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第23話 骨スープ
ステップド領は周囲には山林と湖以外目立ったものはない。
淡水湖が近くにあるので、湖に出入りする豊富な水資源には困らない。
隣領との領有権が面倒な山林こそ今回の作戦予定地である。
麓はなだらかな坂が続くものの、長年の雨風による浸食によって一部が細くて険しい地形になっている。
本陣を置くのはその付近で比較的見晴らしもよく水源が近い場所だった。
「点呼終わり。全員装備を確認の後野営順に入れ! 野営の準備が終わり次第罠を設置するように」
父が指示を出すと、従士がリーダーとなって村人に具体的な指示を出すと村人は素早い動きで野営の準備を進めていく。
日頃から肉体労働をしているだけあって土木工事のような仕事は得意な分野なのだろう。
賦役を理由に集められた農民は、最初文句を垂れていたが調子のいい歌を歌い始めてからはご機嫌であった。
それは『伍』と呼ばれる五人一組を作ることで管理を用意にし、連帯感を持たせることに成功していた。
これは東アジア地域や共産圏で使われた監視社会を作る方式で、誰かの幸せを全力でつぶそうとする人間の性質を逆手に取ったシステムだ。
軍事面でも組織の柔軟性を高めるためには間接つまり指揮官を増やす必要がある。
兵の動員人数を安定化させ、税や兵役逃れを防ぎ統治と軍事面でも楽なこのシステムを俺は非常に気に入っていた。
「父さま五人組は成功みたいだね」
「ああ農民は傭兵や兵に比べ士気も低く使いずらかったが、『連帯責任と相互監視それに連帯感』は、士気を大幅に上げるようだ。有事の際だけでなく平時から使えるこのシステムは画期的だな」
「指揮を上げるだけなら退路を断つかエサで釣ればいいだけです。傭兵には倍給兵という制度があり、危険が高いポジションになる代わり高い給料を払うシステムがあるそうですよ?」
古今東西の軍隊に似たようなシステムが存在する。
日本の新選組にも死番というシステムが存在した。
現代でも危険手当が存在するのだから金で釣るのは一般的な方法なのだろう。
「軍でも略奪や強姦は勝者の特権で釣って、命と天秤に乗せさせることができたら勝ですよどうせ軍規でしばっても脱走兵は出るんですから」
世界大戦前までは総力戦という発想はなく、開戦時の三割程度何らかの要因で減ると全滅判定となる。
壊滅なら五割とミリオタ以外には以外に感じるだろう。
「なるほど……参考にしよう」
「それと父さま山菜やキノコあれば蜂蜜などの山の恵みも取っておきましょう。こういう機会でもないと誰も入らないような場所ですから……」
「そうだな……」
しかし父の言葉は切れが悪かった。
実際のところ駄目だと言っても山林に入る農民は多い。
日々のオカズを増やすためだ。
猟師の場合数日山林に入ることなど日常茶飯事なのでここら辺は庭と言っていい。
一応初陣? になる俺を気使って父と従士達は頑張っている。
陣地の設営が終わった部隊から罠や山菜の採取に向かわせている。
一応領民には武装をさせており使う武器は投石器と投げ槍だ。
槍を差すことで身動きが取れないようにして仕留めることを狙った武器構成だ。
原始時代より用いられてきた由緒ある構成に間違いはない。
結果。
「大量だな……」
狐狼に穴熊、熊に鹿そして猪とバラエティー豊かな獣が狩猟されいる。
その中には見慣れない生き物が存在しており聞けばそれがモンスターなのだという。
「これがモンスター……」
従士が答えた。
「人類共通の敵です。動物とモンスターの違いは魔法を使うかどうかです」
「魔法を?」
「魔法と言っても規模の差がありますから農民でも倒せる雑魚もいれば貴族が束になっても敵わない強敵もいますがね……」
「集団でも勝てないのか?」
「基礎スペックが違いますから難しいですね……」
「そういうものか」
「そういうものです」
モンスターを含めた狩りの成果は、内臓を食べ皮を剥ぎ肉は燻製にして持ち帰る予定だと従士が言っていた。
骨や内臓の一部は嵩張る割に重いとのことで捨てるらしい。
もったいないと感じるが狩りの成果に対して持ち帰られる量を超えているからだ。
栄養価だけを考えると血まで全て使用したブラッドソーセージが一番なんだけど今この場でそこまで加工するのは不可能だ。
「骨を貰ってていいか?」
「いいですけど……何をするんですか?」
「夕飯頃に来ればわかりますよ。本当の骨の使い方というものをお見せしますよ」
昼食がパンと干し肉だけだったことも手伝って今欲しいのは汁物。
それはどの季節であっても食卓を彩る魔法である。
それに……いつもよりも硬いパンは日持ちするものの、水気がないと食えたものではない。
『あるじルミナスひのばんばっかり! さすがにおこるよ』
そうは言われても燃料代を浮かせるのにルミナスが魔法を使うのが一番効率的なのだ。
第一俺はまだ魔法を教えて貰っていないのだから。
『頼む今日は魔力いつもより持って行っていいから!』
『ほんとう?』
『ほんとうだ』
『ルミナスがんばる! あるじすきー』
用意させた骨を斧で細かく砕き髄液がスープに溶けだしやすくする。
野草と一緒に煮て灰汁を零し、骨を再度煮て出汁を抽出する。
白濁したところで布を使ってスープを濾し骨を除去。
最後に肉や野草と言った具材を入れ一煮立ちしたところに塩を入れて完成だ。
「いい匂いですね……しかしどうやって……」
骨スープの匂いに釣られた腹ペコ従士は質問する。
「良い質問ですが答えていてはスープが冷めてしまう。食べながら話そう……」
「そりゃあいいですね! 是非そうしましょう」
匙でスープと具材を掬い上げ口に運ぶ。
「――!?」
腹ペコ従士は一瞬固まるとこう言った。
「うっま!!」
その言葉を聞いて口を付けていなかった全員が匙を入れスープを口に運ぶ。
それからは皆匙が止まらないようで、頻りに匙を動かしている。
「骨があんなにうまいスープになるなんて……」
「しかし燃料代がバカにならなそうだ……」
「食えないモノが食えるようになるんだから仕方がないだろ」
「まあそれもそうか……」
「麦の粉を焼き固めただけの硬いパンや、少し腐った獣臭い塩辛い干し肉にはもう戻れないな……」
「いつでもうまいのはドライフルーツだけだ」
「違いない……」
従士一同には高評価なようで、今まで戦場で食べて来た酷い食事に思いを馳せた。
淡水湖が近くにあるので、湖に出入りする豊富な水資源には困らない。
隣領との領有権が面倒な山林こそ今回の作戦予定地である。
麓はなだらかな坂が続くものの、長年の雨風による浸食によって一部が細くて険しい地形になっている。
本陣を置くのはその付近で比較的見晴らしもよく水源が近い場所だった。
「点呼終わり。全員装備を確認の後野営順に入れ! 野営の準備が終わり次第罠を設置するように」
父が指示を出すと、従士がリーダーとなって村人に具体的な指示を出すと村人は素早い動きで野営の準備を進めていく。
日頃から肉体労働をしているだけあって土木工事のような仕事は得意な分野なのだろう。
賦役を理由に集められた農民は、最初文句を垂れていたが調子のいい歌を歌い始めてからはご機嫌であった。
それは『伍』と呼ばれる五人一組を作ることで管理を用意にし、連帯感を持たせることに成功していた。
これは東アジア地域や共産圏で使われた監視社会を作る方式で、誰かの幸せを全力でつぶそうとする人間の性質を逆手に取ったシステムだ。
軍事面でも組織の柔軟性を高めるためには間接つまり指揮官を増やす必要がある。
兵の動員人数を安定化させ、税や兵役逃れを防ぎ統治と軍事面でも楽なこのシステムを俺は非常に気に入っていた。
「父さま五人組は成功みたいだね」
「ああ農民は傭兵や兵に比べ士気も低く使いずらかったが、『連帯責任と相互監視それに連帯感』は、士気を大幅に上げるようだ。有事の際だけでなく平時から使えるこのシステムは画期的だな」
「指揮を上げるだけなら退路を断つかエサで釣ればいいだけです。傭兵には倍給兵という制度があり、危険が高いポジションになる代わり高い給料を払うシステムがあるそうですよ?」
古今東西の軍隊に似たようなシステムが存在する。
日本の新選組にも死番というシステムが存在した。
現代でも危険手当が存在するのだから金で釣るのは一般的な方法なのだろう。
「軍でも略奪や強姦は勝者の特権で釣って、命と天秤に乗せさせることができたら勝ですよどうせ軍規でしばっても脱走兵は出るんですから」
世界大戦前までは総力戦という発想はなく、開戦時の三割程度何らかの要因で減ると全滅判定となる。
壊滅なら五割とミリオタ以外には以外に感じるだろう。
「なるほど……参考にしよう」
「それと父さま山菜やキノコあれば蜂蜜などの山の恵みも取っておきましょう。こういう機会でもないと誰も入らないような場所ですから……」
「そうだな……」
しかし父の言葉は切れが悪かった。
実際のところ駄目だと言っても山林に入る農民は多い。
日々のオカズを増やすためだ。
猟師の場合数日山林に入ることなど日常茶飯事なのでここら辺は庭と言っていい。
一応初陣? になる俺を気使って父と従士達は頑張っている。
陣地の設営が終わった部隊から罠や山菜の採取に向かわせている。
一応領民には武装をさせており使う武器は投石器と投げ槍だ。
槍を差すことで身動きが取れないようにして仕留めることを狙った武器構成だ。
原始時代より用いられてきた由緒ある構成に間違いはない。
結果。
「大量だな……」
狐狼に穴熊、熊に鹿そして猪とバラエティー豊かな獣が狩猟されいる。
その中には見慣れない生き物が存在しており聞けばそれがモンスターなのだという。
「これがモンスター……」
従士が答えた。
「人類共通の敵です。動物とモンスターの違いは魔法を使うかどうかです」
「魔法を?」
「魔法と言っても規模の差がありますから農民でも倒せる雑魚もいれば貴族が束になっても敵わない強敵もいますがね……」
「集団でも勝てないのか?」
「基礎スペックが違いますから難しいですね……」
「そういうものか」
「そういうものです」
モンスターを含めた狩りの成果は、内臓を食べ皮を剥ぎ肉は燻製にして持ち帰る予定だと従士が言っていた。
骨や内臓の一部は嵩張る割に重いとのことで捨てるらしい。
もったいないと感じるが狩りの成果に対して持ち帰られる量を超えているからだ。
栄養価だけを考えると血まで全て使用したブラッドソーセージが一番なんだけど今この場でそこまで加工するのは不可能だ。
「骨を貰ってていいか?」
「いいですけど……何をするんですか?」
「夕飯頃に来ればわかりますよ。本当の骨の使い方というものをお見せしますよ」
昼食がパンと干し肉だけだったことも手伝って今欲しいのは汁物。
それはどの季節であっても食卓を彩る魔法である。
それに……いつもよりも硬いパンは日持ちするものの、水気がないと食えたものではない。
『あるじルミナスひのばんばっかり! さすがにおこるよ』
そうは言われても燃料代を浮かせるのにルミナスが魔法を使うのが一番効率的なのだ。
第一俺はまだ魔法を教えて貰っていないのだから。
『頼む今日は魔力いつもより持って行っていいから!』
『ほんとう?』
『ほんとうだ』
『ルミナスがんばる! あるじすきー』
用意させた骨を斧で細かく砕き髄液がスープに溶けだしやすくする。
野草と一緒に煮て灰汁を零し、骨を再度煮て出汁を抽出する。
白濁したところで布を使ってスープを濾し骨を除去。
最後に肉や野草と言った具材を入れ一煮立ちしたところに塩を入れて完成だ。
「いい匂いですね……しかしどうやって……」
骨スープの匂いに釣られた腹ペコ従士は質問する。
「良い質問ですが答えていてはスープが冷めてしまう。食べながら話そう……」
「そりゃあいいですね! 是非そうしましょう」
匙でスープと具材を掬い上げ口に運ぶ。
「――!?」
腹ペコ従士は一瞬固まるとこう言った。
「うっま!!」
その言葉を聞いて口を付けていなかった全員が匙を入れスープを口に運ぶ。
それからは皆匙が止まらないようで、頻りに匙を動かしている。
「骨があんなにうまいスープになるなんて……」
「しかし燃料代がバカにならなそうだ……」
「食えないモノが食えるようになるんだから仕方がないだろ」
「まあそれもそうか……」
「麦の粉を焼き固めただけの硬いパンや、少し腐った獣臭い塩辛い干し肉にはもう戻れないな……」
「いつでもうまいのはドライフルーツだけだ」
「違いない……」
従士一同には高評価なようで、今まで戦場で食べて来た酷い食事に思いを馳せた。
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