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第24話 鶴翼の陣
虫のさざめきと、焚火のパチパチと言う音が眠気を誘う。
野営の準備が終わった場所で眠りにつく。
天幕《テント》を張った本格的なもので雨風を凌ぐには十分なものだった。
小石を取り除いて馬の飼料を兼ねた藁を寝藁とすることで比較的快適に眠ることができる。
とは言っても掛布団となるようなものはなく、外套がその代わりとなる。
翌日。
朝食を食べ森を散策するとモンスターを含む獣を発見を報せる笛の音が森に次々と木霊する。
「始まったな」
父の呟きに首肯する。
獣が嫌う薬草や香草に火を付けた領民は、従士の指示で行動していた。
近代的な軍政と科学的アプローチによって最適化された領民兵は、ここ本部の指示を正確に遂行している。
しかしこれには、伝令役となる従士の苦労が重く伸し掛かっている。
魔法で解決できる部分が多くあるものの、不足の事態に備え決戦兵器たる魔法をできるだけ温存しておきたいと言う裏の意図が隠されていた。
軍全体を指揮するものは全体を俯瞰して見る能力が必要だ。
そのため古くから様々な方法が用いられてきた。
偵察や接敵で位置が判明した敵を盤上に配置し疑似的に俯瞰する方法や、丘の上から指揮を執る。あるいはレーダーや衛星による監視と言ったように時代を経るごとにその俯瞰する能力は機械化されていった。
空を飛び交う鳥が手紙を運ぶ。
鳩のように強い帰巣本能を持ったこの世界独特の鳥、名前をヨロイカラスと言う。
魔力の差を認識し群れ・仲間と認識した人間の元へ飛んでいき子供と同程度の知能を持つことがステップド家では知られている。
「これがステップド家の秘伝魔法ですか……」
「ああ、貴族とは古の大国よりも遥か昔にあった王国の十四人の御子に由来すると言われている」
「『聖なる血脈《けつみゃく》』ですね……」
「その通り……ステップド家が受け継ぐ秘伝魔法は四番目御子の末裔にして、魔道王と渾名された偉大な大王の魔法『使役魔法』を引き継いでいる。直接的な攻撃力には劣るものの戦時でも平時でも最優の魔法だ」
秘伝魔法とは言うもののその本質は、魔法の運用方法にある。
長い歴史が積み上げた魔法の効率的な使い方それこそが秘伝であり財産なのだ。
空の目と高い情報伝達手段を持つステップド家にかかれば山狩りなど造作もない。
「伝令を走らせろ! 獣共は左右を囲まれ遅れている中央あるいは他領へ向け逃走を開始したとな……」
現在上空から見ると「V」の字に近い『鶴翼の陣』となっているステップド騎士爵軍はにとって、完全に包囲を完成させ殲滅することはメリットよりもデメリットを被る危険性が高い。
包囲は三種類に別けられる。片側から半円状に取り囲む『一翼包囲』、両側から挟み込む『両翼包囲』。そして四方を完全に包囲した『完全包囲』だ。
殲滅力は難易度に比例する。
「つまりわざと逃がすということですね」
「歴史上完全な包囲殲滅作戦が成功した事例は少ない。それは死兵となった敵の強さと、包囲が完了し気が抜けた兵の強さを正しく計れる将が少ないからだ」
「完全に根絶やしにしては山林も荒れる。そしてなにより完全に殲滅する場合多数の死傷者を覚悟しなければならない」
「なるほど……」
「総員抜剣せよ。領堺まで獣を追い立てながら狩る俺に続けぇえええええ」
よく通る声で父が号令をかける。
領民兵はピッチフォークや剣鉈を構え獣を追い立てる。
「来たぞ!!」
「多くないか?」
鹿に熊、狼に猪と人を避けた結果人の網にかかった獣達は人間と相対する。
従士の一部は父と俺を警護し残りが獣を狩る。
「キュウゥゥ」
「キャウン」
野営の準備が終わった場所で眠りにつく。
天幕《テント》を張った本格的なもので雨風を凌ぐには十分なものだった。
小石を取り除いて馬の飼料を兼ねた藁を寝藁とすることで比較的快適に眠ることができる。
とは言っても掛布団となるようなものはなく、外套がその代わりとなる。
翌日。
朝食を食べ森を散策するとモンスターを含む獣を発見を報せる笛の音が森に次々と木霊する。
「始まったな」
父の呟きに首肯する。
獣が嫌う薬草や香草に火を付けた領民は、従士の指示で行動していた。
近代的な軍政と科学的アプローチによって最適化された領民兵は、ここ本部の指示を正確に遂行している。
しかしこれには、伝令役となる従士の苦労が重く伸し掛かっている。
魔法で解決できる部分が多くあるものの、不足の事態に備え決戦兵器たる魔法をできるだけ温存しておきたいと言う裏の意図が隠されていた。
軍全体を指揮するものは全体を俯瞰して見る能力が必要だ。
そのため古くから様々な方法が用いられてきた。
偵察や接敵で位置が判明した敵を盤上に配置し疑似的に俯瞰する方法や、丘の上から指揮を執る。あるいはレーダーや衛星による監視と言ったように時代を経るごとにその俯瞰する能力は機械化されていった。
空を飛び交う鳥が手紙を運ぶ。
鳩のように強い帰巣本能を持ったこの世界独特の鳥、名前をヨロイカラスと言う。
魔力の差を認識し群れ・仲間と認識した人間の元へ飛んでいき子供と同程度の知能を持つことがステップド家では知られている。
「これがステップド家の秘伝魔法ですか……」
「ああ、貴族とは古の大国よりも遥か昔にあった王国の十四人の御子に由来すると言われている」
「『聖なる血脈《けつみゃく》』ですね……」
「その通り……ステップド家が受け継ぐ秘伝魔法は四番目御子の末裔にして、魔道王と渾名された偉大な大王の魔法『使役魔法』を引き継いでいる。直接的な攻撃力には劣るものの戦時でも平時でも最優の魔法だ」
秘伝魔法とは言うもののその本質は、魔法の運用方法にある。
長い歴史が積み上げた魔法の効率的な使い方それこそが秘伝であり財産なのだ。
空の目と高い情報伝達手段を持つステップド家にかかれば山狩りなど造作もない。
「伝令を走らせろ! 獣共は左右を囲まれ遅れている中央あるいは他領へ向け逃走を開始したとな……」
現在上空から見ると「V」の字に近い『鶴翼の陣』となっているステップド騎士爵軍はにとって、完全に包囲を完成させ殲滅することはメリットよりもデメリットを被る危険性が高い。
包囲は三種類に別けられる。片側から半円状に取り囲む『一翼包囲』、両側から挟み込む『両翼包囲』。そして四方を完全に包囲した『完全包囲』だ。
殲滅力は難易度に比例する。
「つまりわざと逃がすということですね」
「歴史上完全な包囲殲滅作戦が成功した事例は少ない。それは死兵となった敵の強さと、包囲が完了し気が抜けた兵の強さを正しく計れる将が少ないからだ」
「完全に根絶やしにしては山林も荒れる。そしてなにより完全に殲滅する場合多数の死傷者を覚悟しなければならない」
「なるほど……」
「総員抜剣せよ。領堺まで獣を追い立てながら狩る俺に続けぇえええええ」
よく通る声で父が号令をかける。
領民兵はピッチフォークや剣鉈を構え獣を追い立てる。
「来たぞ!!」
「多くないか?」
鹿に熊、狼に猪と人を避けた結果人の網にかかった獣達は人間と相対する。
従士の一部は父と俺を警護し残りが獣を狩る。
「キュウゥゥ」
「キャウン」
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