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第21話 新型農法と土木建築4
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森から畑へと続く道は、枯れ葉と土を運ぶ村人たちの列で賑わっていた。しかし、その運び方は、エルから見ると実に効率が悪かった。ズタ袋に詰め込んだものを肩に担ぐ者、布で包んで首からぶら下げる者、二人で協力して木の枝に吊るした大きな袋を運ぶ者……皆、思い思いのやり方で運んでいるものの、一度に運べる量は少なく、何度も往復を繰り返している。疲労の色を浮かべ、重い荷物に喘ぎながら歩く村人たちの姿を見て、エルは眉をひそめた。
(この世界には車はないんだろうか……?)
「荷車はないのか?」
「荷車はありますが山には入れませんね。道幅もなければ凹凸が酷くて車輪が埋まってしまいます」
「そうか……」
ふと、エルは前世で十代の頃に経験した工事現場でのアルバイトを思い出した。そこで見た、人が押して使う手押し車があれば、こんなにも苦労せずに、ずっと多くの量を一度に運べるのに……この世界の技術水準では、まだそのような便利な道具は発明されていないのだろうか?
エルは、目の前の非効率な光景と、前世の記憶にある便利な道具とのギャップに、軽い眩暈を覚えた。
「工房に行くぞ」
「またですか……」
エルはアイディアを胸に、領都の職人街へと足を運んだ。活気に満ちた通りには、様々な店が軒を連ね、行き交う人々で賑わっている。木工屋の店先からは、鉋で木を削る心地よい音と、爽やかな木の香りが漂ってきた。一方、鍛冶屋の工房からは、真っ赤に焼けた鉄を叩く力強い音と、焦げ付いたような独特の匂いが漂ってくる。
エルはまず、腕の良いと評判の木工屋の親方を訪ねた。アイディアを図面に起こして見せながら、手押し車の製作を依頼すると、親方は目を丸くして図面を覗き込んだ。「これは……一体、何でございましょうか?」と、訝しげな表情を浮かべた。続いて訪れた鍛冶屋の親方も、同様に初めて見る奇妙な道具に戸惑いを隠せない様子だった。
エルは、この道具がどのように役立つのか、そして自分には今お金がないため、後で領主に請求してほしいということ丁寧に説明した。最初は今まで上手い話しを持ってこなかったエルを相手に渋っていた二人だったが、エルが領主の息子であること、そして何よりも、その設計図が彼らの職人としての好奇心を強く刺激しそして過去の実績からこれが売れると判断したことが、最終的に彼らを動かすことになった。
木工屋の工房では、親方が上質な木材を選び出し、設計図に従って丁寧に切り出し、組み上げていった。金槌の音、木を削る鉋の音、そして職人たちの真剣な眼差しが、工房を満たしている。一方、鍛冶屋の工房では、真っ赤に熱せられた鉄が、親方の力強い槌さばきによって、徐々に手押し車の形へと成形されていく。特に苦労したのは、車輪の部分だった。
この世界にはゴムが存在しないため、馬車の車輪を小さく作り直しその表面に代用ゴム。ファチクスを塗り重ねる。
天然ゴムがなくともゴムの代用品は作れる。それはファクチスと呼ばれるものだ。
ファクチスの歴史は古く、中世ヨーロッパでは亜麻仁油と硫黄を反応させ、弾性のある樹脂状物質にして活用していた。
ゴムと比較すると高温に対する耐久性に難があるものの、現状高温環境下でタイヤを使用することは無い。
何しろリヤカーのゴムタイヤ部分はファクチスで代用している。流石にゴムの代用品として選ばれるだけの事はあり、ファクチスの性能はゴムに近くゴムと比較すると高温に対する耐久性に難があるものの、現状高温環境下でタイヤを使用することは無い。
市販されているゴムと同等と見て良いファクチスは、エルにとってあらゆる道具の進化の道が切り開かれたと言っても過言ではなかった。
(この世界には車はないんだろうか……?)
「荷車はないのか?」
「荷車はありますが山には入れませんね。道幅もなければ凹凸が酷くて車輪が埋まってしまいます」
「そうか……」
ふと、エルは前世で十代の頃に経験した工事現場でのアルバイトを思い出した。そこで見た、人が押して使う手押し車があれば、こんなにも苦労せずに、ずっと多くの量を一度に運べるのに……この世界の技術水準では、まだそのような便利な道具は発明されていないのだろうか?
エルは、目の前の非効率な光景と、前世の記憶にある便利な道具とのギャップに、軽い眩暈を覚えた。
「工房に行くぞ」
「またですか……」
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エルはまず、腕の良いと評判の木工屋の親方を訪ねた。アイディアを図面に起こして見せながら、手押し車の製作を依頼すると、親方は目を丸くして図面を覗き込んだ。「これは……一体、何でございましょうか?」と、訝しげな表情を浮かべた。続いて訪れた鍛冶屋の親方も、同様に初めて見る奇妙な道具に戸惑いを隠せない様子だった。
エルは、この道具がどのように役立つのか、そして自分には今お金がないため、後で領主に請求してほしいということ丁寧に説明した。最初は今まで上手い話しを持ってこなかったエルを相手に渋っていた二人だったが、エルが領主の息子であること、そして何よりも、その設計図が彼らの職人としての好奇心を強く刺激しそして過去の実績からこれが売れると判断したことが、最終的に彼らを動かすことになった。
木工屋の工房では、親方が上質な木材を選び出し、設計図に従って丁寧に切り出し、組み上げていった。金槌の音、木を削る鉋の音、そして職人たちの真剣な眼差しが、工房を満たしている。一方、鍛冶屋の工房では、真っ赤に熱せられた鉄が、親方の力強い槌さばきによって、徐々に手押し車の形へと成形されていく。特に苦労したのは、車輪の部分だった。
この世界にはゴムが存在しないため、馬車の車輪を小さく作り直しその表面に代用ゴム。ファチクスを塗り重ねる。
天然ゴムがなくともゴムの代用品は作れる。それはファクチスと呼ばれるものだ。
ファクチスの歴史は古く、中世ヨーロッパでは亜麻仁油と硫黄を反応させ、弾性のある樹脂状物質にして活用していた。
ゴムと比較すると高温に対する耐久性に難があるものの、現状高温環境下でタイヤを使用することは無い。
何しろリヤカーのゴムタイヤ部分はファクチスで代用している。流石にゴムの代用品として選ばれるだけの事はあり、ファクチスの性能はゴムに近くゴムと比較すると高温に対する耐久性に難があるものの、現状高温環境下でタイヤを使用することは無い。
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