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第3話魔物と魔法

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 結局。熱が出たものの命に係わる事は無かった。ひとえに母の母乳と栄養価の高い離乳食のお陰だろう……
 
 熱を出した翌日から、体に力が漲るような感覚を覚えたので、少しづつ光の珠……精霊を取り込んでみる事にした。最初の数回は熱が出て寝込んだものの、身体が馴れて来たのか、日に数体、取り込んでも最近は平気になって来た。

 その度に漲る力は上がっているように感じる。歩けるようになるまでの約一年の間は、この精霊食いを続けるしかないな……


………
……



 そして俺が産まれてから一年が過ぎた。言葉を喋れるようになるにつれて、あの光の珠……精霊は次第に見えなくなっていった。

 俺は立って歩くことを練習していた。
 人間なんだし、立って歩くくらい簡単にできるだろうとタカを括っていた。寝たきりだった人みたいに脚に筋肉がなく、それに加えて頭の比重が大きすぎ、非常にバランスが取りにくい。
 頭の上に2Lのペットボトルを括りつけた感じ、と言えば伝わるだろうか?

 歩いては疲れ休んでいる間、子守女中ナースメイドに絵本やお話をしてもらう、と言った言語の習得を始めていた。
 リスニングは出来るようになっているので、後はこの世界の単語を覚えるだけ……だが漢字の様な表意文字ではなくアルファベットのような表音文字なので、先ずは文法と単語を覚える前世の英語などの印欧インドヨーロッパ語と一緒だ。

 ”本が読めれば世界が広がる” とはどこで聞いた言葉だったか? 
本……すなわち ”文字” とは先人の知識や考えを纏め現したモノであり、それを理解出来れば先人達の先へより早く進めるのだ。
 幕末の動乱期を生き抜いた偉人達は、教育で身分の垣根を乗り越えた。それは一重に日本の識字率が高かったからだ。

 閑話休題それはさておき

「しゃる! おさんぽ!」

 俺は子守女中ナースメイドの少女 シャルティーナのスカートの裾に、皺が寄るほどの強い力でギュっ掴んで懇願する。
 メイドの少女はニコリと微笑んで、目線を合せるためにしゃがむと優し気な口調でこう言った。

「わかりました。いま支度をしますので少々お待ちください」

 暫くすると準備が出来たとの事で「あぁ、庭に出るんだなぁ」と思っていると、目の前には二頭引きの馬車がそこにはあった。
 馬車と言ったが牽引している獣は馬ではない。
 大きな大きなダチョウのような鳥だった。

(ディアトリマ?)

 ディアトリマとは、恐竜の大絶滅のあとに出現した大型の飛べない鳥で、特徴としては大きな頭に小さな羽と言う特徴を持っており、同じく絶滅種のモアやドードーにも似ているが、カモ科から分岐した生き物なのだ。

「これ?」

 俺はそう言ってディアトリマ擬きを指さす。

「ユーサー様これは走鳥そうちょうです」

 シャルティーナが答える。

 走鳥って…… ダチョウ、レア、ヒクイドリ、エミュー、モア、エピオルニス、キーウィを含む分類そのままじゃん。

 俺のかっこよくない……と言う表情を読み取ってか……

「走鳥、走禽そうきん……駆鳥かけどりなどともいいます」

 走禽も走鳥も平胸類へいきょうるいも全部飛べない鳥だよ!!
……とは思ったもののコノ異世界間に生きる。生き物に心のそこからワクワクしていた。

「さわりたい!」

 俺の好奇心はこの体長2mを超えた鳥であり、頭はソコソコ大きいもののシルエットは格好よく、古生物好きにはたまらない。

 シャルティーナが騎士に目配せをする。

 騎士は頭をポリポリとかくと――――

「分かりました。目を突かれると危ないので頭は騎士わたしたちで押さえますので、ユーサー様を抱えて胴を撫でれば問題ないでしょう」

 ――――と渋々ながら折れてくれた。

「ありがとう!」

 俺はシャルティーナに抱きかかえられ、鳥を撫でる。

 フワ

 想像以上に羽毛があるようで数センチ以上も凹んだ。羽はよく手入れされており左右の個体で微妙に色が違う。
 馬みたいな扱いの生き物なんだな……

「ありがとう。もういい」

 そう言うとシャルティーナが俺を地面に卸す。
 それを見計らって走鳥の頭部の拘束を解く……走鳥はブルブルと体を動かして解放感を感じているようだ。

(ごめんな……)

 俺とシャルティーナは馬車に乗り込みその周囲を、走鳥や馬に乗った騎士が警護してくれるようだ。
 流石に馬車に乗った経験はないが、乗馬体験で馬に乗った事はある。
 走鳥は逆関節になっているので衝撃を吸収して、体が上下しないとかであれば騎兵向きの生き物なのかもしれない。
 走鳥の馬車は、サスペンションがついてはいないものの、その走り方のお陰か衝撃は少なく、比較的快適と言える。

 まぁでもある程度成長したら、板バネを取り付けた馬車を作るか……

 外を眺めるが走っている道は、前世の河の土手よりも悪路であり予想よりも「全然揺れないファンタジー生物すげぇ!」と思ってしまった数時間前の自分を恨みたくなる。
 轍《わだち》による溝や道のぬかるみは当たり前だ。

(これじゃぁ道路も作らないといけないなぁ。まぁ道路の作り方は紀元前の共和制ローマから、あまり変わっていないから再現自体は難しくないか……)

 俺は知識チートを考える。

「つきましたよ、ここがお散歩をする原っぱです。
 鬼ごっこでも何でもできますよ?」

(2時間やそこらでこんなに広い平原に着けるなって……もしかして公爵領とは言っても田舎なのか?)

「やった!」

 俺は外に出られた事を無邪気に喜ぶ子供を演じる。
 外に出て走るよりも俺は魔法を見たい。

 暫く走り回って遊んでいると正直飽きました。
 小川でも流れて居たら水泳が出来るのに……
 
 魔物でも現れないかなぁと思っていると現れました。RPGではだいたい雑魚扱いされるイノシシ型の魔物です。

 大きさはアメリカの仰天映像で見た。イノブタと同程度の大きさであり、成人男性でも奴の突進の威力を殺すのは困難だろう……

「ユーサー様! 私の背に……」

 シャルティーナはそう言って、俺を自分の陰に隠すと短い指揮棒……タクトのようなものを手に取る。

「敵は一体、グレイトボアだ! 皆日々の訓練の成果を示すと共にユーサー様にキズ一つ付けるな!」

「「「「「おぉぉおおおおおおおッ!!」」」」」

「及ばずながら加勢します!」

「おお、それはありがたい」

 シャルティーナの言葉に、隊長格らしき人物が礼をの言葉口にする。

 騎士達はイノシシ……グレイトボアの正面に盾持ちの重騎士を二名配置して、突進の衝撃を殺す算段のようで、手には槍を持っている。

「歯ァ食いしばれぇぇええええええええ――――ッ!!

「グモ゛オ゛オ゛オオオォォオオオオ!!!!」

 グレイトボアは咆哮を上げて突進してくる。

 グレイトボアの牙が重騎士の大盾目掛けて、突き進み進路を変更できなくなった瞬間。隊長がが叫んだ。

「今だ! 重装騎士の背後から飛び出し槍や剣で突け!」

 隊長の合図で騎士達は配置についてつく。

 ガン!

 牙と盾がぶつかる衝撃音が周囲に響く。身体能力が高いのか、技術が優れているのかは分からないが、アレだけの巨体を相手に吹き飛んでいない事は驚愕に値する。

 ボアの外皮は硬いのか騎士達は頭……取り分け首のあたりを狙っているように思う。恐らく血管を狙っているのだろう。

「グモ゛オ゛オ゛オオオォォオオオオ」

 グレイトボアは唸り声を上げている。
 どうやら決定打には至っていないようだ。

「穿て! 土杭アースピアース!」

 シャルティーナがそう唱えた瞬間、グレイトボア頭部が不自然に持ち上がる。
 グレイトボアは苦しそうにバタバタと藻掻いている。
 やがて赤い水溜りがゆっくりと広がり、重騎士の足元を超え広がった事でそれが血だと認識した。

 あのカエル面の医者が使ったのは、やっぱり魔法だったんだ!

「魔法……」

 魔法。なんて心躍る言葉なのだろう……
 魂が歓喜に震え、直感的にコレを極めたいと思ってくる。
 剣もいいけど魔法もいい。身体を鍛えられるまでは魔法を勉強する事にしよう……シャルティーナが魔法を使るとは思わなかった。教師を付けてもらうまでは、シャルティーナから習う事にしよう。
 転生して直ぐにやりたい事が見つかるなんて、俺は本当に運がいい。



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