転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗

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第29話 借財と売り込み4

「なるほど。今回の支援は、サイム準男爵家……正確に言えば、その実家である有力貴族と、国への配慮というわけですね」俺は、納得したように頷いた。

「そういうことになる。支援と言いながらも、実質は金を恵んでやる、という形になるだろうな」父は、苦笑いを浮かべながら言った。

「ただでさえ金がかかる時に、余計な出費が増えるとは……」母は、ため息混じりに言った。

「そう言うな、アリア。お前が作った化粧品も、蜂蜜酒も、白磁も、漆器も、そしてエルが献上してくれた刀も、皆、大層喜ばれてな。特に化粧品と白磁は妃殿下の御目に留まり、刀と漆器は陛下に献上するに至ったのだ」父は、誇らしげに胸を張った。

「では、ステップド騎士家というブランドに、確かな価値を持たせることには成功したようですね」母は、満足そうに微笑んだ。

「うむ。今後は、これらの品の増産と、品質の維持を目指していくことになるだろう。実は、既に幾つもの貴族家から注文が入っているのだ」父は、今後の見通しを語った。

「これで、当面の金銭問題は、一時的に解決となりそうですね。しかし、今回の献上品によって、我々の持つ秘密が、一部、明るみに出てしまったかもしれません。従士と兵士の補充を、早急に進める必要がありそうですね」俺は、冷静に現状を分析した。

「うむ。従士の補充についてだが、実は既に当てがある」父は、含みのある笑みを浮かべた。

「当て、ですか?」俺は、訝しんだ。

「俺には、兄弟がいる。その中には、従士の家に婿入りしたり、養子に入ったり、あるいは新たに家を興したりした者もいる。例えば、今お前の後ろに立っているレオナルドは、末の弟だ」

 父は、そう言って壮年の従士レオナルドの方を顎で示した。

「レオナルドが、ですか?」

 俺は、驚きを隠せない。

「おうよ、エル坊! 血縁上は叔父貴と言えども、わしはお前様を主君と仰いでいることに変わりはないからな! 今まで通り、遠慮なく接するぜ! ガハハハ!」

 レオナルドは、豪快に笑い飛ばした。

「他の兄弟や親族の中は、傭兵や冒険者として名を馳せている者もいれば、果ては宮廷貴族に取り立てられた者もいる。彼らの伝手を使って呼び戻したり、あるいは新たな人材を紹介してもらうことになるだろう。何も心配することはない。ステップド騎士家としても、長年の間に築き上げてきた独自の伝手がある。かつて苦楽を共にした友邦を、臣下という形ではあるが、再び呼び戻してやることができるだろう」

 父は、力強く言った。

「つまり、兵や、それらを指揮監督する従士については、心配する必要はないということですね?」

 俺は、念を押した。

「そうなるな。同時に、新たな移民の受け入れも積極的に行うつもりだ。耕作放棄地に再び人を入れ、開墾を進める。ただし、彼らに開示する情報は、一部の農具類に留めるべきだろう。移民の中には、敵の間者が紛れ込んでいる可能性も否定できないからな」

 父は、警戒の色を滲ませた。

「ということは、移民たちの居住地は、領都や既存の村から、少し離れた場所にするおつもりでしょうか?」

 俺は、尋ねた。

「そうなるな。幸い、此度の労役によって、木材には不足することはないだろう。鍛冶師や薬師といった職人を積極的に呼び寄せ、領内の産業振興にも繋げるつもりだ。エル、何か呼び寄せたい職人はいるか?」

 父は、俺に意見を求めた。

「でしたら、酒造りができる者を、ぜひ呼び寄せたいです」

 俺は、即座に答えた。

「酒造り、か……」

 父は、顎に手を当て、少し渋い顔をした。

「穀物のまま売るよりも、酒に加工した方が、価値は飛躍的に向上します。今は、家庭で作る質の低い濁酒が主流ですが、それをそのまま売るのでは、利益は微々たるものです。ブドウだけが酒ではありません。麦を使ったビールこそ、この地に新たな活路を見出すべきではないでしょうか?」

 俺は、熱意を込めて説いた。

「確かに、エルが作った漆器と言ったな。木製の器があれほどまでに美しくなるのだから、付加価値をつけることの重要性は理解できる」

 父は、納得したように頷いた。個人的には、非常食として野生で管理している短粒種の米で作る、質の高い清酒こそが、この地の未来を切り開くと確信しているのだが、今それを言う必要はないだろう。まずは、この世界の住人にも馴染みやすい、ラガービールに近い、日本の発泡酒、あるいは第三のビールと呼ばれるような、副原料を使った飲みやすい酒から始めるつもりだ。

「原材料を他領から輸入することで、さらに多くの酒を製造できるようになります。おまけに、他領に金銭を落とすことになるので、彼らが容易に当家を蔑ろにすることは難しくなります」

 加工貿易は、経済成長の基本だ。一次産業は重要だが、大きな利益を生み出すのは二次産業なのだ。

「金で、大人しくさせるというわけか」

 父は、苦笑しながら言った。

「その通りです。金銭による関係は、血縁よりも脆いかもしれませんが、分かりやすく、新たな縁を結びやすいという利点があります。そして何より、武力による支配よりも、はるかに気づかれにくいのです」

 俺は、断言した。

「これから使える兵や従士には、土地を与えるのではなく、金銭で支払うようにするといいでしょう。土地を与えることによる主従関係は、時代を経るにつれて形骸化していきますが、金銭による繋がりであれば、そのようなことは起こりません」
 俺は、さらに提案した。

「なるほどな。これから、金銭に困る見込みがないからこそできる手法だな。検討してみよう」

 父は、興味深そうに頷いた。これから大雨が降れば、荒れ狂う土砂は全て、隣領へと流れ込むことになる。金銭で買い叩く先に困ることはないだろう。

「ガイウスが不在の間の報告をするわね」と、母アリアが、冷静な声で話を切り出した。 
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