16 / 17

第16話 閑話② SIDE:春姫 差し伸べる女神様【裏】

しおりを挟む

 岩野熊雄さんは、とても優し気な中年男性だった。
 妻の浮気が原因で離婚したらしく、母と同じく男手一つで育ててきたといい。

 再婚までの間の食事会では、高価なものではなかったけれど幾つかプレゼントをくれた。
 これが母の言う光源氏のような教育の成果なのだろうか?

 こうして月日が流れ義弟になる勇気の中学卒業に合わせて、四人での食事会が行われることになった。
 おじさんによると踏ん切りがでなくて再婚したいとかそういう話は出来ないでいたらしい。
 用事がある二人に代わり私の義弟になる勇気くんを迎えにいくことになった。

「なんで私が……」

 コンビニの鏡に映っているのは光の加減によっては金色にも見える私自慢の亜麻色長髪は、枝毛一つなく腰まで伸びている。
 
気休めにナチュラルメイクをして、初対面時の好感度を稼いでおくのも悪くないわね……。

 例えひとつ屋根の下で暮らすとはいえ、私は義弟に興味がない。しかし悪いイメージを持たれたくないと考えてしまうのは人間の性だと思う。
 
 メイク道具を取り出して両親から受け継いだ色素の薄い雪のような肌にメイクを施すと、最後にはみずみずしいサクランボのような綺麗な唇に紅を引く。

 半分以上混じっている異国の血由来の息を飲む美貌が輝きを増し、ただでさえ『清中の女神』と渾名される美貌により一層の磨きがかる。
 普通の日本人では逆立ちしても勝てないそんな容姿だ。

 化粧道具を鞄に仕舞い込むとコンビニの化粧室を出て、バスを使い義弟が三年間を過ごした中学校に向かう。
 服装……美貌のせか少し目立つものの、多くの生徒や保護者の眼中に私は映っていない。

 校門に向けて走ってくる男の子に気が付いた。

(なんで走っているんだろう……)

 事前に写真で見ていたから勇気くんだと気が付くことが出来た。
 私はすれ違った勇気の腕を摑んだ。

「え?」

「キミ、岩野いわの勇気ゆうきくんでしょ?」

「どうして僕の名前を?」

「私は竜蛇母たつだも春妃ハルヒ
キミの義姉になるものよ、よろしくね」

 勇気くんの表情は、悲しみと怒りに満ちた表情から『姉を名乗る不審者が現れた』と、困惑に変化していくのが手に取るように判る。

 まるで観察でもするように、勇気くんの視線が上から下へ動いていく。

「姉って……僕には『いとこ』も『近所のお姉さん』も『幼馴染』もロクに居ないんですよ?」

 指を立てて一つづつ数える。
 私は勇気くんに近づいてきて彼の手を取ると小指を立てさせてこう言った。

「ちっちっち『義姉』と言う選択肢があるでしょ?」

「あっ……」

「で、でも! 父から見せられた写真はもっと幼かった気が……」

 お母さん何してるのよ……

「あーそれね。私、写真があまり好きじゃなくて少し前の写真しかないんだ。で、でも! 今年からバンバン撮ってくつもりだから!!」

 私は早口で撒くし立てる。
 ダイエット前の写真はほとんどないから昔の写真を見せたくないの。 

「そうなんだ。それで、どうしてここに?」

「そうだった! 実は予約しているレストランの時間が間違っていたみたいで……もう時間がないの!」

 私は、校舎の時計を指さした。
 時刻はおよそ十二時。

「お母さんの都合で、顔合わせはディナーではなく遅めの夕食にするハズだったのだが、話を聞いてみるとどうやらレストラン側の都合で早めに来て欲しいそうなの」

「ヤバいじゃん!」

「そうなのよ! お義父さんが車を校門の前に止めてるから早く来て……」

 私は彼の腕を引いた。
 写真を見るだけだと気が付けなかった。
 傘を貸してくれた彼だと……。

 私は彼を探していた。また会いたいと思っていた。
 それが恋なのかはまだ判らないだけど、振られて曇ってしまっている姿は見るに堪えない。
 だから母の言う通り理想の男に彼を育てることにした。
 その名も――


――【逆・光源氏計画】。


 勇気くんは私の期待以上の成果をだして春休みを終えた。
 菊花きっか学園で行われるミスコンは女子アナの登竜門とさえ言われている。

 そんな学校で順番にレベルの高い女の子と仲良くさせれば女の扱いが上手い男に育つことだろう。
 その間に私も恋か感謝か結論が出ること思う。  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた

里奈使徒
キャラ文芸
 白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。  財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。  計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。  しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。  これは愛なのか、それとも支配なのか?  偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?  マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。 「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...