8 / 17
第08話 女神様とデート最も大切なことそれは、適度な緊張感
しおりを挟む翌日、僕たちは街にお出かけすることになった。
目的は清潔感のある洋服を買うこと。
休みの日に義理の姉弟とは言えど男女が二人で出かける……これはデートと言って差し支えないだろう。
そんな事実に気づいてしまったので、緊張で眠りが浅くなってしまった。
それも家から一緒に出かけるのではなく、わざわざ駅前で待ち合わせになっているのだから、これは完全にデートと言っていいだろう。
僕にとって人生最大のイベントと言っていい。
はやる気持ちを抑えベッドから起き上がって風呂場に向かう。
さきに使った人がいるようで湿気を感じる。
「春姫さん先に使ったんだ……」
僕のために大切な時間を使ってくれたことが申し訳ないという気持ちが溢れる。当然別に他意はない、ないったらない。
全身をくまなく洗い青髭が残らないように丁寧に剃り、クリームを使って保湿する。
身だしなみの基本はやはり清潔感だと言うことを、身に染みて理解させられた。
例えば洋服に皺があるだけでも、ずいぶんみすぼらしく見える。
義母さんがアイロンをかけてくれるおかげで楽が出来ている。
男所帯だと細部にまで気が回らないから、異性の目の重要性を痛感した。
人は中身なんていうけれど、結局は見た目が第一。
春姫さんのレッスンを受けるようになってからの僕は、数割マシで格好良くなったと思えるぐらいには自信が付いてきた。
メンズメイク……とまではいかないまでも、日焼け止めは塗るようになった。
春姫さんに紹介された美容室で教わった通りにドライヤーをかけて、ワックスを使ってセットした髪型が、どうにも以前より悪く見える。
「大分慣れて来たな……」
でもなんか足りない。
違和感が拭えない。
髪を切ってもらった直後は、数割マシに格好よく見えたのだがいまはなんか微妙だ。
やっぱりプロと素人とは違うらしい。
両手に良くなじませたワックスの量が悪かったのだろうか?
それでも鏡に映る自分が別人のようで、少し毛先を整えるだけでここまで変わるものなのかと感心した。
行きつけの床屋で十分だと思っていた俺は、春姫さん一押しの慣れない髪型を見慣れず鏡越しにじろじろと見てしまう。
「やっぱり人にやってもらうのと、自分でやるのは大違いだな」
時計を見ると時間がやばい。
「前髪が決まらないとか、恋する乙女かよ! 今日日秋元先生でも多分そんなベッタベタな歌詞かかないよ!」
焦りながらワシャシャワシャ、クシュクシュと毛束を作り前髪を整える。
「まぁこれでいいか……」
クローゼットの中にある僕の洋服は、中学生丸出しの英語Tシャツやガイコツなどの痛々しいものばかり、その中から事前に厳選しておいた無難なモノを組み合わせる。
「難しい……」
今日男性向けファッション誌を買い参考にするか、マネキンコーデ一式を何セットか買うのが無難だとおもう。
「これってデートなのかな?」
不意にそんな言葉が口を付けば、そわそわとした感情が胸の奥底から溢れ出してくる。
(意識するな相手は義理とは言え姉だぞ? それが義弟と恋愛なんて……それなんて再婚系ラブコメ? 最近流行ってるよね再婚系とあまあま系……個人的にはもう少しストーリーがある作品が好きなんだけど……)
いかんいかん。つい動揺から思考がそれてしまった。
「落ちつくんだ……『素数』か『円周率』を数えて落ちつくんだ……『素数』は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字…わたしに勇気を与えてくれる。2、3、5、7、11、13、17、19、21、23……」
『世界を一巡させた神父』がやっていた精神統一方法思い出し試してみるも、あまり効果はなかった。
今日の僕の服装を一言で現わせば地味の一言で終わる。
無難に黒色を基調としたセットアップコーデに、インナーにスエットを合わせ、ウエストポーチを肩から流すだけ。
スニーカーも履き慣れた靴を履いて待ち合わせ場所に向かった。
僕は恥ずかしながら、少し緊張した面持ちで待ち合わせ場所である駅の東口二階のペデストリアンデッキに、一足先に到着するとスマホを弄り今日の予定を確認していた。
周囲には僕と同じように待ち合わせの男女が多く少しばかりいたたまれない気分になる。
「待った?」
バッチりと決まった美少女が人混みのなかから現れた。
絹糸のようなサラサラの茶髪は、陽光を反射し天使の輪が浮かんでいる。
パステルカラーの薄手の外套の下にはワンピースのような上下一体型のTシャツのような服を着ていた。
綺麗さの中に可愛さも同居した二律背反の様相は、まあなんとも雰囲気がある。としか表現できないのが語彙とセンス、それに知識に乏しい僕の限界だった。
とにかく素材がいいのかシンプルなファッションながら大変似合っており、まるでファッション誌や写真集の一ページに写り込んだ芸能人を生で見るような情景に僕は思わず息を呑んだ。
一拍遅れて彼女の言葉に返事を返した。
「ううん。僕もいま来たところだよ」
それはなんのお面白みのないお約束のやりだった。
彼女は頭のてっぺんから爪先までじろりと眺めるとこういった。
「こうしてお洒落着をしてみると、トレーニングの成果を感じない? ウエストが緩くなんたとかシャツがきつくなったとか?」
そう言うとクルリと回る。
裾がめくれ上がり、色白なふとももと魅惑の三角形が見えた。
(エッッッッロッ!!)
三月ともなれば四季を感じ辛くなってきた日本と言えども、外気温は高くなってきている。
天気が良く暑いのか、主張の激しい胸の谷間が露わになっている。
僕のマイサインがヤる気を出し始めるのを感じる。
ムッ! ムクムクムクムククククク――ゥっ!!
「うん、感じるよ。ウエストとシャツが緩くなった。受験シーズンのストレスや運動不足も相まってかなり太ってたみたい……」
シルエットラインを崩さずに、パンツラインを調節する方法を教えて貰ってよかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた
里奈使徒
キャラ文芸
白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。
財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。
計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。
しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。
これは愛なのか、それとも支配なのか?
偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?
マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。
「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる