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第三章
距離感
しおりを挟むさて、あっっっと言う間に夏休み前。
魔王の封印場所に関する情報、進展ゼロ。
出来れば一学期で特定して夏休みに対策練ったり、あわよくばそこを訪ねてみたりしたかった。
行ったらどうなるか分からないのが一番問題なんだけど。
そして、現在私はアレハンドロ、エラルドの2人とカフェタイム。
エラルドと平日におやつを一緒にするのは久々すぎる。どうやら今日は休憩の日らしい。
たまにある休憩の日はこうやって付き合ってくれる優しさ。好き。
3人で囲うグレーの丸テーブルの上には、レモンのレアチーズケーキが乗った皿が置いてある。
ケーキ自体は言わずもがな美味しい。酸味と甘味が絶妙だ。添えてあるレモンもハチミツ漬けになっていて、ケーキと一緒にペロリだった。
暑い日にはありがたいことに、さっぱりしてとても食べやすかった。一瞬で皿が綺麗になったのを見たエラルドが笑ってしまう。
「ほんとにシンは甘いものが好きだよな」
と言いながら、半分くれた。好きすぎる。
自分はストレートの紅茶に口をつけながら、エラルドの視線はアレハンドロに向けられた。
「ところでさ、アレハンドロ。アンネと何かあった?」
同じくカップに指を掛けようとしていたアレハンドロの手が止まる。
「何故だ」
「何故って……」
エラルドは白いカップを下ろして苦笑した。そして私と視線を合わせる。
そう。何故だ。じゃないんだわ。
誰がどう見ても明らかにおかしい。
アレハンドロはあの告白の日から、異様にアンネにベッタリなのだ。
授業と授業の合間は移動があるせいで、ゆっくりした時間がとれない。
にも関わらず、クラスが違うアンネを次の教室まで送って行ったり、昼休みには一緒に食事がしたいと迎えにいったりする。
放課後は図書室が閉まる時間に現れるとネルスが言っていた。
勉強の邪魔にはならないよう気を使っているのは伝わる。が、明らかに接触回数が爆上がりしている。
しかも、一番問題だと思うのはここからなのだが。
やたらめったら距離が近い。
人に話しかけるのにそんなに顔近づけなくても聞こえるよ? ってくらい顔が近いし、なんなら体は常にどこか触れ合っている。
見かける度にアンネの顔は真っ赤っかだ。ちゃんと会話になっているのか怪しい。
「最近、アンネと顔が近いなって。もしかして、恋人になれた?」
しばらく言葉に迷っていたエラルドだったが、結局は単刀直入に聞くことにしたようだ。
アレハンドロは機嫌が悪そうに腕と足を組み、目線を横に逸らす。
「いや。友人として悪い虫がつかないようにしている」
「友人」
エラルドが真顔になってしまった。
ごめん、距離感がおかしい原因の半分は私のせいかもしれない。まさかこんなに限度を知らないとは思わなかったんだ。
一瞬の真顔の内に、どう伝えようか考えたらしいエラルドの出した答えは、実際にアレハンドロがどのくらいアンネと近いかを見せることだった。
いつもの微笑みに戻ると、立ち上がってするりと肩を組む。
私の。肩を。
「あのさ、アレハンドロ。俺とシンが常にこの距離で話してたらさすがに変だろ?」
(いや、ちっか!!)
私の頬にエラルドの頬が触れそうなくらい顔が近づく。
耳元で聞こえる爽やかボイスに、私は飛び退くのを我慢してテーブルの上でフォークを握りしめた。
残念ながらアレハンドロは「ふーん」くらいの表情でこちらを見ている。
エラルドは挫けずにもう一歩、私に密着する。勘弁して欲しい。私は笑顔を貼り付けて耐える。
「女の子相手だったら、もっと周りはアレってなるよ。あの距離はふたりだけの時にしよう」
男とか女とかいうレベルじゃないけどこれ。でも確かにこのくらいアレハンドロはくっついている。
いや待て、アンネは好きな人と休み時間の度にこの距離感で話してるのか。
好みうんぬんではなくアレハンドロは顔も声もめちゃくちゃ良い。私なら爆散するわ。アンネすごい。
さすが乙女ゲームの主人公。
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