選択的ぼっちの俺たちは丁度いい距離を模索中!

虎ノ威きよひ

文字の大きさ
16 / 33

16話 友だち

しおりを挟む
 一言声を掛けたら、仲良くなってたのに。コミュ症あるあるなんだろうか。

「また喧嘩になったらやだなって思ってる内に僕が引っ越しちゃった。もっと会う期間が長かったら違ったかなぁ」

 やっぱりなんか、知ってる気がするなその状況。

「どんくらいの間その変な関係が続いたんだ?」
「一ヶ月くらいだったと思う」
「ふーん」

 聞いておいて、俺は気のない返事をする。UFOキャッチャーコーナーの最後にスナック菓子の台があったから、そっちに気を取られたフリをした。

 アームを動かすレバーを適当にガチャガチャ動かしながら、赤いボールを隣で蹴っていたやつの顔を思い出そうとする。
 眼鏡なんかかけてただろうか。こんなに、顔が良かっただろうか。
 俺はそいつの足元しかちゃんと見ていなかったのかもしれない。何も、思い出せなかった。

 アームが空を切るのを見るついでに、ガラスに映った大和に視線を向ける。

「そいつも多分、声掛けたくてもかけられなかったんだろうな」

 分かるのはそれだけだ。きっと、そうだ。

「そうかな? だとしたら、勇気出せば良かった」

 大和は笑って、自分の財布から100円玉を出す。俺が触っていた台でチャリンと音がした。

「蓮君には勇気出して声掛けられて、良かった」
「お前もやっぱ勇気いったんだな」

 俺の体温が残っているレバーを握って、静かに動かす横顔は澄ましていて感情が読みにくい。
 だから初めは嫌われているものだと思っていた。頑張って声を掛けてくれたのに、一度は無視しようとしたことを少し反省する。

 バサっと袋のスナック菓子をゲットした大和は、苦笑して俺の方を見た。

「まず見た目が怖すぎるんだよ。近寄るなオーラもすごいし事務会話も躊躇しちゃう。お礼言う時ですら、わざわざファイルくれる良い人だって分かってるのに……正直ビビってた……」

 それはそうか、と納得した。
 台に映る俺たちは、あまりにもジャンルが違う。
 前髪は長めだけど黒い短髪で、私服も真面目そうな大和。どんな格好してたって派手に見える金髪にピアスの俺。
 どうして一緒にいるんだろうと自分でも思う。
 あまりにもジャンルが違う相手は、どうしたって緊張するものだ。

「そのための、この格好だからな」

 金髪も細い眉もアクセサリーも、全部俺の鎧だ。簡単に突破されたら意味がない。
 ピアスを触って見せる俺に、大和は小さく頷いた。

「うん。でも、蓮君が友だちになってくれて良かった」
「ん?」

 スナック菓子の袋を持ち上げた大和がサラッと紡いだ単語に、思わず聞き返してしまう。言われ慣れない言葉だ。
 大和は袋でパッと口元を隠し、珍しいことに分かりやすく眉を下げた。

「と、友だちだと思ってるんですが……」

 機械音に掻き消されそうなか細い声なのに、ちゃんと耳に届く。
 わざわざ二回も言わせてしまった罪悪感はなく、ぶわりと胸が熱くなる。
 胸だけじゃない。体をめぐる血液が、照れとか喜びとか、こんなとこで恥ずかしいとか、色んな気持ちで沸騰しそうだ。

 俺も何か顔を隠すものが欲しいけど、生憎そんなものは持ち合わせていない。
 仕方がないから、大和の後ろに回って背中を押した。挙動不審もいいとこだったけど、大和は俺を気にしながらも素直に歩き出す。

「……あの……俺も」

 軽く袖を引いて発した声は小さすぎて、騒音に掻き消されていく。
 聞いていたのは、首元まで肌が薄紅に染まった大和だけだろう。
 
 家に帰って風呂から上がると、家族以外には一人しか登録のない連絡用アプリにメッセージが入っていた。

『今日はありがとう、楽しかった』

 シンプルなメッセージを見て、自然と口元がにやけてしまう。まだ水の滴る頭にタオルを掛け、体が濡れているのをそのままにして返信を考える。

『俺も』

 送信してから、これだけじゃあまりにも素っ気なさすぎるだろうかと思い立つ。少しスマホと睨めっこした後、

『また、明日な』

 と付け加えた。すると、すぐにポンっと弄ったことのない短い着信音が鳴った。

『バイトの後ゲームしよう』

 友達っぽいやりとりだ。スマホでこんなの初めてした。
 人と関わるのが苦手で、一人でいるのを自分で選んでるのは嘘じゃない。
 それでも大和とこうしてやりとりするのが楽しくて。人と関わるのも適度なら悪くないなと思った。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

もう観念しなよ、呆れた顔の彼に諦めの悪い僕は財布の3万円を机の上に置いた

谷地
BL
お昼寝コース(※2時間)8000円。 就寝コースは、8時間/1万5千円・10時間/2万円・12時間/3万円~お選びいただけます。 お好みのキャストを選んで御予約下さい。はじめてに限り2000円値引きキャンペーン実施中! 液晶の中で光るポップなフォントは安っぽくぴかぴかと光っていた。 完結しました *・゚ 2025.5.10 少し修正しました。

ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために

ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話 ※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。

ホマレ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。 その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。 胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。 それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。 運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

ランドセルの王子様(仮)

万里
BL
大学生の森下優太(20)は、ある日の夕暮れ、ひったくり犯に襲われ絶体絶命のピンチに陥る。そんな彼を救ったのは、鮮やかなシュートで犯人を撃退した小学生の少年、日向蒼だった。 ランドセルを背負いながらも、大人顔負けの冷徹さと圧倒的なカリスマ性を持つ蒼。その姿に、優太はあろうことか「一目惚れ」をしてしまう。「相手は小学生、これはただの尊敬だ」と自分に言い聞かせる優太だったが、蒼のクールな瞳と救われた手の温もりが頭から離れない。 親友には「自首しろ」と呆れられながらも、理性と本能(ときめき)の狭間で葛藤する。禁断(?)のドキドキが止まらない、20歳男子による「かっこよすぎるヒーロー(小学生)」への片思い(自認はリスペクト)。

処理中です...