しておくが、その強い1年というのはお前のことだったというオチはないな?」
「そんなわけないだろー?」
流石にそれは無かったらしい。
笑いながら手を左右に振られた。
「1回手合わせしてみてくれって先輩たちが言うんだ」
「へぇ……それは会ってみたいだろうな」
ネルスは興味深げに頷きながら相槌を打っている。
私は、そのもうひとりのすごい1年に先輩たちの誰かが負けてるんじゃないか。
一番勝負を申し込まれそうな生真面目リーダーくんのプライドは大丈夫か。
ちゃんと慰めてくれる親友はいるのか。
と、勝手に変なところが心配になった。
(そういう親友がいたら是非教えて欲しい……)
「名前はバレット・アコニツム。知らないか?」
「いや、聞いたことないな」
「私もだ。何か特徴は?」
2人で首を左右に振ることになった。
まだクラスメイト以外は関わることが少ないのだ。
特に私には皆、自分からは声をかけて来ない。
エラルドは聞いていた特徴を思い出そうと、額に手を当てて目を閉じた。
「えーと、確か赤髪で背が俺くらいあって目の色は黒で……」
その特徴だと、さっき図書室でネルスとBL展開を繰り広げていた彼の顔しか出てこない。
「それは俺のことか?」
(そうそう、この顔……えっ)
上から声が聞こえて見上げると、赤髪で長身、動きやすそうな黒いシャツに黒いズボンの生徒が立っていた。
運動してからきたのか、それとも走ってきたのか。
日に焼けた肌が少し汗ばんでいる。
服装は違うが、図書室で見た彼だ。
だが、私やネルスなど眼中にない。
目に留めているのは1人だけだ。
「エラルド・ユリオプス。ようやく見つけた」
目を開いてバレットを映したエラルドの瞳が、一瞬、獣の様にギラついた。
(やっぱりここ、BL漫画の世界なのかなぁ)
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