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第40話商人に会おう上

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 俺は騎士団内でも選りすぐりの騎士数名と、大騎士であるデニス先生・魔法の先生であるスヴェを警護に付け、城下町に向けて馬車を走らせていた。

「昨晩、騎士の食堂に向かい、だれがお父様にチクったのかを調べたのですが……お二人とジョルジュ騎士団長がチクったらしいですね。
お陰で俺の配慮が無駄になるところでした。……デニス先生ならなぜ俺が苛烈に攻めたのかは理解出来ていたでしょうに……」

 俺は俺とスヴェが改造した馬車に同乗する、デニスとスヴェに語り掛ける。
ばつが悪そうに子守女中ナースメイドのマリーネとシャルティーナが聴いている。
 
「パウル様があそこまで民に寄り添う方だとは思わなかったんだ! 
確かにユーサー様は罰が軽くなるように振る舞われた……だが弱者相手に技を試していた。それは相手への冒涜だと思っている……」

 弱い相手に習った技を使い、愉しんでいた事は事実だ。

「確かにそうかもしれません。
 これは屋敷の敷地内なら問題ないだろうと言う判断で、供回りを付けなかったことに原因があります。これは現在、領内の流行病でタダでさえ少ない子守女中ナースメイドの内数名が床に臥せっているのを気使ったせいです。
その結果、女中メイドの休みが何日あるかは知りませんが、病み上がりのシャルティーナと連勤気味のマリーネの二人体制で、僕を見張ることになっています。
僕とあの馬鹿共と両先生、それにお父様の過失のせいで、他の者に迷惑をかけてしまいました。その点だけは悪いと思っていますよ」

「「「「……」」」」

「極論、僕がもっと上手く隠蔽できればよかったんです。
僕がもっと公爵家の公孫らしく立ち振る舞えていれば良かったんです。
今日初めて僕は城下町に行きます。僕も含めてミスは誰でもする事です。
特に……病は気を付けていても罹るときは罹るモノです.。気にしないで下さい。
今日僕は目いっぱい楽しむつもりです。警護についてくれたものには小額ですが賞与と言うか特別手当を出します。休みにでも使ってください」

 俺はそう言うとシャルティーナとマリーネが、父から預かっている金を中から人数分抜き取り「後で分けて下さいと言って」別に分ける様に指示を出す。

「よろしいのですか?」

 シャルティーナが声をだした。

「あぁ。僕の過失が大きいからね……僕が自由に使えるお金はお父様がくれた分だけだ。ただそれを分け与えただけだ。その意味と日頃の感謝を分かってもらえればいいよ」

 俺がそう言うと停車した馬車から降りる際に、御者コーチマンが手を貸して下車の介助をする。

「ありがとう」

 俺は御者に礼を言い商人の組合の建物に入る。
俺が中に入ると受付と思われる女性に話しかける。
 今日の俺は、普段滅多に着る事はない華美な洋服を着ている。
この服装を見れば高貴な家の出……とまでは分からなくても『金はある』と思ってくれるだろう……

「ここの責任者と話がしたい。今、空いているだろうか?」

「予定も御座いますので事前にアポイントメントを取ってから来てください。
ご要望であれば予定が空き次第、宿屋に使いを出しますが……」

 受付嬢の対応は△だな。決められたマニュアル通りにしか動けていない。
分からないのなら、上司に確認を取ればいいだけなんだがそれすらできていない。俺が売る商品を任せられる商人達ではないようだ。

「突然無理を言って悪かったな……今度は自ら出向かず呼び出す事にしよう……」

 そう言って子守女中ナースメイドを連れ、組合を出ようとすると……

「もしやユーサー様ではありませんか?」

 ――――と初老の男性が声を掛けて来た。

「その通り。私がユーサー・フォン・ハワードだ。
貴殿とはどこかであっただろか?」

「数か月前の四歳の誕生パーティーで拝見させて頂きました……」

 なるほど……あの会場に呼ばれるぐらいには権力がある商人関係者か……
販路や取扱品によるが、コイツに任せるのは有かもしれないな……

「申し遅れました、私は商人のジョバンニと申します。君。会議室を開けなさい」

 ジョバンニと名乗った老商人は、受付嬢に命令すると急いで会議室を開けさせた。

………
……


 会議室と言う割には、ソファーと机しかない客間のような部屋に通される。
俺が座り、デニスとスヴェが警護に付き、壁際に子守女中ナースメイドが控えると言う構図になっている。

「先ほどは受付がご無礼を申しておりました。
 私はもう引退の身ですが……お力には成れるかと……」

加齢により下がった目元が特徴の好々爺然とした外見、しかしその奥にある瞳は、深い知性と洞察力を伺わせ、積み上げた経験は誰よりも深そうである。
相談するにはうってつけと言えるだろう……



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