40 / 56
第38話士官学校の問題2
しおりを挟む「それは誠かね?」
今まで黙っていた騎士が声を上げる。
「俺が何を言っても信じないでしょう? そこに本人が居るんだ聞いてみればいい」
不味い。不味い。不味い……キラーパス過ぎるでしょ!
「本当なのですか?」
恐る恐る騎士は尋ねる。
「本当だ。ただ向こうも子供、俺の攻撃で全員骨折以上の怪我を負っている大事にするつもりはない」
俺の発言を聞いて教師役の騎士たちの顔が青ざめている。
「し、しかし……」
「くどい……」
俺の一喝で騎士達は黙る。
「それでデニス、今更その件を持ち出してどうしようと言うのだ?」
「騎士道……国家と公爵に尽くす事を教える心の教育をするべきかと……」
愛国教育と言う奴か……別に反対はしない。
「許可しよう。正し読み書きの授業に混ぜる。
書き写したり読む本の内容を騎士道物語と、名作文学や巷で流行っているモノに変えろ内容は君に任せる」
そう言って国学者を見る。
「はっ。承知しました。若。私からも良いでしょうか?」
国学者は発言の許可を求める。
「なんだ?」
「士官教育の一部を民に施す事はお考えでしょうか?」
国学とは言っても江戸時代中期に勃興した学問と類似しており、は国語学、国文学、詩、歴史学、地理学、神学に及ぶ点は同じである。
「無礼な!」
騎士の一人が剣に手を掛ける。
「天にまします我らの神々は、我々に天命を与えていると言う。
その天命を見つける御助力を賜りたいのです」
「ふむ……」
「簡単な事で良いのです。簡単な読み書き計算が出来れば商人や民は賢くなりより国は発展するでしょう……」
彼は何一つ嘘は言っていない。教養が高ければ国は発展する……だが貴族社会は崩壊へ進んでいく。それは世界史を見ていれば当然のように理解できる事柄だ。
明治維新を支えた薩摩・長州・水戸は教育によって優れた人材を輩出した。特に徳川御三家でありながら幕府と天皇で問題があれば、天皇に付くと言った問題児水戸徳川家が作り上げた水戸学(天保学)が産み出した。
尊王攘夷思想(王を尊び、夷を攘う。この場合。天皇を尊び異国を払うそのためには幕府が邪魔と言う考え方)のような不都合な思想が形成される可能性もあるので、出来るだけ天下万民への教育は避けたい。
なによりそこまで金がない!
「俺は民全員が学がある必要はないと思っている。ただ親の仕事が天職であるとは思っていない。農地を継げない次男三男は多いからな……しかし現実的な問題として民に教育を施すほどの金はない。民が勉学に生を出せる程生活にゆとりがないのだ。だからまずは治安を安定させる。
そのために兵を率いる士官を育成しているのだ。
分かってくれマルクス……」
「はっ! このマルクス、若様の御意思を全て理解したつもりです!
士官学校で実績を作り、民が職の技能を学べる学校を作るつもりなのですね!」
「あ、……うん」
ここまで勘違いされるのか……俺は少しいたたまれない気持ちになった。
「俺からも一ついいだろうか? 三人を倒した時に俺は一人を体術で倒した。だから怪我をしないためにも体の動かし方を覚えるべきだと思っている。しかし時間がない事も事実だそこで試験的に魔術の授業の裏でやろうと思っているのだが……どうだろうか?」
「私も行うべきかと……騎士は武器を落とした時に弱いと言われていますからそこは、兵と共に改善するべきかと……」
デニスの一言で反論は無いようだ。
「では教師を見繕うとしよう……他家の者でも冒険者でもだれでも構わん良い教師が居れば遠慮なく推薦してくれ……」
俺の一言でざわざわと相談し始める。
「……あの~」
若い騎士が声をだした。
「若が教えるのでは駄目なんでしょうか?」
恐る恐ると言った様子で声を上げた。
「俺も人に教えられるほど上手くはない……そうだ! 一人だけ居たぞ! 適任者が名をマリーネ・マグヴァレッジと言って俺の子守女中《ナースメイド》をしている。剣と槍がダメで騎士は諦めたが格闘技に優れている。本人と父上に確認を取らねばならないが……それまでは各自で素手の格闘を教えてやってくれ……あと教師も探してくれ! 本日は以上とする」
――――こうして士官学校の問題はまた一つ。解決されることになった。
131
あなたにおすすめの小説
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル
異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた
なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった
孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます
さあ、チートの時間だ
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる